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ヒロイン登場
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はちみつ色の長い髪の毛に、少し陰を宿した切れ長の美しい琥珀色の瞳、すらりとした鼻梁に薄い唇。それらをかたどる輪郭は、さながら彫刻のモデルのように美しく、満月の光を受け、中性的な美しさを讃えたその人はまるで、月の世界から来た住人のようだった。(この物語のヒロイン、セイン姫だわ。さすが主人公だけある。でも、どうして乗馬服のような恰好を?)私は振り返り、相手を見ながらそんなことを考えていた。当のセイン姫は、後ろの茂みから出てくると近づいてきた。そして、私の顔をのぞき見た時にハッと息を飲んだのだった。
(なんか顔に付いてるかな。)私がそんなことを考えていると、セイン姫は「そのアメジスト色の瞳。おまえはバロン家の人間のルーナ嬢か?」と聞いてきた。(あれ?朧げに覚えているストーリーだと、面識あったはずなんだけどな。)そんなことを思いながら、私は「はい、ルーナと申します。改めてお目にかかります。」と痛む足をかばいながらなんとか立ち上がると、この世界のしきたりに基づいて挨拶をした。相手はじっと私を見つめた後、「ようやく会えた。セインだ。」と言いながら、私の髪を一束取ると、優しくそこに口付けをした。
(うん?私はこの人にとって、設定としては、悪役令嬢なのよね?なんだかすごく歓迎されてるような。)ちょっと状況が掴めず、混乱していると、「ルーナ様?どこへ行かれたんですか?」という声がそばまで聞こえてきた。(そうだった。私、婚約者に追われていたんだった。ど、どうしよう。ヒロインも現れたし・・・。) 私が意を決して、痛む足を無視して走り出そうとスカートを持ち直すと、セイン姫が「ひとまず逃げるぞ。」そう言って、さっと私に近寄ったかと思うと横抱きにし、走り出した。
(どどど、どうして私がヒロインにお姫様抱っこされちゃっているの!? 確かに、足は痛むけれど、セイン姫が私の婚約者から逃げる理由はないよね?)そんなことを考えながらポカンと、セイン姫の顔を眺めていると、相手がなんだ?という具合にこちらを見た。間近でみる琥珀色の瞳はよりいっそう綺麗に輝き、見るものの心を奪いそうだった。
ひとしきり走った後、彼女は岩陰に私を下ろし、「どこか痛むところはないか?」と聞いてきた。「大丈夫です。」私はそう答えた後、さっきから思っていた疑問を彼女に投げかけた。「どうして、私の婚約者から逃がしてくれたんですか。だって、貴方は私が婚約者から逃げている理由を知らないですよね。」(そう、私がそもそも婚約者から逃げている理由は、突然婚約破棄を大勢の前でされるかもしれない、という可能性を恐れたからだった。)
(なんか顔に付いてるかな。)私がそんなことを考えていると、セイン姫は「そのアメジスト色の瞳。おまえはバロン家の人間のルーナ嬢か?」と聞いてきた。(あれ?朧げに覚えているストーリーだと、面識あったはずなんだけどな。)そんなことを思いながら、私は「はい、ルーナと申します。改めてお目にかかります。」と痛む足をかばいながらなんとか立ち上がると、この世界のしきたりに基づいて挨拶をした。相手はじっと私を見つめた後、「ようやく会えた。セインだ。」と言いながら、私の髪を一束取ると、優しくそこに口付けをした。
(うん?私はこの人にとって、設定としては、悪役令嬢なのよね?なんだかすごく歓迎されてるような。)ちょっと状況が掴めず、混乱していると、「ルーナ様?どこへ行かれたんですか?」という声がそばまで聞こえてきた。(そうだった。私、婚約者に追われていたんだった。ど、どうしよう。ヒロインも現れたし・・・。) 私が意を決して、痛む足を無視して走り出そうとスカートを持ち直すと、セイン姫が「ひとまず逃げるぞ。」そう言って、さっと私に近寄ったかと思うと横抱きにし、走り出した。
(どどど、どうして私がヒロインにお姫様抱っこされちゃっているの!? 確かに、足は痛むけれど、セイン姫が私の婚約者から逃げる理由はないよね?)そんなことを考えながらポカンと、セイン姫の顔を眺めていると、相手がなんだ?という具合にこちらを見た。間近でみる琥珀色の瞳はよりいっそう綺麗に輝き、見るものの心を奪いそうだった。
ひとしきり走った後、彼女は岩陰に私を下ろし、「どこか痛むところはないか?」と聞いてきた。「大丈夫です。」私はそう答えた後、さっきから思っていた疑問を彼女に投げかけた。「どうして、私の婚約者から逃がしてくれたんですか。だって、貴方は私が婚約者から逃げている理由を知らないですよね。」(そう、私がそもそも婚約者から逃げている理由は、突然婚約破棄を大勢の前でされるかもしれない、という可能性を恐れたからだった。)
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