半分異世界

月野槐樹

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第20章 広田2

第211話 同郷の魔導士

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俺達が召還されたときに何か儀式に手違いがあって、注ぎ込む力が異様に強大となってしまったらしい。その結果、指定範囲だか人数だかが多くなってその分授かる能力が人数で薄まったと考えられているようだ。
事実として、他の召還の時は有能者が1人だったのに、俺達のときは有能者は一人も居なくて、俺や本木は「やや有能」と評価された。

色々検証させられたのだが、その結果、能力は「有能者」の半分程度となっているみたいだ。
能力と言ってもいわゆる魔法とかが使えるわけではない。

教えられれば使えるようになるのかもしれないけど、本当の「有能」者は教わらずにも魔法が使えるらしくて、俺は「やってみろ」と言われたけど
さっぱりやり方が判らず、突っ立っているうちに「不合格」となってしまったんだ。
ただ腕力だとか跳躍力のような身体能力は上がっていた。
でも全く喜べない。労働力とか戦力として使われるだけだと判っているからだ。

「なぜ『賢者』が現れない!何故少しも成功しないのだ!」

王女が怒鳴っている。その台詞も何度か聞いた。
どうやら、過去の召還で「勇者」だの「聖女」だのと指定して召還をしていたらしい。そして俺達の時に「賢者」を指定したのだという。
だが、それらしい人物は現れない上に、次の召還が少しも成功していないので苛立っているようだ。

貧血みたいにくらくらして視界が歪む。
何時までここに立っていればいいんだろう。じっと我慢していたら、やがてすっかり日が暮れて空が真っ暗に成った頃に解放された。
王女が神殿から達去った後、残った兵士達で道具のような物を倉庫に運び込む。
冷たい井戸水を桶に汲み、その水に映った顔を見下ろす。げっそり痩せてなんだか凄く年を取ったみたいな気がする。
冷えきった水で顔や手足を洗った。王女は泥まみれのような状態が大嫌いらしく、顔を洗ったり水浴びをしたりということは許されている。しかし水が冷たすぎる。

「おう、君、日本人か?」

兜を外して顔を洗っていたら後ろから声をかけられた。
振り向くと、ローブ姿の男性が居た。王女と話していた人とは違う、と思う。顔つきは、日本人?
俺がきょとんとしていたら、その人物がしまったという顔をした。

「‥‥ああ、君も『人形』か。」
「‥‥いえ‥‥。」

一瞬残念そうな顔をしたその人物は俺が答えると、「おお!」と顔をほころばせた。

「良かった。君はしゃべれるんだな。」
「はい。」

俺より年上に見えるので、敬語で答えておく。
男性は、武井和史と名乗った。最初に召還されてきた埼玉の人達の内の一人だという。
今日の召還儀式には参加しておらず、次の召還儀式の準備の為に呼び出されて到着したばかりだということだ。

「俺は、魔導士って職業だったんだ。君は?」
「職業?」
「水晶を触った時に何も言われなかった?」
「‥‥特には‥‥。『やや有能』って言われただけで‥‥。」
「ああ‥‥。」

武井さんは何か察したように少し哀しげに眉を下げた。
召還されたての時に水晶に触らされて「有能」と判断されるとその後、訓練をさせられて、もう一度水晶に触った時に職業というものが判定されるのだそうだ。
これまでに武井さんの「魔導士」と判定され、その次に「勇者」「聖女」という職業を持った人物が現れたのだそうだ。多分、栃木と千葉の召還者のうちの誰かだと思う。

大体は最初の水晶判定で傾向がわかるそうで、俺は「賢者」と判定される程、魔力が多くなかったから、魔法の訓練はロクにさせてもらえなかったようだ。
武井さんは魔力は比較的多かったらしいけど、この国の魔導士レベルで賢者と期待される程ではなかったらしい。

そもそも、武井さんが召還された時は実は「お試し」だったそうで、最初から「魔導士」として指定をされていたのだとか。
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