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休憩場
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城を出て2日が経った。その間はテントを設営し寝食を行っていた。
訓練中も同様にテントを使用するようだ。ナオキはテントで寝ることに抵抗は無い。小さい頃、家族でよくキャンプに行ったものだ。だが明日香とルカは女性ということも有り、かなり神経をすり減らしているように見える。
「うぅ……もういや……外で寝るなんて……フカフカのベッドでぐっすり寝たい……」
昨日から明日香は同じことを繰り返している。
「明日香さん。今は辛いと思うけど少しずつ慣れていくから。頑張ろう」
八京が気遣い懸命に励ましている。
「せめて八京さんが隣にいてくれたら安心できるのに……あ、でもそうなったらかえって眠れなくなろかも……キャー!」
疲労からだろう。普段なら言わないことまで口走っている。
「明日香さん。そんな冗談が言えるならまだ大丈夫かな……」
八京さん冗談じゃないですよ。心の声がダダ洩れなだけですよ。
「ルカちゃんも大丈夫? かなり疲れて見えるけど……」
ナオキもルカを気遣い言葉を掛けた。
「はい。昨日よりはマシですけど、やっぱり疲れがあんまりとれなくって……センパイは大丈夫なんですか?」
「うん。昔家族でキャンプに行ってたからね。外で寝ることにあんまり抵抗は無いんだ。それに八京さんも一緒だからね。ルカちゃん達よりは安心して寝れてるのかもね」
「ナオキ。私と寝る場所変わりなさいよ。私が八京さんと一緒に寝るからアンタはルカちゃんと一緒に寝ればいいでしょ?」
勿論これも明日香の本心だろう。
「ば、馬鹿! お前、そんなこと出来る訳ないだろ! ねぇルカちゃん?」
「えぇ!? えっと……そ、そうですよね。さ、流石に一つのテントで一緒に寝るなんて……」
ルカは顔を真っ赤にしてそれ以上言葉が出ない。
「みんな。冗談はそのくらいにして。ほら、あそこが次の休憩所だよ」
3人とも冗談を言ってるつもりはなかったが八京には冗談に聞こえるのだろう。
八京が指定した場所には泉があり、既に休憩している兵士も見えた。
「あれ? 八京さん。見たことない馬車がいくつも停まってますよ?」
兵士たちに交じって大小様々な馬車がいる。全て見覚えのないモノだった。
「ここの道は色々な人たちが使うんだ。水場もそんなにないね。泉のある所はよく休憩場所で使われるんだよ」
なるほど。今まではすれ違うことはあったがたまたま休憩が被らなかっただけらしい。
休憩所に着いたのでナオキは早速、泉でバシャバシャと顔を洗った。
「はぁ~。生き返る」
火照った皮膚に冷たい水が心地いい。
「ナオキおやじ臭いわよ」
「しょうがないだろ! ホントに気持ちいいんだから。明日香もやってみろよ気持ちいいぞ!」
「わ、私はほら……化粧とか落ちちゃうし……い、いいわよ」
この世界に来てからも明日香は可能な限り化粧をしていた。元が良いのだからそんなに手を加える必要はない気もするが、乙女心というものだろう。誰かが言っていた『おしゃれは我慢の連続だ』とナオキはそれを目の当たりにしていた。
「ルカちゃんは? 気持ちいいよ?」
ルカにも話を振ってみるが同様に拒否をされるだろう。
「私は……やろうかな……明日香さんみたいに化粧してないし」
以外な反応だった。だがその気取らなさがルカの魅力の一つだ。
遠慮がちにすくった水でルカは顔を洗った。
「ホントだ! 冷たくて気持ちいいですね」
そう言いながらルカは何度か顔を洗った。それを羨ましそうに明日香は眺めている。
「明日香。やりたいならやればいいじゃないか別に止めないぞ?」
「う、うるさいわね。私はいいの!」
却って意固地になってしまった……
しかし改めて辺りを見回してみると冒険者、商人、旅人など様々な人間が休憩をしている。その中でひと際大きな馬車が目を引いた。いや、荷車を引いているのは馬ではない。馬車と呼ぶのが正解なのか……サイ? 牛? 象より一回り以上大きいその生き物は体に荷車をくくられていた。
「なぁアレ。なんて生き物かな?」
話を振られた明日香たちも大きな馬車(?)をみて驚いた。
「え!? 知らないわよあんなの……って言うかあれ魔物じゃないの?」
「お、襲われたりしないんでしょうか……」
あそこの一帯だけほとんど人がいない。どうやらみんなあの巨大な生き物を警戒しているようだ。
「あれはベヒーモスの子供だよ。しっかり教育されているから人を襲うことはないから大丈夫」
八京だった。ナオキ達の後ろにいて会話を聞いていたようだ。
「あれがベヒーモス……ゲームで知ってたけど、あんな姿なんですね……ってあれ、まだ子供ですか!? 象より大きいですよ!!」
「大人になるとあの3倍にはなるよ。一度戦ったことがあるけど皮膚が硬くってね。結構苦労したよ」
改めて八京の凄さを実感する。
「そうだ! 折角だから近くで見てみようよ。割とおとなしいし触っても大丈夫だから」
「え!? イヤイヤ無理ですよ! デカいし怖いし、それに魔物ですよ? 万が一ってこともあるじゃないですか!」
八京の提案にすぐさま拒否をした。
魔物が大人しい? そんなはずはないだろう。
「う~ん……八京さんのお誘いだけど私もちょっと……」
流石の明日香も乗り気じゃない。
「ああ見えて意外と温厚なんだよ。ああやって馬車の代わりをやってるんだから大丈夫。ルカさん。どうだい?」
ナオキと明日香が乗り気ではないのでルカを誘っているが、元々人見知りが激しくって臆病な性格のルカが誘いに乗るとは思えなかっ――
「行きます!」
即答だった。
「ええええええぇ!! ルカちゃん冗談でしょ? 魔物だよ? デカいんだよ? オレたちなんか丸呑みにされちゃうよ!?」
「ナオキ君。ベヒーモスは草食だから僕たちは食べないよ……」
「いやそれでも魔物ですよ? ルカちゃん本気なの?」
「はい。私、動物とか好きで……それに見た目は怖いけど目は何となく可愛いかなって……」
動物が好き? 目が可愛い? そもそもあれは動物に入るか疑問だし目だって『つぶらな瞳』って感じではない。正直ルカの感覚が理解できなかった。
「そう、じゃあ行ってみよう! ほら、ナオキ君も明日香さんも一緒に行こう。大丈夫! もし襲われそうになったら僕が助けるから」
「はい。行きましょう」
ルカちゃんが生き生きとしてる……リスやウサギとかの小動物ならいざ知らず。ベヒーモスを見るのにあんなに喜ぶとは。人って解らないものだ。
「明日香どうする?」
尚も行きたくないナオキは明日香の反応を伺った。
「う~ん。あんまり行きたくないけど。ルカちゃんも八京さんも行くし仕方ない。行くわ」
「マジで!? 一緒にここで待ってようよ」
「別に無理しなくていいわよ。嫌ならココで待ってなさいよ」
「だってみんな行くんだろ? 一人で待ってるのもボッチ感半端ないし……」
「ほら。センパイも行きましょうよ! 見たことない動物ですよ?」
「いやルカちゃん。あれは動物じゃないって……」
ルカはナオキの手を引き、ベヒーモスの元まで向かった。
訓練中も同様にテントを使用するようだ。ナオキはテントで寝ることに抵抗は無い。小さい頃、家族でよくキャンプに行ったものだ。だが明日香とルカは女性ということも有り、かなり神経をすり減らしているように見える。
「うぅ……もういや……外で寝るなんて……フカフカのベッドでぐっすり寝たい……」
昨日から明日香は同じことを繰り返している。
「明日香さん。今は辛いと思うけど少しずつ慣れていくから。頑張ろう」
八京が気遣い懸命に励ましている。
「せめて八京さんが隣にいてくれたら安心できるのに……あ、でもそうなったらかえって眠れなくなろかも……キャー!」
疲労からだろう。普段なら言わないことまで口走っている。
「明日香さん。そんな冗談が言えるならまだ大丈夫かな……」
八京さん冗談じゃないですよ。心の声がダダ洩れなだけですよ。
「ルカちゃんも大丈夫? かなり疲れて見えるけど……」
ナオキもルカを気遣い言葉を掛けた。
「はい。昨日よりはマシですけど、やっぱり疲れがあんまりとれなくって……センパイは大丈夫なんですか?」
「うん。昔家族でキャンプに行ってたからね。外で寝ることにあんまり抵抗は無いんだ。それに八京さんも一緒だからね。ルカちゃん達よりは安心して寝れてるのかもね」
「ナオキ。私と寝る場所変わりなさいよ。私が八京さんと一緒に寝るからアンタはルカちゃんと一緒に寝ればいいでしょ?」
勿論これも明日香の本心だろう。
「ば、馬鹿! お前、そんなこと出来る訳ないだろ! ねぇルカちゃん?」
「えぇ!? えっと……そ、そうですよね。さ、流石に一つのテントで一緒に寝るなんて……」
ルカは顔を真っ赤にしてそれ以上言葉が出ない。
「みんな。冗談はそのくらいにして。ほら、あそこが次の休憩所だよ」
3人とも冗談を言ってるつもりはなかったが八京には冗談に聞こえるのだろう。
八京が指定した場所には泉があり、既に休憩している兵士も見えた。
「あれ? 八京さん。見たことない馬車がいくつも停まってますよ?」
兵士たちに交じって大小様々な馬車がいる。全て見覚えのないモノだった。
「ここの道は色々な人たちが使うんだ。水場もそんなにないね。泉のある所はよく休憩場所で使われるんだよ」
なるほど。今まではすれ違うことはあったがたまたま休憩が被らなかっただけらしい。
休憩所に着いたのでナオキは早速、泉でバシャバシャと顔を洗った。
「はぁ~。生き返る」
火照った皮膚に冷たい水が心地いい。
「ナオキおやじ臭いわよ」
「しょうがないだろ! ホントに気持ちいいんだから。明日香もやってみろよ気持ちいいぞ!」
「わ、私はほら……化粧とか落ちちゃうし……い、いいわよ」
この世界に来てからも明日香は可能な限り化粧をしていた。元が良いのだからそんなに手を加える必要はない気もするが、乙女心というものだろう。誰かが言っていた『おしゃれは我慢の連続だ』とナオキはそれを目の当たりにしていた。
「ルカちゃんは? 気持ちいいよ?」
ルカにも話を振ってみるが同様に拒否をされるだろう。
「私は……やろうかな……明日香さんみたいに化粧してないし」
以外な反応だった。だがその気取らなさがルカの魅力の一つだ。
遠慮がちにすくった水でルカは顔を洗った。
「ホントだ! 冷たくて気持ちいいですね」
そう言いながらルカは何度か顔を洗った。それを羨ましそうに明日香は眺めている。
「明日香。やりたいならやればいいじゃないか別に止めないぞ?」
「う、うるさいわね。私はいいの!」
却って意固地になってしまった……
しかし改めて辺りを見回してみると冒険者、商人、旅人など様々な人間が休憩をしている。その中でひと際大きな馬車が目を引いた。いや、荷車を引いているのは馬ではない。馬車と呼ぶのが正解なのか……サイ? 牛? 象より一回り以上大きいその生き物は体に荷車をくくられていた。
「なぁアレ。なんて生き物かな?」
話を振られた明日香たちも大きな馬車(?)をみて驚いた。
「え!? 知らないわよあんなの……って言うかあれ魔物じゃないの?」
「お、襲われたりしないんでしょうか……」
あそこの一帯だけほとんど人がいない。どうやらみんなあの巨大な生き物を警戒しているようだ。
「あれはベヒーモスの子供だよ。しっかり教育されているから人を襲うことはないから大丈夫」
八京だった。ナオキ達の後ろにいて会話を聞いていたようだ。
「あれがベヒーモス……ゲームで知ってたけど、あんな姿なんですね……ってあれ、まだ子供ですか!? 象より大きいですよ!!」
「大人になるとあの3倍にはなるよ。一度戦ったことがあるけど皮膚が硬くってね。結構苦労したよ」
改めて八京の凄さを実感する。
「そうだ! 折角だから近くで見てみようよ。割とおとなしいし触っても大丈夫だから」
「え!? イヤイヤ無理ですよ! デカいし怖いし、それに魔物ですよ? 万が一ってこともあるじゃないですか!」
八京の提案にすぐさま拒否をした。
魔物が大人しい? そんなはずはないだろう。
「う~ん……八京さんのお誘いだけど私もちょっと……」
流石の明日香も乗り気じゃない。
「ああ見えて意外と温厚なんだよ。ああやって馬車の代わりをやってるんだから大丈夫。ルカさん。どうだい?」
ナオキと明日香が乗り気ではないのでルカを誘っているが、元々人見知りが激しくって臆病な性格のルカが誘いに乗るとは思えなかっ――
「行きます!」
即答だった。
「ええええええぇ!! ルカちゃん冗談でしょ? 魔物だよ? デカいんだよ? オレたちなんか丸呑みにされちゃうよ!?」
「ナオキ君。ベヒーモスは草食だから僕たちは食べないよ……」
「いやそれでも魔物ですよ? ルカちゃん本気なの?」
「はい。私、動物とか好きで……それに見た目は怖いけど目は何となく可愛いかなって……」
動物が好き? 目が可愛い? そもそもあれは動物に入るか疑問だし目だって『つぶらな瞳』って感じではない。正直ルカの感覚が理解できなかった。
「そう、じゃあ行ってみよう! ほら、ナオキ君も明日香さんも一緒に行こう。大丈夫! もし襲われそうになったら僕が助けるから」
「はい。行きましょう」
ルカちゃんが生き生きとしてる……リスやウサギとかの小動物ならいざ知らず。ベヒーモスを見るのにあんなに喜ぶとは。人って解らないものだ。
「明日香どうする?」
尚も行きたくないナオキは明日香の反応を伺った。
「う~ん。あんまり行きたくないけど。ルカちゃんも八京さんも行くし仕方ない。行くわ」
「マジで!? 一緒にここで待ってようよ」
「別に無理しなくていいわよ。嫌ならココで待ってなさいよ」
「だってみんな行くんだろ? 一人で待ってるのもボッチ感半端ないし……」
「ほら。センパイも行きましょうよ! 見たことない動物ですよ?」
「いやルカちゃん。あれは動物じゃないって……」
ルカはナオキの手を引き、ベヒーモスの元まで向かった。
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