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2章

マグナ大森林part8

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恐らく時刻は朝の8時を過ぎたあたりだろう。
最短ルートでガンガン森を突き進み、砦付近に到着したフローラ一行は馬車から降りている。唯一残っているのはセレンとルネだけだ。シヴァに二人の子守りを任せているので恐らくは安全だろう。単にふわふわ浮いているだけなのだが、珍しい生き物?と言ったら失礼かもしれないが彼等の好奇心を満たすのには充分だったようだ。

偵察に行かせたゴブリンの情報によると、大体の盗賊は未だに寝ているらしい。相当憂さでも溜まっていたのか昨夜は派手に飲み明かしたようで、未だ熟睡しているようだ。起きている者は3人程らしいが横になっていたり、机に突っ伏してだるそうにしていたりとこちらに気づいているものはいないようだ。

「それじゃ手早く済ませましょ。」
「そ、そうですね、がが頑張ります!」ニーナに同調して返事をするフローラ。黙ってコクリと頷くカミラはニーナの言葉を合図に道中に大量に集められた薬葉を焚きつける。口や鼻は布をあて、吸い込まないように気を付けている。
フローラは砦全体を半円状に【ウォータ】で薄い膜を作り上げ、覆っていく。
そのままモクモクと焚かれている煙が砦内に充満しだすと…。


昨日はだいぶ飲みまくっちまったなあ。そんなことを考えながら、前夜祭かのように浴びるほど酒を食らっていたのは猫人の里を落とすために砦内の仲間を統率を任されていたサブリーダーの狼人デール。この盗賊グループの中では2番目に地位の高い獣人だ。彼は単純で少しばかり頭が回らない。他の盗賊仲間達もさほど頭がいいわけではないが…。
そんな彼がどうしてナンバー2になれたのか。一重に戦闘においての読みが頭抜けているのだ。体格が良く、腕っぷしの強さは勿論のことだが、引き際の良さなど彼のおかげで全滅を免れてきた功績があるためだ。一瞬の判断を本能に任せていくデール、物事を熟考してから行動に移す戦略家のルトが彼をナンバー2にした理由はそこにある。
寝台で横になっているデールは今日の夜、ミネストロ池から来る手筈になっている増援(残りの仲間)が来次第、里を完全に落とすという計画で頭がいっぱいだ。
じっくり時間をかけた分、待ち遠しいのだろう。お酒をたらふく飲んだ割には早めに目が覚めてしまっている。
ごろんと、寝返りを打つと地べたで寝そべっている者や机やテーブルに突っ伏している仲間をぼーっとみている。酒や男くさい匂いに混じってふんわりと柔らかな草木の匂いを感じ、大きなあくびをする。まだ時間には早えよなあ、もうひと眠りするかと考えていると、おかしなことに気づく。
風が全く吹いていないのに草木の匂いがするわけない、それによく嗅いでいると匂いが少しずつ濃くなっているような…。
ばっと起き、仲間の元へと駆け寄り、揺り起こそうとしてみる。
「おい!起きろ!!逃げるんだよ!!」と、砦の中心で叫ぶも反応したのは何とか反応したのは2人だけ。もう既に毒によって昏睡してしまっているのだ。何が起きてやがる?と考えても思いつかない。逃げろ。とだけ本能が警告しているが、叫んだせいで毒を余分に吸い込んでしまう。
裏手の抜け穴から脱出する際、鎖が一つ外れていることに気づく。脱走した捕虜がやりやがったのか?!くそ、見つけたらぶち殺してやる!!取り敢えず身の安全を優先し、一人砦の裏手から足をもたつかせながら勢いよく脱出すると全身が何かにコーティングされたかのように濡れる。【ウォータ】の膜がこちら側で一つ波打つ。
「がは、げほっ、今度はなんだあ!?」よろめきながら地面に寝転がるデール。


なんとか這ってでも離れようとする彼に上空から矢が降り注ぐ。緊急回避するも全て避け切れず、肩に矢が掠ってしまう。
「おー、おみごとおみごと。」パチパチと手を叩きながらデールの前方に現れたのはニーナだ。
前方をフローラ、カミラの二人で、裏手の入り口をニーナが張り込んで上手く逃げた盗賊を捕らえる作戦だったのだ。砦の出入口2箇所に、木の上からゴブリンが、弓でサポートする手筈だが、フローラ達のところはゴブリンアークスのドルルの近接パーティがメインとなっている編成だ。
少し遅れて向こうからは二つ波が返ってくるのをニーナは見過ごさない。

すかさず警戒態勢に入り、5匹のゴブリンの位置やニーナを視界に捉えるデール。戦っても多勢に無勢だが、どうやってこの場を逃げようか本能に従おうと耳を傾けるも、聞こえるのはニーナの笑い声だけだ。

「…ふふ、逃げようと思ってるの?無駄よ、逃げられないわ、盗賊さん。あなたみたいにタフな人は危険すぎるしね。」大蛇を抜刀し、デールへと歩みを進め近づくニーナ。
「威勢の良いこと言うじゃねえか!お前如き引き裂いてくれるわ!」手足の部分獣化をし、臨戦態勢に入っている。
それを見たゴブリン達が一斉に矢を引き絞る。
「砦内に充満してるのは睡眠作用のある薬草だったんだけどこうも効いてないってすごいね」
獣化を目の当たりにしながら、右手をニーナが上に挙げひらひら左右に振ると、ゴブリン達は、さっと構えを解く。

「アァッ、上等だゴラァ!!」舐められてキレた風にみせかけるが、この状況を有難く思っている。バカな女だ、
体に回った毒のせいで本領を発揮できないが女一人ならどうにでも仕留めれる!
こいつはツイてるぜ。
ゆっくり近づいてくる彼女に、鋭い爪で引き裂かんと間合いを詰めようと迫る。
鋭い斬撃と爪撃での激しい攻防が始まる。
両者一歩も動かず、ニーナは受け流しては斬り返し浅く斬りつけている。しかし、致命傷に至る一撃は全て防がれている。部分獣化し肉体強化している為、【超加速】しているニーナの剣戟に両爪で互角とはいかないものの肉薄しているのだ。
「オラオラ、どうしたぁ!!その程度じゃ俺の首は取れねえぞ!っと!!!」
デールは速度で若干劣るのを補う為に膂力で押し切る選択をした。
ニーナの剣戟を受け止めるではなく左爪のみで弾き返し、隙を突くように力任せに右爪で横腹を抉るように仕掛ける。
「ちっ。」
ニーナは単純な力負けで、守勢に回らざる負えなくなり、舌打ちを打ち、一度後ろに飛び退き、態勢を整える。デールの右爪は空振りに終わるが、初めて両者の立ち位置に変化が見られる。
ニーナが後退したことで、ゴブリン達にどよめきが生まれる。どうすればいいのか困惑しているのだ。弓を再度構えるもの、援護すべきなのかどうか分からず、ニーナの指示を待つものと、統率に乱れが生じる。

一戦の流れで勝ちを確信したのかデールは、にやりと口端を吊り上げる。
「このまま押し切らせてもらうぞ」右足にチカラをいれ、踏み込もうとする。
しかし、足が思う様に動かない。おかしい、徐々に毒は抜けているはず。なのに体が痺れて…ガクッと片膝をつくデール。

「やっと痺れてきたの?ほんとタフね。それとも掠り傷だったからかな?鏃につけてもらってた、この麻痺毒、即効性って聞いてたんだけどなあ。」
ニーナは地面に刺さった鏃を引き抜き、胸ポケットから小瓶を取り出して、黄色の薬液を再び鏃に滴らせる。
麻痺が効いてきたのかどんどん体の自由が奪われていく中、右肩の掠り傷にデールが手を当てていると、その傷口にぶすっと鏃を捻じ込んでいく。
「グウウっ」完全獣化を試み、足掻こうとするも最早絶望的だ。
「だから、無駄って言ってるのにぃ。他にも向こうに逃げたあんたの仲間始末しないとなんだから。」空になった小瓶を投げ捨てると、ニーナは刀を振るための間合いを取り、大蛇で袈裟斬りをする。ドサっと倒れ伏すとドクドクと血が流れでてきているようだ。

ニーナは後はよろしく。と言わんばかりにゴブリン達に手を振り、フローラの元へと駆けていくのであった。








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