ハズレ勇者は引きこもりの配信者

月野槐樹

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第1話 召喚とハズレの烙印

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異世界の空は、地球のそれよりも青く、雲がゆっくりと流れていた。巨大な城の広間では、魔法陣が輝き、五人の高校生が突然現れた。

「わあ、すごい! これが異世界召喚かよ!」

テニス部のエース、澤村圭介が興奮した声で叫ぶ。爽やかな笑顔が、広間の貴族たちを魅了した。

隣ではクラス委員の三村優衣が落ち着いた様子で周囲を見回した。その見るからに思慮深い様子が、召喚した側の人達に期待をさせる。剣道全国レベルの剛田和樹が警戒して剣を握るように構えると、「おお」とドヨメキが湧く。
クラスの中でも、特別目立たず、でも安心感があると認識されている良い人キャラの吉田良夫が少し緊張した顔で立っていた。

そして、最後の一人。クラスでいつも隅にいる、そこそこ不登校の陰キャ、影山陽。ぼさぼさの髪を隠すようにパーカーのフードを深くかぶり、誰とも目を合わせない。正確には不登校ではない、出席日数ギリギリを計算して、登校しないでいるのだが。

王様が玉座から立ち上がり、厳かな声で告げた。

「勇者たちよ。我が世界を魔王から救え。汝らのスキルを見せよ!」

『何だ?お願いする側だよな? 偉そうに』

影山は内心思った。でもその場で口に出すほど勇気はなかった。機会があったら、ネットで言ってやろう、なんて考えていた。

澤村達は戸惑いながらも、スキル判定に素直に応じていく。影山と同様、反発の気持ちを口に出す勇気がなかったのかも知れにあ。

水晶玉が光り、一人ずつスキルが判定される。

澤村圭介:「神速の剣聖」――戦闘力抜群。

三村優衣:「賢者の叡智」――魔法の天才。

剛田和樹:「不壊の戦士」――防御無敵。

吉田良夫:「癒しの守護者」――サポート万能。

そして、影山陽。

水晶玉がぼんやりと光り、文字が浮かぶ。

「引きこもり」。

広間が静まり返った。王様の顔が引きつる。
澤村をはじめとする、クラスメート達の表情も曇った。吉田が心配そうに眉を下げ、唇をギュッと引き結んだ。

「この者は……、勇者として不適格であろう。戦えはせぬ。城から追い出せ」

王が宣言すると、貴族たちがざわついた、衛兵が影山の方に向かって歩いていく、吉田良夫が慌てて前に出た。

「待ってください! 影山くんは何も悪くないじゃないですか……! 急に呼ばれて……。急に追い出されたら、彼も困ります! 酷いです!」

「黙れ! ハズレはハズレ、不要だ!」

吉田の抗議も虚しく、影山は城から追い出された。
ちなみに、人見知りが激しい影山は、自分の待遇を決めるのに一言も言い返せなかった。そのことに、密かに落ち込んだ。
門の外に放り出される瞬間、吉田がこっそり駆け寄り、小さな袋を押しつけた。

「これ、売れそうなやつ。シャーペンとかボールペンとか……。あと、おやつのクリームパン。ぼったくられないように、気をつけて。生き延びて、影山くん!」

影山は頷くことしかできなかった。吉田は本当に良い人の笑顔を浮かべる。吉田の優しさが、胸に染みた。
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