【完結】悪役令嬢に転生しちゃったけど、婚約者様とヒロイン(仮)に溺愛されちゃいそうです!?

雪入凛子

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誰かが優しく私の髪の毛を撫でている。ガラスの壊れ物を扱うようにそっと。
その手につられるように、私はパチリと目を開ける。(エドワード?)栗色の髪の毛が見えた。そしてここは自室のベッドの上だとわかった。

「お嬢様、いくら新学期だからと言って張り切りすぎは禁物ですよ。キース様が運んでくださったのです。」彼はそう言いながら、優しく私の髪を梳く。

私は唐突にさっきあった出来事を思い出して、少し項垂れた。
「あのね、エドワード、キースが今度正式に婚約発表するの。そしたら、私ここにはもう住めなくて、貴方とはもう離れ離れになるかもしれない。」

長年仕えてくれた、彼と離れ離れになるのは心もとなかった。私の幼い頃から、仕えてくれた彼。

(そう、幼い時から。)私は昔を振り返る。しかし、自分の幼少期の記憶は思い出せたけれど、エドワードの姿はそこにはなかった。

(きっと、当たり前のようにそこに居たから思い出せないのよ。)私は自分を納得させた。

「お嬢様。」エドワードは悲痛そうに顔を歪めた。「お嬢様にとっては、こちらの方が安心されるのですね。」

(どういうこと?安心?私はエドワードと離れるのが心細いのに。)私は彼の言葉の真意がわからなくて顔を上げる。

いつもと変わらない優しい眼差し。触れる手は暖かく包み込むようである。しかし、何かがいつも違う。

(瞳の色?エドワードの瞳って海のような色だったかしら?)私はじっと彼を見つめた。

「お嬢様は、栗色と銀色どちらがよろしいですか?」彼は、らしくない歪めた笑いを口に貼り付けて問うてきた。

(何が言いたいのかな?今度のパーティに着ていくドレス?それなら)私はそこまで考えて「銀の色。」と答えたのだった。

(だって、婚約発表のパーティだもの。婚約者の色を取り入れた方がいいわよね?)私はそう考えた。

「さようでございますか。」彼はそういうと、パチリと指を鳴らす。彼の栗色の髪の毛はみるみる星色に染まっていき、そして、「これで、よろしいですか?僕のかわいい婚約者さん。」と囁いた。

(き、キース!?どうして。)私は困惑が隠せなかった。

「子どもの時ひと目パーティでみた君が忘れられなくて。ずっと君をどうしたら僕のものにできるか考えていたんだ。だけど君はセインと婚約していたし。まぁでもセインのことは、なんとかケリをつけられたとしても、どうしたら君の心を手に入れられるかと。」

彼はそこまで言うと言葉を切って、じっくりと私を見た。そして「そこで思いついたんだ。記憶のすり替え魔法を使うことを。君の記憶をすり替えして、昔から僕が婚約者だっと思い込ませようとした。だけど、魔法は失敗。君は高熱を出してしまった。」

僕のせいでごめんね、と言い彼は私の手を取る。

私は言われたことを理解するのに精一杯だった。

彼はさらに続ける。「高熱を出した君を傍で見守りながら、僕は考えた。すり替えはできなくとも、付け加えることならできる、と。そこで執事エドワードの登場だ。」

「これは上手く言ったよ。まさか君がこんなに信頼してくれるなんて。」キースはそう言いながら、スリスリと私の手を自分のほほに擦り寄せた、蠱惑的な笑みを浮かべて。
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