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組合加入
第4話 活動内容……?
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「ところで高梨さんは、心霊スポットや廃墟、トンネルなどに、行かれたことは?」
「俺はないんだよね。近場にそういう場所はなかったし。ネットの動画では観たことがあるよ」
「なるほど、動画ですか」
動画サイトが普及してから、心霊スポットなどに訪れる人が増えてきたと、小森は言った。
「昔から、うわさ話や口コミで訪れてくる人は多かったんです」
「雑誌や新聞に載ったりもしたのよね」
「へぇ……」
そんな場所に、好き好んでいく人の心境がよくわからない。
怖い思いをして、それこそ、とり憑かれでもしたらどうするんだろう?
三軒が言うには、ホテルや旅館、学校などの廃墟、事故物件などは、そんなに問題ではないらしい。
「ただ、廃村や山奥などは、いささか問題がありまして……」
「問題?」
小森は眉をひそめ、眼鏡のブリッジを左手の中指で押し上げた。
「禁足地、というのはご存じですか?」
「禁足地? って、確か、入っちゃいけない場所、だったっけ?」
「入ってはいけない場所、というのもそうですが、出てはいけない場所でもあるんですよ」
「出てはいけない……って、なにが?」
「そこにいるものが、です」
小森は淡々と話しているだけなのに、俺は急に背筋がうすら寒くなった気がした。
そこに、なにがいるっていうんだろう?
ネットの怖い話なんかでは、神域だから入ってはいけない、なんて書かれていたけれど、神域だとしたら、神様がいるか、それに相当するなにかがいるか……。
「そういう場所は――」
考え込んでいたところに、小森の声が届き、また心臓が跳ね上がったような気がした。
もうないはずなのに、奇妙な感覚だ。
「意外に、山の奥や廃村の先にも、あったりするんですよ」
「へぇ……けど、そんなところに行くヤツなんて、そうそういない……」
言いかけて、ハッとした。
たまに観る動画配信サイトでは、そういった場所の配信に長けている人たちが、何人もいることを。
「昔のように、うわさや口コミだけだったら、山の奥まで来る人は多くなかったんですが……」
「視覚的に状況がわかると、行けると思っちゃう人がいるみたいなのよね」
この数年、そういった場所の近くまで訪れてくる人が増えているという。
確かに、動画のサムネイルをみると、同じ場所の動画がいくつも上がっていたっけ。
何人もの人が、入れ替わり立ち替わりでやってくるんだ。
「わたくしたちの活動が活発になっているというのも、そのおかげでして」
「……どういうこと?」
禁足地だから、出ることはもちろんのこと、入るのも許されない。
けれど、禁足地だからといって、必ずしも誰かが管理しているわけでもないらしい。
「神社のように、人の手で管理された場所であれば良いのですが、そうでない場合、大抵が簡単に踏み入られてしまいます」
「山などは、仮に所有者がいたとしても、山全体を管理するのはとても難しいことだと思わない?」
三軒に問われ、俺は少し考えてみた。
確かに、全体にバリケードでもない限り、入ろうと思えば、いくらでも入っていけるか。
山と山が隣同士にくっついていたら、バリケードを作るのも大変な作業だ。
「今は多くの人が、立ち入ろうというときには、所有者に許可をもらっているようですが……」
「所有者も代替わりをするたび、少しずつ禁足地のことを軽んじていき、その存在を忘れてしまうこともあるの。だから止める人がいない場合もあるのよね」
「そして、本来は禁じられた場所へ、人が足を踏み入れる、という事態になるんです」
「そういう場所には、私たちとちょっと違う存在がいらっしゃって、人が踏み入るのを嫌うのよ」
「わたくしたちの組合と提携している『JSA』からも依頼がありまして」
「JSA? JSAってなんなの?」
聞いたことがない言葉に、俺は速攻で聞き返した。
というか……提携しているってなに?
ホント、企業みたいだな!
「ジャパン・スピリット・アソシエーションといって、通称がJSAなんです。精霊や自然霊、山霊たちによる機関ですね」
機関ですね、と、サラッと言われても、理解が追いついていかない。
俺はずっと、死んだらそれで終わりだと思っていたんだよ。
死んでからも、こんなふうに企業みたいな団体があると思っていなかったし、ただの幽霊だけじゃなくて、自然霊とかまで洒落た名前の団体を作っているなんて、想像もしていなかった!
「高梨さんは、まだこちら側にきたばかりですもんね? いろいろとあるんですよ、こちら側も」
三軒はお茶を一口飲み、俺にもお茶を勧めてくる。
死んでもお茶を飲めるのか? カップに口をつけてすすると、意外にも甘みを感じた。
小森もしゃべり続けているからか、お茶を飲みながら、ため息をついている。
幽霊もしゃべり疲れるなんてことがあるんだろうか?
いや、あるのかもしれない。
だって俺は、聞き疲れてきた。
そもそも、ここへ来たのは、死んだ理由を知りたくてのことだ。
小森が組合に入れば、思い出すための手伝いができるとかなんとか、言ったからだ。
なのに、なぜか今、こんな話を聞かされている。
「なんか、いろいろと聞かされたけど……結局、この組合の活動っていうのは、なんなワケ?」
「私たちの活動は、そういった場所へ来た人を、禁足地に立ち入らせないようにすることなの」
「どうやって?」
小森と三軒は、互いに顔を見合わせてから俺に向き直り、笑顔で同時に、こう言った。
「怖がらせて」
「俺はないんだよね。近場にそういう場所はなかったし。ネットの動画では観たことがあるよ」
「なるほど、動画ですか」
動画サイトが普及してから、心霊スポットなどに訪れる人が増えてきたと、小森は言った。
「昔から、うわさ話や口コミで訪れてくる人は多かったんです」
「雑誌や新聞に載ったりもしたのよね」
「へぇ……」
そんな場所に、好き好んでいく人の心境がよくわからない。
怖い思いをして、それこそ、とり憑かれでもしたらどうするんだろう?
三軒が言うには、ホテルや旅館、学校などの廃墟、事故物件などは、そんなに問題ではないらしい。
「ただ、廃村や山奥などは、いささか問題がありまして……」
「問題?」
小森は眉をひそめ、眼鏡のブリッジを左手の中指で押し上げた。
「禁足地、というのはご存じですか?」
「禁足地? って、確か、入っちゃいけない場所、だったっけ?」
「入ってはいけない場所、というのもそうですが、出てはいけない場所でもあるんですよ」
「出てはいけない……って、なにが?」
「そこにいるものが、です」
小森は淡々と話しているだけなのに、俺は急に背筋がうすら寒くなった気がした。
そこに、なにがいるっていうんだろう?
ネットの怖い話なんかでは、神域だから入ってはいけない、なんて書かれていたけれど、神域だとしたら、神様がいるか、それに相当するなにかがいるか……。
「そういう場所は――」
考え込んでいたところに、小森の声が届き、また心臓が跳ね上がったような気がした。
もうないはずなのに、奇妙な感覚だ。
「意外に、山の奥や廃村の先にも、あったりするんですよ」
「へぇ……けど、そんなところに行くヤツなんて、そうそういない……」
言いかけて、ハッとした。
たまに観る動画配信サイトでは、そういった場所の配信に長けている人たちが、何人もいることを。
「昔のように、うわさや口コミだけだったら、山の奥まで来る人は多くなかったんですが……」
「視覚的に状況がわかると、行けると思っちゃう人がいるみたいなのよね」
この数年、そういった場所の近くまで訪れてくる人が増えているという。
確かに、動画のサムネイルをみると、同じ場所の動画がいくつも上がっていたっけ。
何人もの人が、入れ替わり立ち替わりでやってくるんだ。
「わたくしたちの活動が活発になっているというのも、そのおかげでして」
「……どういうこと?」
禁足地だから、出ることはもちろんのこと、入るのも許されない。
けれど、禁足地だからといって、必ずしも誰かが管理しているわけでもないらしい。
「神社のように、人の手で管理された場所であれば良いのですが、そうでない場合、大抵が簡単に踏み入られてしまいます」
「山などは、仮に所有者がいたとしても、山全体を管理するのはとても難しいことだと思わない?」
三軒に問われ、俺は少し考えてみた。
確かに、全体にバリケードでもない限り、入ろうと思えば、いくらでも入っていけるか。
山と山が隣同士にくっついていたら、バリケードを作るのも大変な作業だ。
「今は多くの人が、立ち入ろうというときには、所有者に許可をもらっているようですが……」
「所有者も代替わりをするたび、少しずつ禁足地のことを軽んじていき、その存在を忘れてしまうこともあるの。だから止める人がいない場合もあるのよね」
「そして、本来は禁じられた場所へ、人が足を踏み入れる、という事態になるんです」
「そういう場所には、私たちとちょっと違う存在がいらっしゃって、人が踏み入るのを嫌うのよ」
「わたくしたちの組合と提携している『JSA』からも依頼がありまして」
「JSA? JSAってなんなの?」
聞いたことがない言葉に、俺は速攻で聞き返した。
というか……提携しているってなに?
ホント、企業みたいだな!
「ジャパン・スピリット・アソシエーションといって、通称がJSAなんです。精霊や自然霊、山霊たちによる機関ですね」
機関ですね、と、サラッと言われても、理解が追いついていかない。
俺はずっと、死んだらそれで終わりだと思っていたんだよ。
死んでからも、こんなふうに企業みたいな団体があると思っていなかったし、ただの幽霊だけじゃなくて、自然霊とかまで洒落た名前の団体を作っているなんて、想像もしていなかった!
「高梨さんは、まだこちら側にきたばかりですもんね? いろいろとあるんですよ、こちら側も」
三軒はお茶を一口飲み、俺にもお茶を勧めてくる。
死んでもお茶を飲めるのか? カップに口をつけてすすると、意外にも甘みを感じた。
小森もしゃべり続けているからか、お茶を飲みながら、ため息をついている。
幽霊もしゃべり疲れるなんてことがあるんだろうか?
いや、あるのかもしれない。
だって俺は、聞き疲れてきた。
そもそも、ここへ来たのは、死んだ理由を知りたくてのことだ。
小森が組合に入れば、思い出すための手伝いができるとかなんとか、言ったからだ。
なのに、なぜか今、こんな話を聞かされている。
「なんか、いろいろと聞かされたけど……結局、この組合の活動っていうのは、なんなワケ?」
「私たちの活動は、そういった場所へ来た人を、禁足地に立ち入らせないようにすることなの」
「どうやって?」
小森と三軒は、互いに顔を見合わせてから俺に向き直り、笑顔で同時に、こう言った。
「怖がらせて」
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