半分異世界

月野槐樹

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第9章 詩英3

第126話 穏やかに思い出す時

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食べ終わって箸を置いて、ふとYの皿を見た。

「あ、サンマの内臓食べない系か。」

Yの食べ終わった皿にはサンマの頭と骨の他に内臓部分が綺麗に残してあった。

「うん。ちょっと苦手。新鮮なやつは食べられるっていうけどね。」
「圭もそんなこと言ってたなぁ。」

少しだけはチャレンジしてみて、「やっぱあんまり‥‥」なんて言ってたのを思いだす。でもサンマ自体は好きだったんだよな。
思い出しながら立ち上がって、食器を片付けようとしてトレーを手にした。ふと、Yが俺をじっと見ていたのに気付く?

「ん?」
「‥‥いや、ちょっと落ち着いてきたのかなと思って‥‥。前は辛そうな顔してたから。」
「‥‥ああ‥‥。」

圭の事を思い出す時、少し前までは「あの時もっと向き合っていれば」とか「何にも理解していなかった」とか悔やむ事ばかり考えていた。
最近、シンプルに「あの時の圭はこうだったな。」って思い出すようになって来た気がする。
まだ半年しか経ってないけど‥‥。もう半年だけど‥‥。

「‥‥前を向いていかないとって思ってさ。‥‥でも、忘れるとかじゃなくて‥‥。」
「うん。いいと思うよ。それで。」
Yは少しだけ微笑んで、自分のトレーを片手で持った。


「米、醤油、みりん‥‥。」
翌日、スーパーで買い物を終えてから買い忘れがないかメモで確認。祝い金も手土産のフルーツゼリーも持った。
母さんにはもう一度連絡してみたけど、結局「任せる」とかあっさりした返信が来ただけだった。

まあ、別いいいけどね。
母さんは家を売って再婚するって言っていたけど、事件後は家の売却の話はしてきていない。
再婚の話もそれから何も言って来ないので、こちらからは話題を振らないようにしてた。
ニュースにもなった事件だから相手も事件の事を知っているだろうし、事件の事が原因で上手く行っていないとかもあるかもしれないけど、知らん。


頼まれて買ったものが入ったトートバックを担ぐとズシリと重かった。
免許とろうかな。車で運べた方が楽だろうな。
そんな事を考えながら仁美叔母さんに今から行くと連絡をいれた。

「ジェイ君。久しぶり。」

玄関の扉を開けて姿を現した仁美叔母さんは、化粧っ気のない笑顔で俺を出迎えてくれた。少し窶れた感じに見えるけど元気そうだ。

「お久しぶりです。あ、出産おめでとうございます。これ‥‥。」
祝儀袋と手土産のフルーツゼリーを差し出した。

「まあ、買い物まで頼んじゃったのにありがとう。気を遣わせちゃったわね。」
「いえ、あ、こっちは頼まれてたやつ。」
「ありがとう。重かったでしょう?」
「この位は大丈夫。」
「ホント助かるわ。」

叔母さんがトートバッグを受け取った時、奥の部屋の方から赤ん坊の泣き声が聞こえた。

「良かったら上がって行って。散らかっているけど。」

玄関先で荷物を渡して、できれば赤ちゃんの顔だけ見せてもらえたらとは思っていたけど、家に招き入れられた。
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