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好きに変わったガーゼという素材
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子どもの頃、このガーゼという素材をしったのは、ハンカチであった。当時の私のハンカチはこのガーゼの素材のものしかなかった。もっと、おしゃれなレース素材のハンカチもほしくなったが、それも叶わぬ夢であった。
私は、当時このガーゼの素材が嫌であった。確かに柔らかい素材ではあったが、あまり持っていて可愛いという言葉とは無縁なくらい、素朴なハンカチだったのだ。私は、女の子である為に、当時流行っていたキャラクター入りの綿素材のハンカチが欲しかった。勿論、そんな人気のキャラクターは、毎年入れ替えがあった。その度にハンカチを変えていくほど余裕のない家庭であったので、我が家では、成長しきった私であったが、いつまでもこのガーゼ素材のハンカチを持たされていたのだった。
これほど、嫌な思いをしたガーゼのハンカチのことを好きになる機会すら与えられなか
ったのだ。
それから月日が経ち、高校生になった頃には、綿の素材のハンカチがやっと持てるようになったのだ。とはいっても、母親が持っていたお古のハンカチであった。憧れのものでもなかったが、やっとの思いで卒業できたガーゼのハンカチ。私にとっては、そのガーゼのハンカチは、ちょっぴり悲しい想い出となってしまっただけであった。
そんなガーゼ素材のものを、更に月日が経過して手にする事になった。私としては、こんな形でまた手にするとは、あの卒業を迎えた時には、思わなかったのだ。
すっかり大人になった私は、身ごもっていた。初めての子どもである為に、新生児用品を購入する事となった。その時、久しぶりに卒業したはずのガーゼの素材を目にする事になった。新生児用品には、たくさんのガーゼ素材の製品がところ狭しと並べられていたのだった。その時、子どもの頃に触っていた肌
触りを、思い出したのだ。確かに、あの柔らかい肌触りの素材のガーゼ以上に、柔らかい素材のものと出合ったことがなかった。その事に気がついた私は、肌着をはじめその他の製品であっても、ガーゼ素材のものを迷わず購入する事にした。
できるだけ、生まれたばかりの赤ちゃんには、柔らかい素材のもので包んであげたいと思ってしまったからなのだ。私が子どもの頃、ガーゼに対する想いは、最悪であったが、子どもの親となった今、出来るだけ柔らかくそして優しい素材を選びたくなっていたのだ。
この心境の変化に驚きながら、徐々に私も大人になり、成長している自分を知り、自我の新発見に満足していたのだ。
こうして、拘りに拘った新生児用品は、ガーゼ素材を中心として揃える事ができた。
それから、準備万端の状況で生まれる事になった我が子には、まっさらなガーゼ素材の肌着を見につけさせることができたのだ。
特に我が子のお気に入りは、入浴中のガーゼであった。ガーゼを見にまとわすと、安心したように、入浴中でも眠ってしまえる代物であった。それほど、柔らかい素材にホッと安心する我が子の事が、愛おしく思えたのだった。
私は、あれだけ嫌がっていたガーゼ素材の製品であったが、ガーゼ素材の子ども用品を購入して以来、大好きな素材と変わっていった。
こんなにも、あっさりと人間の心理が変わってしまう事が、少し怖くなったが、やはり人間には、好き嫌いが付き物なのだと思わずにはいられなかった。
ある時、我が子を入浴中、洗濯して干したままになっているガーゼのことをすっかり忘れ、入れてしまったことがあった。すると、落ち着きがなくなり挙句の果てに、泣きだしてしまったのだ。泣いてしまった我が子を見て、ガーゼハンカチを持たせていなかった事
に気付いた。慌てて、そのハンカチを夫に取りにいってもらい、我が子は不安から解消されたあの日の事を今でも覚えている。
あのガーゼハンカチの柔らかさには、優しさそして温もりも入っていた事に気付かされた。
あれだけ幼少期の頃から、使い続けていた私には、どちらかというと、ほろ苦い味のする想い出しかないガーゼのハンカチ。しかし、そんなガーゼハンカチを我が子は、その存在だけで安心していたのだ。その事に、この年になりやっと気付けた私は、今もガーゼのハンカチを使っている。
私は、当時このガーゼの素材が嫌であった。確かに柔らかい素材ではあったが、あまり持っていて可愛いという言葉とは無縁なくらい、素朴なハンカチだったのだ。私は、女の子である為に、当時流行っていたキャラクター入りの綿素材のハンカチが欲しかった。勿論、そんな人気のキャラクターは、毎年入れ替えがあった。その度にハンカチを変えていくほど余裕のない家庭であったので、我が家では、成長しきった私であったが、いつまでもこのガーゼ素材のハンカチを持たされていたのだった。
これほど、嫌な思いをしたガーゼのハンカチのことを好きになる機会すら与えられなか
ったのだ。
それから月日が経ち、高校生になった頃には、綿の素材のハンカチがやっと持てるようになったのだ。とはいっても、母親が持っていたお古のハンカチであった。憧れのものでもなかったが、やっとの思いで卒業できたガーゼのハンカチ。私にとっては、そのガーゼのハンカチは、ちょっぴり悲しい想い出となってしまっただけであった。
そんなガーゼ素材のものを、更に月日が経過して手にする事になった。私としては、こんな形でまた手にするとは、あの卒業を迎えた時には、思わなかったのだ。
すっかり大人になった私は、身ごもっていた。初めての子どもである為に、新生児用品を購入する事となった。その時、久しぶりに卒業したはずのガーゼの素材を目にする事になった。新生児用品には、たくさんのガーゼ素材の製品がところ狭しと並べられていたのだった。その時、子どもの頃に触っていた肌
触りを、思い出したのだ。確かに、あの柔らかい肌触りの素材のガーゼ以上に、柔らかい素材のものと出合ったことがなかった。その事に気がついた私は、肌着をはじめその他の製品であっても、ガーゼ素材のものを迷わず購入する事にした。
できるだけ、生まれたばかりの赤ちゃんには、柔らかい素材のもので包んであげたいと思ってしまったからなのだ。私が子どもの頃、ガーゼに対する想いは、最悪であったが、子どもの親となった今、出来るだけ柔らかくそして優しい素材を選びたくなっていたのだ。
この心境の変化に驚きながら、徐々に私も大人になり、成長している自分を知り、自我の新発見に満足していたのだ。
こうして、拘りに拘った新生児用品は、ガーゼ素材を中心として揃える事ができた。
それから、準備万端の状況で生まれる事になった我が子には、まっさらなガーゼ素材の肌着を見につけさせることができたのだ。
特に我が子のお気に入りは、入浴中のガーゼであった。ガーゼを見にまとわすと、安心したように、入浴中でも眠ってしまえる代物であった。それほど、柔らかい素材にホッと安心する我が子の事が、愛おしく思えたのだった。
私は、あれだけ嫌がっていたガーゼ素材の製品であったが、ガーゼ素材の子ども用品を購入して以来、大好きな素材と変わっていった。
こんなにも、あっさりと人間の心理が変わってしまう事が、少し怖くなったが、やはり人間には、好き嫌いが付き物なのだと思わずにはいられなかった。
ある時、我が子を入浴中、洗濯して干したままになっているガーゼのことをすっかり忘れ、入れてしまったことがあった。すると、落ち着きがなくなり挙句の果てに、泣きだしてしまったのだ。泣いてしまった我が子を見て、ガーゼハンカチを持たせていなかった事
に気付いた。慌てて、そのハンカチを夫に取りにいってもらい、我が子は不安から解消されたあの日の事を今でも覚えている。
あのガーゼハンカチの柔らかさには、優しさそして温もりも入っていた事に気付かされた。
あれだけ幼少期の頃から、使い続けていた私には、どちらかというと、ほろ苦い味のする想い出しかないガーゼのハンカチ。しかし、そんなガーゼハンカチを我が子は、その存在だけで安心していたのだ。その事に、この年になりやっと気付けた私は、今もガーゼのハンカチを使っている。
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