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sideエドアルド

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彼女を見つけたときの衝撃を俺は忘れない。
おそらくそれは幼馴染みのセルジオも同じで、王都にいるもう一人の幼馴染みに早く知らせたくて仕方なかった。
俺たちの三人には忘れられない人たちがいる。
一人は母の弟、つまり俺の叔父たが、あの人は伯爵家の長子でありながら、跡継ぎは弟に押し付け自分のやりたいことをする人だった。
その叔父に何があったのか、急に結婚したのだ。
そう…婚約をすっとばして結婚した。
しかもその相手は、現国王の妹であり、じゃじゃ馬姫と名高い人だった。
当然、反対されると思えた結婚だが、盛大な祝福を受け無事二人は夫婦となったのだ。
結婚式では親族が涙ながら同じことを言っていた。

『貰い手がいて良かった!』

きっと俺の聞き間違いだろう。
それから一年位経った頃、二人は子を授かった。
生まれたのは、叔母の紅い髪に叔父の翠の瞳を受け継いだ女の子で、その子はあっという間に俺たち三人のお姫様になった。
暇さえあれば会いに行き遊んだおかげで、彼女も俺たちに良く懐いたものだから、叔父が嫉妬して罠をしかけたり妨害するようになったが、良い訓練になったので感謝している。
ある日、叔父と叔母が国王直々の頼みで地方へ行くことになった。
あの子も一緒に連れて行かれてしまい意気消沈していたが、ある報せが届き俺たちは絶望することになる。
あの人たちが乗っていた馬車が何者かに襲撃され崖から落ちた……あの子も一緒に。
そのとき気付いたのだ。
セルジオともう一人は、あの子を《妹》として愛していたが、俺は《一人の女の子》として愛していたことを。
きっとあの子は生きている。
あの二人が簡単に死ぬはずがないのだから。
再会したら今度は俺が守るんだ。
その気持ちを糧に鍛練を重ね俺は第三騎士団の団長になった。
そして面倒な仕事の途中で見かけた少女は、俺が想像するあの子が成長した姿そのものだった。
最初は確信が無く見ているしかなかったが、彼女の名を聞いた瞬間、駆け寄り抱き締めたいのを我慢した。
セルジオも身体が少し動いたから同じだったのだろう。
やっと……やっと会えた。
今度こそ守って見せる。
二度と離さないよ。
俺たちの……俺の可愛いお姫様。
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