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3章

ミドレスト皇国 召喚4(回想編)

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サイモンは暖炉に薪を焚べ直し、魔法で火を調節する。
退席者の出入りの所為で、冷え込んでいた空気がほんのりと暖かみを帯び始める。

長い沈黙の中、豪奢な椅子に腰掛ける領主サイモンが話を切り出すのを、膝をついて彼(ルーベルト)は待った。
「…ゼブレスト皇帝暗殺の一件にルーベルトよ。お前の才に一目置いてはいる。…だが、如何せんお前の魔法には協調性がなさすぎる。」
長い沈黙を破り、顎髭を触るサイモンは告げた。
「…仰る通りです、父上。」
磨き続けた魔法は、強力無比ではある。だが、ルーベルトは敵味方を分別し、対象を絞って魔法を扱えないのだ。
後に分かった事なのだが、単に範囲魔法を対象を選別して扱う技能が彼にはなかったのだ。
サイモンに戦力外通告を受けることは、ルーベルトにとって死よりも重い。
現にルーベルトは顔面蒼白になっている。
絶望が身体を蝕み出し、恐れていた事が現実になった恐怖に身を震わせている。
不憫な息子を思い、父サイモンがある提案をルーベルトに持ち掛ける。
「命を"失う"覚悟があるか?」
失う、であって懸けるではない。
「…勿論ですッ!一族の繁栄こそ私の生きる全て。糧にもなれないのであれば死んだも同然です、父上。」
サイモンの問いを正確に理解した上でルーベルトは吠えた。
「ならば皇国へ行け。手薄となった首都を堕とすのだ。道中までは護衛を付けよう。」
十中八九死を意味する特攻作戦という訳だ。
他の兄妹にもリスク(殉死する可能性)はある。
彼等にも覚悟があり、命を懸けて作戦に臨むだろう、だが付き纏う死は絶対ではない。
ゼブレスト皇帝を葬りさえすれば彼等は逃げの一手を打ち続ければいいのだから。
ルーベルトが一人最後まで残されたのは作戦の決行が死を意味するからだろう。
死を厭わないとはいえ、兄妹達との待遇差は感じずには居られないはずだ。
だが一度はもう死んだも同然だった彼(ルーベルト)には救いであった。
「喜んでお受け致します、父上。」
彼(ルーベルト)には城の制圧という大役を任された。
「この作戦に適した魔法は【幻想封尽】だ」と領主サイモンがルーベルトに命ずる。
【幻想封尽】…輪廻の輪から魂封印し意思を奪い、術者の傀儡と化す幻惑魔法。広範囲禁忌魔法。バッドステータス付与(全能力大幅低下)。
魔法の性質上、【幻想封尽】は超高難度魔法の為、対象の選別は困難である。今作戦において、元より対象を選ぶ必要性はない。ルーベルトのチカラを最大限発揮する為だけに標的にされた舞台(ミドレスト皇城)なのだから。
皇城から出たゼブレスト皇帝がミドレスト皇城に安易に帰還出来ない状況を作り出すための囮でしかない。
皇帝の暗殺が本作戦の最重要課題であるとルーベルトも認識しており、自分が囮である事は百も承知である。
「…有難き幸せ!この身に代えてもやり遂げてみせましょう。」
役に立って朽ち果てる機会に恵まれ、ルーベルトは片膝を突き、歓喜した。
死に場所を与えられ歓喜する辺り、エーヴァイル家の狂気を感じる。
ミドレスト皇国ひいてはシグムンド大陸を手中に収める計画に間接的ではあるが組み込まれたのだ。
ルーベルトは悦びに頬を紅潮させる。エーヴァイル家の人間(ルーベルト)は、一族に貢献出来ずに生涯の幕を下ろしてしまう事を恐れていたから。


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