【完結】悪役令嬢に転生しちゃったけど、婚約者様とヒロイン(仮)に溺愛されちゃいそうです!?

雪入凛子

文字の大きさ
10 / 24

お姫様のキス

しおりを挟む
「それで、何でわかったの? 俺、結構髪色とか変装に気を付けたんだけど。」セインはちらりと私の方を見ていった。

「まず、ブロンド混じりの髪の毛、ブロンドはこの国では王族の証でしょ?今の貴方はそもそもストロベリーブロンドだし、ところどころキラキラ光るブロンドが見える。加えて、瞳の色。一見すると空色だけど、よく見ると金箔のように金色が散りばめられているかのよう。目に金色が入ってるなんて、そうそう王族でもいないわ。」と私は言い切ると自慢気に胸を張ってみせた。

セインは「さすが俺の元婚約者。」と言って、ちょっとおどけたように笑った。外面だけ見ると可愛らしい女の子がからかって笑っているように見えるので、なんともいじらしい。

「元、か。」私はポツリと呟いた。そんな私の言葉なんて聞こえなかったかのように、セインは組んでいた腕をほどいて、「ここが俺ん家。寄ってく?」なんて言ってくる。

そう、私たちの寮は一つ一つがコテージのように離れているのだ。これを聞いた時はさすがだなと思ったものだ。
「そんなナチュラルに家誘わないでよ。」私はそう返すとじゃあね、と言って自分の寮の方へと歩いて行きかけた。

少なくとも行こうとしたのだ。なぜなら、後ろから腰の辺りをぐっと掴んでセインが両腕を回してきたので、私は身動きが取れなくなっていた。「ちょっと、どういうつもりなの?」私は振り向きざまに問いかけた。

振り返るとそこにはウルウルとした空色の瞳の女の子がいて、「だって、寂しいんだもん。」なんて彼氏との別れ際に彼女が呟くように訴えてくる。「あのね、こういう時だけ女の子に戻るのやめてくれない?」私はほとほとあきれた、なんて感じでそう言い放ったが、今のセインの可愛さには子犬のような愛らしさがあった。

「わかったわよ。」私は仕方なくといった感じで少し立ち寄ることにしたが、実を言うとセインの訴え以前に他の寮も自分ものと同じ構造なのかすごく興味があったのだった。

「お邪魔します。」私がそういって入ると、「適当に座ってて。」と言ったきり彼は部屋を出ていった。
部屋の中はピンクを基調として纏められていて、根本的な造りは私の寮と同じだった。

少ししてポットとティーカップを持ったセインが現れると、コポコポとお茶を注いでくれた。カモミール香る爽やかなお茶を飲んだ後、私は改めてセインに質問した。

「どうやって今の学園に潜りこんだの? 表向きは貴方は...。」そこまで言いかけたところで、皆まで言うなとばかりにセインが手を振る。そして「一応表向きは継承争いに敗れ、部屋に閉じこもってることになってるけれど、俺を支援してくれる政治家が俺を養子にしてくれたんだ。それでこの学園に身分を偽ってこれたってわけ。」とさらさらと回答した。

(そうだったんだ。)私はうなづきながら、ちらりとセインを見た。心なしか、瞳が金色に戻っている気がする。そして「ねぇ、もとに戻る魔法とかないの?」と聞いた。

彼は、少し考え込むような素振りを見せた後ー実際は可愛らしい女の子が小首を傾げているのだがーこう言った。
「おとぎ話にもあるように、王子様のキスとかいいかもしれない。」そして蠱惑的な笑みを浮かべて、「ま、俺の場合はお姫様かな。」そう言って、彼の返答にぽかんとしていた私の唇を親指でそっとなぞったのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい

椰子ふみの
恋愛
 ヴィオラは『聖女は愛に囚われる』という乙女ゲームの世界に転生した。よりによって悪役令嬢だ。断罪を避けるため、色々、頑張ってきたけど、とうとうゲームの舞台、ハーモニー学園に入学することになった。  ヒロインや攻略対象者には近づかないぞ!  そう思うヴィオラだったが、ヒロインは見当たらない。攻略対象者との距離はどんどん近くなる。  ゲームの強制力?  何だか、変な方向に進んでいる気がするんだけど。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

【完結】攻略を諦めたら騎士様に溺愛されました。悪役でも幸せになれますか?

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
メイリーンは、大好きな乙女ゲームに転生をした。しかも、ヒロインだ。これは、推しの王子様との恋愛も夢じゃない! そう意気込んで学園に入学してみれば、王子様は悪役令嬢のローズリンゼットに夢中。しかも、悪役令嬢はおかめのお面をつけている。 これは、巷で流行りの悪役令嬢が主人公、ヒロインが悪役展開なのでは? 命一番なので、攻略を諦めたら騎士様の溺愛が待っていた。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

処理中です...