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第5章 瑛太2
第73話 家族の動画
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俺は外套を脱いでデイバッグを背中から下ろして、中に手を突っ込んだ。
手探りで行方不明者の資料を集めたバインダーを探していたら、急になにか思い浮かんだ。
シリアルバー
チョコレート
火打石セット
サバイバルナイフ
異世界ガイドノート最新版
インスタントコーヒー
ソーラーモバイルバッテリー
懐中電灯
風邪薬
「‥‥へ‥‥?」
訳分からず手を引っ込めたらイメージが消えた。
何だったんだ?今の?
「どうした?」
尾市さんが不思議そうな顔をしている。あ、そうだった、行方不明者の資料だ。
デイバッグの口を広げて、中を覗き込む。丸めてあった圭の鞄のポケット部分に小型のバインダーの上部が見えた。
摘んで引っぱりだす。
「あ、これです。」
尾市さんの資料のページを開いてみせた。
ポケット部分に入っていた折り畳まれた紙を取り出す。
そのまま尾市さんに差し出した。尾市さんはあまり良くわからない様子でたたまれた紙を受け取り、目を見開いた。
「これ!瞳からの手紙?母さんからのもある!?ええ~、ちょっ‥‥暗くて読めねえ~。」
尾市さんは焚き火の炎で手紙を照らしながら目をこらして読んでいた。
「うわ~、これ、嬉しい‥‥。切ねぇ~。」
顔を上げてふぅーっと大きく息をはいて、指先で目の辺りを拭った。
そして、俺に紙を掲げてみせながら言う。
「これ、俺にくれないか?」
「勿論。差し上げます。」
「ありがとう!」
そう言うと尾市さんはもう一度印刷物に目を通してから丁寧に折り畳んで大事そうに懐にしまった。
「‥‥うちさぁ‥‥。母子家庭でさ。母さんに苦労かけたのにこんな事になって‥‥。親不孝だよなぁ。」
「こんなことになってるのは俺も一緒なんで‥‥。」
「はは、まあそうだね。は~。」
少し温度が下がった湯を、ゴクゴクと飲み干して、尾市さんはもう一度溜め息をついた。
「は~。高校入ったらさ‥‥、バイトとかして、もう少し家計の助けになろうと思ってたんだよ。これでも‥‥。」
「そうだったんですね‥‥。」
「‥‥いなくなってさ、怒ってるかと思ったけど、心配している文面しかなかったわ。」
俺はシャツの内側にぶら下げていた携帯をひっぱり出した。電源を落としていたからまだバッテリーは残っているあるはず。
携帯の電源を入れる。バッテリーは半分くらいか‥‥。
フォルダを開いて尾市さんの家族動画を探す。動画は2ファイルあった。
尾市さんに携帯を差し出した。
「あの‥‥残りの充電があまりないんですけど。」
尾市さんは俺のスマホの画面を覗き込んだ。
「これ、あれか!」
尾市さんは両手で俺のスマホを受け取ると、画面に顔を近づけて、フォルダを確認した。
「母さんのは一度見たから、妹のを先に見たい!バッテリーが切れないうちに‥‥。」
「多分1回ずつ見るくらいは大丈夫ですよ。」
『‥‥おにい、どこにいるの~。早く帰って来てね。私の誕生日までに帰れる?』
「ううっ‥‥。」
尾市さんがボロボロと涙をこぼした。
「妹の誕生日、明日だ、‥‥いやもう今日か‥‥。」
「‥‥。」
「お祝い‥‥できなかった‥‥。小学校卒業祝いも‥‥。入学祝いだって‥‥。」
妹さんは小学校六年生で今度中学に入学するそうだ。
尾市さんは声を抑えながら暫く泣いていた。少し落ち着いてからお母さんからのメッセージ動画を見てまた泣いた。
なんと声をかけていいかわからなかった。
手探りで行方不明者の資料を集めたバインダーを探していたら、急になにか思い浮かんだ。
シリアルバー
チョコレート
火打石セット
サバイバルナイフ
異世界ガイドノート最新版
インスタントコーヒー
ソーラーモバイルバッテリー
懐中電灯
風邪薬
「‥‥へ‥‥?」
訳分からず手を引っ込めたらイメージが消えた。
何だったんだ?今の?
「どうした?」
尾市さんが不思議そうな顔をしている。あ、そうだった、行方不明者の資料だ。
デイバッグの口を広げて、中を覗き込む。丸めてあった圭の鞄のポケット部分に小型のバインダーの上部が見えた。
摘んで引っぱりだす。
「あ、これです。」
尾市さんの資料のページを開いてみせた。
ポケット部分に入っていた折り畳まれた紙を取り出す。
そのまま尾市さんに差し出した。尾市さんはあまり良くわからない様子でたたまれた紙を受け取り、目を見開いた。
「これ!瞳からの手紙?母さんからのもある!?ええ~、ちょっ‥‥暗くて読めねえ~。」
尾市さんは焚き火の炎で手紙を照らしながら目をこらして読んでいた。
「うわ~、これ、嬉しい‥‥。切ねぇ~。」
顔を上げてふぅーっと大きく息をはいて、指先で目の辺りを拭った。
そして、俺に紙を掲げてみせながら言う。
「これ、俺にくれないか?」
「勿論。差し上げます。」
「ありがとう!」
そう言うと尾市さんはもう一度印刷物に目を通してから丁寧に折り畳んで大事そうに懐にしまった。
「‥‥うちさぁ‥‥。母子家庭でさ。母さんに苦労かけたのにこんな事になって‥‥。親不孝だよなぁ。」
「こんなことになってるのは俺も一緒なんで‥‥。」
「はは、まあそうだね。は~。」
少し温度が下がった湯を、ゴクゴクと飲み干して、尾市さんはもう一度溜め息をついた。
「は~。高校入ったらさ‥‥、バイトとかして、もう少し家計の助けになろうと思ってたんだよ。これでも‥‥。」
「そうだったんですね‥‥。」
「‥‥いなくなってさ、怒ってるかと思ったけど、心配している文面しかなかったわ。」
俺はシャツの内側にぶら下げていた携帯をひっぱり出した。電源を落としていたからまだバッテリーは残っているあるはず。
携帯の電源を入れる。バッテリーは半分くらいか‥‥。
フォルダを開いて尾市さんの家族動画を探す。動画は2ファイルあった。
尾市さんに携帯を差し出した。
「あの‥‥残りの充電があまりないんですけど。」
尾市さんは俺のスマホの画面を覗き込んだ。
「これ、あれか!」
尾市さんは両手で俺のスマホを受け取ると、画面に顔を近づけて、フォルダを確認した。
「母さんのは一度見たから、妹のを先に見たい!バッテリーが切れないうちに‥‥。」
「多分1回ずつ見るくらいは大丈夫ですよ。」
『‥‥おにい、どこにいるの~。早く帰って来てね。私の誕生日までに帰れる?』
「ううっ‥‥。」
尾市さんがボロボロと涙をこぼした。
「妹の誕生日、明日だ、‥‥いやもう今日か‥‥。」
「‥‥。」
「お祝い‥‥できなかった‥‥。小学校卒業祝いも‥‥。入学祝いだって‥‥。」
妹さんは小学校六年生で今度中学に入学するそうだ。
尾市さんは声を抑えながら暫く泣いていた。少し落ち着いてからお母さんからのメッセージ動画を見てまた泣いた。
なんと声をかけていいかわからなかった。
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楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
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「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。
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