完結R18BL/君を愛することはないと言われたので、悪役令息は親友になってみた

ナイトウ

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18, 友達作戦第2フェーズ

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「カナト様に問題があるわけではありません。むしろ、カナト様が目覚めてからの大公様は今までに見たことがないくらいに楽しそうでした。」

目を細めて話す姿は、表情が読み取りづらいけど喜んでいるように見える。
ラタさんも、オージの事が大切なんだな。この屋敷のみんなきっとそうなんだろう。

「人は誰も愛さないよりは誰かを愛する方がいいのでしょう。けれど、誰かを殺めてしまうよりは、誰の命も奪わない方がいい。」

「それって、オージにかかった呪いの話?」

俺が聞けばラタさんは頷いた。

「西の魔女の呪いは、長年トニトルス家から愛と命を奪ってきました。大公様は、誰の命も奪わせないために愛を封じる決意をしています。」

「オージは俺のことが好きになりそうだからもう会ってくれないの?」

自惚れも良いところの発言だけど、ラタさんは否定しなかった。

ラタさんが部屋から出ていった後、俺はベッドに胡座をかいてラタさんの発言について考えていた。
組んだ足の窪みにはちゃっかりトトが潜り込んで寝ている。

呪いのせいで、オージは誰か仲良くなりそうな人が現れる度に距離を置いてるってこと?
そんなの寂しすぎる。人との繋がりは恋愛感情ばかりじゃないんだから。
オージと俺は男同士なんだし、友達として仲良くなれるはずだ。
こっちの世界だと性別は関係無いんだっけ。
けど、俺の恋愛対象は女の子だから呪いは発動しない。だからオージが俺を避ける必要はない。
オージにそれを説明すれば、安心して避けなくなるんじゃないだろうか。

「……よし。友達作戦フェーズ2だ!」

膝にいるトトを勢いよく抱き上げてもふもふの腹にぐりぐりと顔を押し付けた。



「……って全然会えない……」

あれから数日、フェーズ2と名付けてあれこれオージとの接触を試みてるけど全て失敗している。

まず1番単純に帰るところを待ち伏せしているが、オージが帰る前に俺がいつも寝落ちしてしまう。
目覚めると部屋のベッドにいるから、オージが毎回部屋に運んでくれているようだ。
優しい。

それから手紙。
話がしたいとか、今度釣りに行こうとか、街に遊びに行こうとか、説得やお誘いをせっせとしたためて机に置いている。未だに開けてくれた形跡はなく積み上がってるけど。
そろそろ床や机に直書きしようかと思っているところ。

そしてプレゼント。
屋敷の裏を流れている川で釣った魚をオージの食事に使ってもらったり、今はアンネさんの薦めで毛糸の靴下を編んでいる。
貰って嬉しいか?毛糸の靴下。

「やっぱり、魔法で眠らされてるよなぁ。」

昼下がり、トトにおやつのビスケットをあげながら呟く。
ドロテオの体とはいえ俺はこれまで睡眠時間削ってなんぼの社畜をやってきて2徹、3徹はこなしてきた。
それが昼間にどれだけ寝だめをしても、夜になるとコロっと寝てしまうのだ。
ちょっとおかしい。
きっとオージが魔法で眠らせてるんだと思うと何だか気が滅入る。そこまでして俺と関わりたくないのかなって。

「……いや、俺はオージと友達になる。」

カゴに入れた編み針と編み棒を取り出してせっせと靴下を編んだ。どうしてここまでするのか自分でも分からないまま。
出来上がった靴下はオージの書斎に置いといたけど、また待ってる間に寝落ちしてしまい朝に自分の部屋で目覚めた時には枕の横に返されていた。
凹む。

「俺も魔法が使えたらな……」

返されてしまった不格好な靴下を眺めながらつい愚痴が出た。
魔法が使えたら、眠りの魔法を跳ね返してオージと話が出来るんじゃないかなって。

「……オウムさん、魔法の使い方を習う方法知ってる?」

ふと思いついて止まり木のオウムに聞いてみた。
何かスクールとか、通信教育とかないかな。
お金かかるかもだけど。

「ケンサク!ケンサク!ヒット1ケン!ノルド・グリント、二、オファーヲ、オクリマスカ?」

オウムがそう言って首を傾げる。
ノルド・グリント?人名かな。魔法の先生とか?

「オクリマスカ?」

「あの、ノルド・グリントって、誰?」

「ノルド・グリント、ハ、キタノモリニスム、マホウツカイ。オズバルドノ、センセイ。」

オージの魔法の先生ってこと?いきなり連絡したら迷惑なのでは……。でも、今は他の手段も思いつかない。

「じゃあ、オージの婚約者のドロテオですが、魔法を教えて欲しいですって、送れる?」

そう聞くとオウムの頭上に封書がパッと現れ、窓に向かって飛んでぶつかる前にふっと消えた。

「ソウシンカンリョウ!ソウシンカンリョウ!」

もう送っちゃった。いきなりこんな事送って大丈夫だったかな?
ちょっと不安になったけど、俺の心配をよそにその後グリントって人からは何も反応が無かった。

そうしてまた夜が来た。俺は今夜も書斎でオージを待ち構えている。
机には未開封の手紙と、手作りプレゼントの山。
返されても返されてもしつこく書斎に置いている。
側から見れば俺の行動ってオージに付きまとうヤバいやつ以外の何者でもない。
けど、迷惑なら迷惑でちゃんとオージの口から聞きたいんだ。

書斎のソファで座っていたら、今日も強い眠気が襲ってきた。眠らないようにぎゅっと拳を握ってみるけどすぐに力が抜けてしまう。
この眠気には勝てそうもないけど、今日の俺は諦めない。
寝てしまうなら起きればいい。
どんなに遅く帰ってきてから爆睡しても始発に間に合っていた俺の根性頑張ってくれ……と念じながら眠りについた。



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