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奴隷ということ
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「――凄い……治ってきてる……」
ナオキは涼音から回復魔法を受けたが、実際の傷口を治していくところを見たのは初めてだった。
「八京さんの魔法気持ちいいのよね。私、ケガしてなくても回復魔法受けたいもん」
明日香が少女を羨ましそうに眺めている。
彼女は意識を失うほどに殴られ続けていたのだから羨ましいはずは無いのだが
「……う……ん……」
程なく少女が意識を取り戻し始めた。
「……お……かあ……さん……?」
夢でも見ているのだろう。まだ意識がはっきりしていない。
「目が覚めた? 大丈夫? 怪我は完全には治ってないけど……身体動かせる?」
八京が少女に問いかける。回復魔法はまだ続けていた。
「は、はい。あの……アナタ方は?」
少女はナオキ達を見回した。警戒している。当然だ。意識を失って気が付いたら見ず知らずの男女が自分を囲っているのだから。
「この家の主人が君に乱暴をしていたのを目撃してね。彼がそれを止めてくれたんだ」
八京が少女に説明をした。正確には止めようとして殴られ、横やりが入って終わったのだけど。
「そうだったんですか……こんな私のために……有難うございます」
横たわっていた少女はナオキへ身体を向けナオキの両手を握った。
小麦色の肌をしたその少女の髪は銀髪で目は緑色をしている。だがその眼には生気が感じられなかった。この国の人間に銀髪や緑色をした目の持ち主はいない。どこか異国の出身だろうか……
少女は布の服を着ていたが、ボロボロで汚れている。少女の外見も髪はボサボサで身体もお世辞にも綺麗とは言えない。数日は身体を洗っていないのだろう。独特の匂いが漂っている。
「あの……旦那様はどちらに……」
少女は急に周りを気にしだした。先ほどまで殴っていた主人がいないのだ。気になるのも無理はない。
「家の中に客を待たせてるとかで中に入っていったよ。もう機嫌も悪く無いんじゃないかな」
「そうですか……」
八京の言葉を聞いて少女は安堵の笑みを浮かべた。
「ねぇ、アナタ大丈夫? あいつにいつも暴力受けてるの?」
明日香が少女に質問をした。
「いえ……いつもというわけでは無いんですが、時々……でも大丈夫です。慣れてますから」
少女は力なく言った。
「慣れてるって……ねぇ八京さん、この子どうにかならないの? 奴隷じゃなくなる方法とかあるんでしょ?」
明日香はせがむように八京に言った。しかし八京は力なく首を振った。
「残念だけど、僕たちリスターターにはどうすることもできないんだ。貴族ならお金を出して引き取ることもできるだろうけど、それも高額だ。簡単にはいかない。それに、一度奴隷になったらずっと奴隷のままなんだよ」
「酷い……」
ルカの目には涙が浮かんでいた。
「そんな……やっぱりこんなの間違ってるわ」
明日香は怒りから声が震えている。
「あの、私、本当に大丈夫ですから。それに旦那様は、まだ幼かった私を拾ってくださいました。それだけでも感謝をしなくちゃいけません」
「………………」
少女は力なく言った。これ以上どんな声をかけても、薄っぺらく、気休めにもならないからだ。
少女は今の状況を、運命を、そしてこれからを受け入れている。いや、そうではない。諦めている。
今までも、そしてこれからも奴隷として生きていく。そんな呪縛が彼女の心を凍り付かせているのだ。
少女はゆっくり立ち上がり、一歩後ろに下がった。
「皆さんそんな顔しないでください。私、結構丈夫だし、これからだって何とかなりますから。それでは、まだ私は用事がありますので失礼します。皆さんには助けてもらったのに何もお返しできるものが私にはなくて誠に申し訳ございません」
「そんなこと気にすることないよ。オレたちが勝手にやったことだし。でも、根本の解決が出来なくってその……ゴメン」
自分が何も出来ない状況にナオキは苛立った。
「そんな、本当に気にしないでください。アナタ方に助けてもらったご恩は一生忘れませんから。それでは失礼します」
少女はナオキ達に背を向け走り出そうとした。その時――
「あの……」
ルカが少女に声をかけた。
「まだ何か?」
呼び止められて少女は振り返った。
「これ、食べてください」
ルカは手に持っていた紙袋を少女に渡した。
「これは……」
「パンです。食べてください、美味しいですよ」
「そんな……助けてもらった上にこんな大層な品物、受け取れませんよ」
「いいんです。私達こんなことくらいしかできないし……いいから貰ってください!」
ルカは半ば強引に押し付ける形で紙袋を少女に渡した。
「……良いんですか?」
困惑した表情の少女はナオキ達に尋ねた。
「ここの主人にバレないように食べなさいよ。見つかったら後々大変でしょ?」
笑いながら明日香は言った。ナオキも八京も反対することは無かった。
「皆さん……本当にありがとうございます」
少女は深く頭を下げた。顔が見えなくなったが少女からは涙がこぼれ落ちていた。
「ほら、早く行かないとご主人様に見つかっちゃうわよ。私達ももう行くからね」
「はい、本当にありがとうございます。では、失礼します」
顔を上げた少女は泣きながら笑っていた。その眼にはかすかに生気が感じられた。
少女は向きを変え走っていった。
「じゃあ僕たちも行こう。主人に見つかったらまた怒られちゃうよ」
「そうですね、また殴られるのはごめんですよ」
八京に促されナオキ達も走り敷地の外を目指した。その際、ナオキは一度止まり、少女の行った方向を見た。が、ソコには少女の姿は無かった。
そして視線を前に向ける時、家の窓が目に入り立ち止まった。主人のダンが客と話をしている姿が見えたのだ。ナオキの視線はその客に注がれた。ナオキが殴られた後、ダンに声をかけたのは人物それは――『ナイトメア・カーニバル』のエドガーだった。
視線に気付いたエドガーはナオキにサングラス越しに視線を向け笑みを浮かべた。それは一瞬だったが、間違いなくナオキを認識し送った笑みだった。
「ナオキー! 早く来ないと置いてくわよ!」
明日香の声で我に返りナオキは再び走り出した。
ナオキは涼音から回復魔法を受けたが、実際の傷口を治していくところを見たのは初めてだった。
「八京さんの魔法気持ちいいのよね。私、ケガしてなくても回復魔法受けたいもん」
明日香が少女を羨ましそうに眺めている。
彼女は意識を失うほどに殴られ続けていたのだから羨ましいはずは無いのだが
「……う……ん……」
程なく少女が意識を取り戻し始めた。
「……お……かあ……さん……?」
夢でも見ているのだろう。まだ意識がはっきりしていない。
「目が覚めた? 大丈夫? 怪我は完全には治ってないけど……身体動かせる?」
八京が少女に問いかける。回復魔法はまだ続けていた。
「は、はい。あの……アナタ方は?」
少女はナオキ達を見回した。警戒している。当然だ。意識を失って気が付いたら見ず知らずの男女が自分を囲っているのだから。
「この家の主人が君に乱暴をしていたのを目撃してね。彼がそれを止めてくれたんだ」
八京が少女に説明をした。正確には止めようとして殴られ、横やりが入って終わったのだけど。
「そうだったんですか……こんな私のために……有難うございます」
横たわっていた少女はナオキへ身体を向けナオキの両手を握った。
小麦色の肌をしたその少女の髪は銀髪で目は緑色をしている。だがその眼には生気が感じられなかった。この国の人間に銀髪や緑色をした目の持ち主はいない。どこか異国の出身だろうか……
少女は布の服を着ていたが、ボロボロで汚れている。少女の外見も髪はボサボサで身体もお世辞にも綺麗とは言えない。数日は身体を洗っていないのだろう。独特の匂いが漂っている。
「あの……旦那様はどちらに……」
少女は急に周りを気にしだした。先ほどまで殴っていた主人がいないのだ。気になるのも無理はない。
「家の中に客を待たせてるとかで中に入っていったよ。もう機嫌も悪く無いんじゃないかな」
「そうですか……」
八京の言葉を聞いて少女は安堵の笑みを浮かべた。
「ねぇ、アナタ大丈夫? あいつにいつも暴力受けてるの?」
明日香が少女に質問をした。
「いえ……いつもというわけでは無いんですが、時々……でも大丈夫です。慣れてますから」
少女は力なく言った。
「慣れてるって……ねぇ八京さん、この子どうにかならないの? 奴隷じゃなくなる方法とかあるんでしょ?」
明日香はせがむように八京に言った。しかし八京は力なく首を振った。
「残念だけど、僕たちリスターターにはどうすることもできないんだ。貴族ならお金を出して引き取ることもできるだろうけど、それも高額だ。簡単にはいかない。それに、一度奴隷になったらずっと奴隷のままなんだよ」
「酷い……」
ルカの目には涙が浮かんでいた。
「そんな……やっぱりこんなの間違ってるわ」
明日香は怒りから声が震えている。
「あの、私、本当に大丈夫ですから。それに旦那様は、まだ幼かった私を拾ってくださいました。それだけでも感謝をしなくちゃいけません」
「………………」
少女は力なく言った。これ以上どんな声をかけても、薄っぺらく、気休めにもならないからだ。
少女は今の状況を、運命を、そしてこれからを受け入れている。いや、そうではない。諦めている。
今までも、そしてこれからも奴隷として生きていく。そんな呪縛が彼女の心を凍り付かせているのだ。
少女はゆっくり立ち上がり、一歩後ろに下がった。
「皆さんそんな顔しないでください。私、結構丈夫だし、これからだって何とかなりますから。それでは、まだ私は用事がありますので失礼します。皆さんには助けてもらったのに何もお返しできるものが私にはなくて誠に申し訳ございません」
「そんなこと気にすることないよ。オレたちが勝手にやったことだし。でも、根本の解決が出来なくってその……ゴメン」
自分が何も出来ない状況にナオキは苛立った。
「そんな、本当に気にしないでください。アナタ方に助けてもらったご恩は一生忘れませんから。それでは失礼します」
少女はナオキ達に背を向け走り出そうとした。その時――
「あの……」
ルカが少女に声をかけた。
「まだ何か?」
呼び止められて少女は振り返った。
「これ、食べてください」
ルカは手に持っていた紙袋を少女に渡した。
「これは……」
「パンです。食べてください、美味しいですよ」
「そんな……助けてもらった上にこんな大層な品物、受け取れませんよ」
「いいんです。私達こんなことくらいしかできないし……いいから貰ってください!」
ルカは半ば強引に押し付ける形で紙袋を少女に渡した。
「……良いんですか?」
困惑した表情の少女はナオキ達に尋ねた。
「ここの主人にバレないように食べなさいよ。見つかったら後々大変でしょ?」
笑いながら明日香は言った。ナオキも八京も反対することは無かった。
「皆さん……本当にありがとうございます」
少女は深く頭を下げた。顔が見えなくなったが少女からは涙がこぼれ落ちていた。
「ほら、早く行かないとご主人様に見つかっちゃうわよ。私達ももう行くからね」
「はい、本当にありがとうございます。では、失礼します」
顔を上げた少女は泣きながら笑っていた。その眼にはかすかに生気が感じられた。
少女は向きを変え走っていった。
「じゃあ僕たちも行こう。主人に見つかったらまた怒られちゃうよ」
「そうですね、また殴られるのはごめんですよ」
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そして視線を前に向ける時、家の窓が目に入り立ち止まった。主人のダンが客と話をしている姿が見えたのだ。ナオキの視線はその客に注がれた。ナオキが殴られた後、ダンに声をかけたのは人物それは――『ナイトメア・カーニバル』のエドガーだった。
視線に気付いたエドガーはナオキにサングラス越しに視線を向け笑みを浮かべた。それは一瞬だったが、間違いなくナオキを認識し送った笑みだった。
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