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満月~嫉妬

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「え、えっと」私の返事が煮え切らなかったので、「失礼しますね。」そう言って彼は私の足の間に割って入ってきた。そしてかがむと私の太ももに顔を寄せて、ひたり、ひたりと舐めていく。

(そんなとこまで、飛んでたっけ?)もう何がなんだか状態である。彼の動きに合わせて栗色の柔らかな髪の毛が太ももに当たるのがくすぐったかった。だけど、目を凝らしても、キッチンからの光が逆光で彼の表情まではわからなかった。

例のゾクゾクした感じは、まだ続いていて、次第に身体中がほてったように熱くなってきた。「エドワード、もういいよ。」ようやくこのセリフが言えた時には、彼はすっかり私の太ももを丹念に舐め終えたところだった。

「かしこまりました。」彼は静かに応えると、立ち上がり、私に手を差し伸べた。私がその手を取ると、ぐっと立ち上がらせた。そしてすっぽり私はエドワードの腕の中へとおさまった。

「!」抱き付く形になってしまったので、私が離れようとすると、ますます彼は腕の力を強めてくる。
「どういうつもり。」私は精一杯力を込めて言った。

「今晩、どなたを訪ねていらっしゃったんですか。」彼が私の耳に口を寄せて囁く。
「友達のところ。」私はできるだけ、そっけなく言った。(セインの話はできないのよ。)と心で思いながら。

「随分、親しげでしたね。別れ際に友達にキスをするのが流行りなのですか?」彼は淡々と聞く。
「そ、そうよ。親愛の意味を込めて。」厳しい言い訳だと思いながらも、私は言った。

「それでは、私にもしてくださいますか。私は貴女の執事ですが、掃除をきちんとできたというご褒美に。」
彼は、緑とも青ともとれる不思議な色をした瞳で私を見つめながらこう言った。

私は少し考えた後、「もう少しかがんで。」と囁くと、私の目線に合うようにかがんだ彼の唇にーキスすると見せかけてー鼻先にチュッと触れるだけの軽いキスをした。

エドワードはまんざらでもないような顔で微笑むと、「私は桃の蜂蜜漬けは、しっかりと熟成させてから食べるのが好みです。」なんて言って、さぁお風呂がいい頃合いだと思いますよ、と私にお風呂に入るように促した。

ちゃぷん。と湯舟に浸かりながら、さっきのエドワードの舌の感触を私は思い返していた。
なんとなく太ももを自分でなぞっていると、ほんのり赤くなっているところを発見した。

(エドワードの好意はすごく感じるけれど、彼って前はもっと大人しかったよね。)私はこれまでの、彼の執事としての働きを振り返るのだった。







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