騎士志望のご令息は暗躍がお得意

月野槐樹

文字の大きさ
226 / 324
第3章

第225話 迷惑な客

しおりを挟む
クレイリー君は小柄で細い。力もあまりなさそうに見える。物理的な戦闘に向いていそうな体型に見えないけど、大丈夫かな。
まあ、王都郊外でも結界付近までしか出ていないみたいだし、慎重そうではあるけどね。

冒険者活動やら魔獣討伐の実戦やらなどの話で盛り上がっていたら、食堂の入り口の方が騒がしくなってきた。複数の魔力がビリビリしている波動を感じる。
ジョセフィンが、従業員に声をかけて状況を確認してくれた。
どうやら、ロビー泊で泊まっている客の一部が、食堂で食事をさせろと言って揉めているらしい。

簡易ベッドで人数を増やしている部屋もあるし、ロビー泊の客もいて通常よりも遥かに多い人数の宿泊客が滞在している状況なので、宿の方針としてはロビー泊の人は基本素泊まり。
希望すれば肉を挟んだパンなどをロビーで食べられるようにして提供するということにしているそうだ。
それでも、宿泊費を払っているのに食事ができないなんておかしいとごねている客がいるようだ。
チラリとみると、食堂の入り口の所に数人の冒険者らしい姿。あれ?なんだか見覚えがあるなぁ。

どこかで会ったっけ?と思って見つめてしまったのがよくなかったようで、冒険者のうちの一人と目が会ってしまった。

「おい!お前!お前ら!」

宿の従業員が制止しているのを押しのけて、俺達の席の方に踏み出していた。

「食べ終わったんなら席空けろよ!ロビーにはなぁ、食事を摂りたくても食堂に入れない人達が沢山いるんだぞ!図々しいと思わないのか?」

何を言っているんだ?食堂に入りたい、という気持ちはわからなくはないけど、文句を言われる筋合いはないぞ。
そもそも食べ終わってもいない。クレイリー君が急いでパンを口の中に放り込んでリスみたいになってる。クレイリー君、慌てて食べなくても良いからね。

スッと、ジョセフィンが席を立った。俺も席を立つ。ジョセフィンがちらりと俺の方をみた。

「マーカス様はお食事を続けていらしてください。」
「いや、相手は四人だし。声が大きくて、食事をしている人達の迷惑になってるだろ。早くお話して食事に戻ろうよ。」

俺がそう言うと、ジョセフィンは頷いて俺の半歩斜め後ろについた。
朱色の髪をした冒険者が吠えるようにして何か怒鳴っているので、消音魔法を発動して俺達と冒険者達の周囲に壁を作った。ついでに冷風魔法もサービスしておこう。少し頭を冷やしてもらった方が良いだろう。

「お静かに願えませんかね。俺達まだ食事中なので。」
「な、何?何かしたか‥‥?」

何か違和感を感じたらしくて朱色の髪の男が周囲を見回した。ヒュゥッと冷気を帯びた風が冒険者達の周囲に渦巻いた。

「ひ!?」
茶色いくりくりとしたショートカットの女性冒険者が肩を撥ねさせて両腕で自分を抱くようにして身を竦めた。

「ちょ‥、ま‥‥。」
「食事中に怒鳴られたら迷惑なの、わかりませんか?」

一歩ずつ近付いて行って話しかけた。四人はその場に立ち尽くしている。何故か、傍にいた従業員の人の顔も青ざめている。冷風当たらないようにしてるよね。

「‥‥。」
「えーと?大声だしたら迷惑なのはわかりませんか?」
返事がないのでもう一歩近付いて話しかけた。

「‥‥。」
「ねえ?聞いてます?」
もう一歩近付こうとしたら、ジョセフィンが俺の腕を掴んだ。

「うん?」
ジョセフィンをみると、顔を横に振っている。もう一度彼らの方をみたら、ちょっと様子がおかしい。顔色は悪いし朱色髪の男以外は気を失いそう?

消音魔法と冷風魔法を解いてみたら、四人のうち二人が床に崩れる様に座り込んだ。
朱色の髪の男が全速力で走りきったみたいに激しく息をしながら目を白黒させている。もう一人は、身体を折り曲げて膝に両手を当てて酷く疲れたような様子になった。

「危ない所でした。もう少しで従業員が床掃除をすることになりましたよ。」
ジョセフィンが,少しだけ困ったように眉を下げた。

「おっと。」
圧をかけてしまっていたようだ。何だか王都出てからこういう事多くないか?
宿に迷惑をかけていた連中なので、大人しくしてもらった方が良いけどね。これ以上圧をかけても良くなさそうなので微笑んでおく。

「お静かにして、いただけますよね。」
「‥‥はい‥‥。はっ、はっ‥‥。」

肩で息をしていた朱色髪の男は返事をした後、ごくんと息をの見込んでから頭を下げて来た。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

親友面した女の巻き添えで死に、転生先は親友?が希望した乙女ゲーム世界!?転生してまでヒロイン(お前)の親友なんかやってられるかっ!!

音無砂月
ファンタジー
親友面してくる金持ちの令嬢マヤに巻き込まれて死んだミキ 生まれ変わった世界はマヤがはまっていた乙女ゲーム『王女アイルはヤンデレ男に溺愛される』の世界 ミキはそこで親友である王女の親友ポジション、レイファ・ミラノ公爵令嬢に転生 一緒に死んだマヤは王女アイルに転生 「また一緒だねミキちゃん♡」 ふざけるなーと絶叫したいミキだけど立ちはだかる身分の差 アイルに転生したマヤに振り回せながら自分の幸せを掴む為にレイファ。極力、乙女ゲームに関わりたくないが、なぜか攻略対象者たちはヒロインであるアイルではなくレイファに好意を寄せてくる。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

処理中です...