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1話 シンデレラと呼ばれて
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今夜はハロウィン。町はハロウィン一色で染まっていた。
「ねぇ~美里、本っ当にパーティーに参加しないの?」
雑踏を歩きながらの仕事帰り、同僚の奈々が声をかけてきた。
「うん、行かない」
素っ気なく答える。
「あ~無理無理、美里のカボチャ嫌いは学生時代から有名だったもの。全く24歳にもなって、まだ食べ物の好き嫌いがあるんだからねぇ~」
学生時代からの友人、ひかりが笑いながら私の肩を叩く。
「え~なんでカボチャが嫌いなの? パンプキンパイとか、最高に美味しいじゃない」
首を傾げるのは、同僚の真帆。
彼女たちはこれから会社の一番近くに住む奈々のマンションでハロウィンパーティと称して、カボチャパーティーを開くのだ。
「大体何よ、カボチャパーティーって。ハロウィンパーティーって言えばいいじゃないの」
友人たちに訴える。
「いいじゃない、だって本当にカボチャ料理を作って、皆で食べ尽くすんだもの」
「そうそう、カボチャのサラダにカボチャのシチュー、カボチャのプリンにパンプキンパイ」
「どれも絶品だよね~」
3人の友人たちがカボチャ料理で楽しそうに盛り上がっているが、私は聞いているだけで胸やけがしそうだ。
カボチャなんて切りにくいし種は邪魔だし、妙に甘いだけの野菜じゃないの。
「とにかく、今夜は遠慮する。3人だけでカボチャパーティーを楽しんで頂戴。それじゃ、私は帰るから」
そして一人、駅に向かう為に横断歩道を歩き始めた時――
突然右から眩しいライトがを浴びせられた。
「え?」
驚いて振り向くと、1台の車が私につっ込んでくるのが見えた。
「美里!!」
ひかりが私の名前を悲痛な声で叫んだ瞬間。
ドンッ!!
身体に激しい衝撃が加わり、そこから先の私の意識は途絶えた――
****
「……レラ! シンデレラ!」
不意に誰かに名前を呼ばれ、ハッとして声の聞こえた方向を見る。
すると、そこには怪訝そうな顔で私を見つめるおばあさんが立っていた。
フード付きの紫のマント姿のおばあさんは日常生活を過ごすにはとても奇異な姿に見える。しかもご丁寧に短い杖を持っている。
まるで魔法使いのコスプレしているみたいだ。
「コスプレ……?」
口にしかけて、あることを思い出す。そうだ、今夜はハロウィンだった。それなら納得いく。
「今夜はハロウィンでしたね? だから魔法使いのコスプレ姿をしているのですね?」
「は? ハロウィン? 魔法使いのコスプレ……? 一体何を言っているの?」
おばあさんはますます困惑の表情を浮かべる。けれど、かまわず言葉を続ける。
「その魔法使いの衣装、とてもお似合いですよ。それにしても……」
辺りを見渡すと、街灯すらない場所に立っていることに改めて気付いた。しかもここは何だか畑のようにも見える。
「ここはどこなの? 街灯も無いし、何だか畑のようにも見えるし……」
「畑のように見える…‥ではなく、畑よ。さっきから一体どうしてしまったのかい?
シンデレラ」
「え……? シンデレラ……?」
魔法使いのコスプレをしたおばあさんは私のことを「シンデレラ」と呼んだ――
「ねぇ~美里、本っ当にパーティーに参加しないの?」
雑踏を歩きながらの仕事帰り、同僚の奈々が声をかけてきた。
「うん、行かない」
素っ気なく答える。
「あ~無理無理、美里のカボチャ嫌いは学生時代から有名だったもの。全く24歳にもなって、まだ食べ物の好き嫌いがあるんだからねぇ~」
学生時代からの友人、ひかりが笑いながら私の肩を叩く。
「え~なんでカボチャが嫌いなの? パンプキンパイとか、最高に美味しいじゃない」
首を傾げるのは、同僚の真帆。
彼女たちはこれから会社の一番近くに住む奈々のマンションでハロウィンパーティと称して、カボチャパーティーを開くのだ。
「大体何よ、カボチャパーティーって。ハロウィンパーティーって言えばいいじゃないの」
友人たちに訴える。
「いいじゃない、だって本当にカボチャ料理を作って、皆で食べ尽くすんだもの」
「そうそう、カボチャのサラダにカボチャのシチュー、カボチャのプリンにパンプキンパイ」
「どれも絶品だよね~」
3人の友人たちがカボチャ料理で楽しそうに盛り上がっているが、私は聞いているだけで胸やけがしそうだ。
カボチャなんて切りにくいし種は邪魔だし、妙に甘いだけの野菜じゃないの。
「とにかく、今夜は遠慮する。3人だけでカボチャパーティーを楽しんで頂戴。それじゃ、私は帰るから」
そして一人、駅に向かう為に横断歩道を歩き始めた時――
突然右から眩しいライトがを浴びせられた。
「え?」
驚いて振り向くと、1台の車が私につっ込んでくるのが見えた。
「美里!!」
ひかりが私の名前を悲痛な声で叫んだ瞬間。
ドンッ!!
身体に激しい衝撃が加わり、そこから先の私の意識は途絶えた――
****
「……レラ! シンデレラ!」
不意に誰かに名前を呼ばれ、ハッとして声の聞こえた方向を見る。
すると、そこには怪訝そうな顔で私を見つめるおばあさんが立っていた。
フード付きの紫のマント姿のおばあさんは日常生活を過ごすにはとても奇異な姿に見える。しかもご丁寧に短い杖を持っている。
まるで魔法使いのコスプレしているみたいだ。
「コスプレ……?」
口にしかけて、あることを思い出す。そうだ、今夜はハロウィンだった。それなら納得いく。
「今夜はハロウィンでしたね? だから魔法使いのコスプレ姿をしているのですね?」
「は? ハロウィン? 魔法使いのコスプレ……? 一体何を言っているの?」
おばあさんはますます困惑の表情を浮かべる。けれど、かまわず言葉を続ける。
「その魔法使いの衣装、とてもお似合いですよ。それにしても……」
辺りを見渡すと、街灯すらない場所に立っていることに改めて気付いた。しかもここは何だか畑のようにも見える。
「ここはどこなの? 街灯も無いし、何だか畑のようにも見えるし……」
「畑のように見える…‥ではなく、畑よ。さっきから一体どうしてしまったのかい?
シンデレラ」
「え……? シンデレラ……?」
魔法使いのコスプレをしたおばあさんは私のことを「シンデレラ」と呼んだ――
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