奪われし者の強き刃

ゆうさん

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第2章 vs陸王

第2章29話 ソフィアvs天后 科学の時間

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第4師団長のソフィアは陸王安倍晴明の式神の1体である天后と対峙していた。

 「小娘にしてはやるではないか。」

 「それはどうもありがとう。」

天后は次々と魔物やを産み出し続けていたため、ソフィアは本体までなかなかたどり着けないでいた。

 「一応名乗っておこう。我が名は天后。晴明様の式神にして天帝様の妃であり、女性に関するすべての事象や母性を司る式神である。」

 「そなたの名も聞いておこう。いずれ我が子になるかもしれないのだから。」

 「?何を言っているのかわからないけど、私の名前はソフィア・スミス。第4師団師団長よ。」

 「そうかソフィアと言うのか。」

天后はそういうと不穏な笑みを浮かべた。

 「さぁお前たち母の願いを聞きなさい。」

 「何あれ?」

天后は魔物では大昔に殺したであろう農民や貴族の男たちを召喚した。

天后は安倍晴明の式神の中で1番の偏食家であり、若い男を好んで食べていた。天后は男の性を吸うことで強くなる式神であり、その性が濃ければ濃い程より強力な力を得る。それと同時に、天后は殺した男を自身の子と称して着の身着のまま操ることができる。そのため、殺せば殺すほど強力で従順な駒が手に入る。

 「さぁ、あのソフィアという子を捕まえなさい。」

天后が命令に男たちはソフィアに向かって襲い掛かってきた。ソフィアは即座に男達の足元に虎ばさみを生成し、かかった隙をつきナイフで首を切断していった。

 「ひどい奴じゃな。躊躇いもなく人を殺すなんてのう。」

 「何がひどい奴よ。本物の人間でもないのに。」

 「本物じゃよ。昔、我に惚れ込んだ本物の男たちじゃよ。姿かたちから細胞レベルまで全く同じの。」

 「そこだけでしょ。どれほど細胞レベルで同じって言っても本人の意思もなくただ操られているだけの存在は本物の人間とは言えないわ。」

 「ほぉ、なかなか言うのう。」

 「でも、嫌いじゃない。容姿も我好みだし、決めた。そなた観賞用として一生我のそばにおいてあげる。」

 「は?何言ってるの。」

 「我は男しか食べないけど、気に入った女は観賞用として我のそばに置いておくのが好きでの。どうやって飾られるのが希望か?氷漬け?ホルマリン漬けかしら?それとも剥製?」

 「あぁ、考えただけでも興奮してきた。早くそなたを捕まえて保存しなければ。」

天后は先程よりも多くの魔物と男たちを産み出した。

 「さぁ我が子たち新しく我が子になる子を捕まえなさい。殺してはダメよ。」

200はいるであろう魔物と男達がソフィアに向かって一斉に襲い掛かった。

 「結局、人間は数の暴力には勝てないのよ。」

 「舐められたものね。」

 「!」

ソフィアが男や魔物に触れると触れられた男や魔物は燃え尽きた炭のようにボロボロに崩れていった。次々と男や魔物に触れていったソフィアは200体近くいる魔物や男たち全てをボロボロに崩した。

 「そなた我が子たちに何をした。」

 「別にちょっと体を構成している原子をいじっただけよ。」

 「何を?」

 「ここからは化学の時間よ。人体を構造している筋肉や骨などほとんどが炭素主体でできている。その炭素は他の原子との結びつきなどで硬さを変えるわ。それこそ、世界一硬い物質からとても脆い物質までにね。」

 「そして、あなたは言ったわよね細胞レベルまで一緒だって。ということは、人体の構成物質も一緒ってこと。そこまでわかったら後は私の専門よ。後は私の身体能力がついて来れるか。」

 「でも、そこももう大丈夫そうね。悠たちに感謝しないとね。」

ソフィアは『ギフト』の力で触れた相手の体内の炭素原子を最も脆い物質の元素構成へ変化させた。

 「成程、流石師団長を務めているだけのことはある。物質変化と生成。かなり厄介だわ。」

天后は再び多くの魔物を産み出した。

 「何度やっても同じよ。」

 「さぁ、お前たち母の愛が欲しかったら争いなさい。」

魔物たちはソフィアには目も暮れずに互いを殺しあった。

 「何を?」

最後の一体の魔物が残ると

 「偉いわ、母の愛を受け取りなさい。」

天后は残った魔物にキスをした。すると、1mくらいだったその魔物は3m近くまで巨大化し、人獣型ともキメラ型とも言えない異形な方とへと変貌した。

 「何が起きたの?」

 「多数の魔物を争わせ残った魔物に殺したすべての魔物の力を注ぎこむ『蠱毒の壺』。さらに、そこに私の力を注ぐことで強大な力を手に入れることができる。今のこの子の力は【四門】を遥かに超えている。」

『蠱毒の壺』は古代に用いられた呪術のこと。ありとあらゆる毒性生物を一つの壺に入れ、残った生物の毒を使って人を殺めたり呪ったりしたとされる最悪の呪法。天后はこれを魔物でやることで普段の数倍強い魔物を作り出した。

 「さぁ、やってしまいなさい。」

魔物は雄たけびを上げた瞬間、ありえないスピードでソフィアとの距離を詰めてソフィアを数十m後方にある川まで殴り飛ばした。ソフィアは、何とか防御が間に合ったものの肋骨が数本折れてしまった。

 「なんでパワーしてるのよ。」

 「ほぉ、防御が間に合ったのか。いい反応速度しておるのお。」

 「一人で【四門】以上の敵とやるのね。いいわやってやるわよ。」
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