カオスサーガ〜残されし者達の誓い〜

ロブレス

文字の大きさ
10 / 26

第7話 「分身の魔法」

しおりを挟む



森の奥。

木漏れ日の中で、ホークスは腕を組みながら唸っていた。

「……カトレア。少し相談がある」



名を呼ばれたカトレアは静かに振り返る。

「分身魔法についてかしら?」



「さすがだな。ちょっとアドバイスが欲しい」

カトレアは小さく肩をすくめた。

「分身系統は専門外よ。正直、詳しくはないわ」



ホークスは少し考え、それから続ける。

「なら……闇魔法の観点からはどうだ?。」



カトレアは首を傾げた。

「そもそもその分身は闇魔法なの? それに、私自身も闇魔法は得意じゃないの。求めている助言は出来そうにないわ……ごめんなさい」



ほんの少しだけ申し訳なさそうな声音だった。

「いや、聞いてばかりで悪いのは俺の方だ」

ホークスは深く息を吐くと、両手を軽く合わせる。



まずは――チャクラ。

火の里で学んだ、魔力と闘気を練り上げた特殊な力。

火の里の特殊な魔法を使うアサシンが魔力探知をすり抜けるために生まれた、忍術という魔法用の異質なエネルギー。



ホークスは静かにチャクラを練り上げる。

やがて、彼の隣に分身が現れた。

「……よし。詠唱してみろ」

分身に魔法を唱えさせようとする。

しかし――



分身は口を開くことなく、霧のように消えた。

「無理そうかしら?」

「……まだ他の手がある」



再びチャクラを練り、分身を召喚。

今度は分身が魔法陣を描く動きを見せる。

だが何も起きないまま、また消える。



「今、何をしたの?」

「分身に意識を集中させて、視点を共有して操作した」



カトレアは目を細める。

「随分器用なことをするのね。それなら……魔力を多めに使って分身を作ってみたら?」



ホークスは首を振る。

「闘気と魔力のバランスが崩れるとチャクラにならない」

「……魔法陣は魔力でできているわ。そもそも、その分身は魔力を持っていないのかもしれない」

その言葉に、ホークスは少し考える。



「チャクラで作った分身はそうかもな。なら……魔力だけでやってみる」

「魔力だけで分身を作れるの?」

カトレアの声に、明らかな驚きが混じる。



「よく分からない。そもそも分身も魔界で教わった魔法だ、それを試しに無理矢理気味に魔力だけで唱えてみたら成功してな、忍術とも詠唱とも違うと言われた」

「……本当にあなたって」

カトレアは小さくため息をつく。

「特殊な天才型の魔法使いね」



ホークスは苦笑する。

「原理の分からない魔法は本当は使いたくない。暴発の可能性もある、だが……危険を承知で進まないと追いつけない奴らがいる」

ギルドのランクXの同僚たち。

父親や親友の背中と剣技が脳裏に浮かぶ。



カトレアは一瞬、緊張を帯びた声で問う。

「……その“追いつけない奴ら”の中に、私も入っているの?」

ホークスは少しだけ目を逸らし、それから真っ直ぐ彼女を見る。

「その中でも……カトレアには追いつけるか分からない」



憧れを滲ませた声だった。

カトレアの頬が、わずかに赤くなる。

「……なら、少しでも追いつけるように厳しく行こうかしら?」

カトレアは少し機嫌よく冗談気味に言う。

「これ以上は勘弁してくれ、冗談抜きで」

「わかってるわ」



彼女は咳払いをして表情を整える。

「とりあえず、魔力だけで作るところを見せて」

ホークスは頷き、魔力のみを練り上げる。



詠唱はない、だが空間が歪み、分身が現れた。

チャクラの分身より存在時間は短い。

「詠唱していないわよね? 何をしたの?」

「分からない、魔界で教えてくれた人も原理がわからないと言っていた」

「詠唱を使わない魔法は知っている。でも流れが違う……多分、あなた独自の魔法として構築されている可能性が高いわ」

「少し不安だが今は使えればそれでいい」



再び分身を作り、魔法陣を描かせる。

しかし失敗。分身は先程より早く消える。

「……今、ほんの少しだけ魔力の流れを感じたわ」

「魔力の流れ?」

「魔法を使う予兆よ」



ホークスは目を細める。

「分身が魔法陣を作れるだけの魔力を持てば……撃てる?」

「その仮定は妥当ね。分身生成時の魔力を増やしてみては?」



ホークスは深呼吸する。

「分身のバランスを保てる限界まで魔力を注ぎ込む」

カトレアはふと、昔を思い出す。

ホークスがまだランクAだった頃、二人で相談しながら魔法を教えていた日々。

今の彼は、あの頃よりずっとたくましい。

――男性として、少しだけ意識してしまう。



ホークスが魔力を増やして分身を作ろうとする。

一瞬、形ができるがすぐ崩れる。

「形を保つ魔力が足りなかったか……」

惜しそうな独り言。

カトレアは顔を逸らす。

赤い頬を見られたくなくて。



ホークスは繰り返す。

1体目、3体目、6体目……。

7体目で、ついに安定。

「成功だ。魔力多めの分身だ」

ホークスは嬉しそうな声でカトレアに報告する。

「そ、そう……良かったわね」

上ずった声で返すカトレア。



「どうした?」

「何でもないわ!」

カトレアは息を整えてからホークスに指示する。

「その分身で魔法陣を試して」



ホークスは操作する。

魔法陣が――途中まで完成する。

だが、分身が消えてしまった。

「……コツは掴んだ」

ホークスは再挑戦しようとするが反応がない。

「魔力不足ね」

「……マナポーション忘れた」

ホークスはバツが悪そうに言う。



「今日はここまでにしましょう。村に戻るわ」

ホークスは少し悔しそうに頷く。

「……ああ」



こうして二人は、ジャスの村へと戻る。

分身に魔法を撃たせるという、初の試み。

確かな手応えを残しながら――。



第7話――終

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

サディストの私がM男を多頭飼いした時のお話

トシコ
ファンタジー
素人の女王様である私がマゾの男性を飼うのはリスクもありますが、生活に余裕の出来た私には癒しの空間でした。結婚しないで管理職になった女性は周りから見る目も厳しく、私は自分だけの城を作りまあした。そこで私とM男の週末の生活を祖紹介します。半分はノンフィクション、そして半分はフィクションです。

処理中です...