唯一の犠牲者

ゆうさん

文字の大きさ
2 / 6

第1話 実力と過去

しおりを挟む
第3次世界大戦中の日本は、他国の襲撃を受けていないため建物の崩壊や田畑などの損害もなく世界大戦以前の生活状態を維持していた。さらに、日本は本来防衛費の回すはずの予算を新たな食糧の開発や田畑・養豚、養鶏場などの支援に回したため他の国のような食糧不足に陥っていなかった。
政府が戦時中にこのような大胆な政策がとることができたのも、偏に日本を守る1人の番人の存在が大きかった。

東京は防衛省のすぐそばに佇む高さ800mの物見塔。そのてっぺんに居座るのが日本を守る最強の番人。その場所に1人の女性が訪れた。

 女性:
 「蒼(そう)くん。ご飯持ってきたよ。」

 少年:
 「八坂(やさか)さん。ありがとうございます。」

濃い青色の着物を身にまとい、腰に1本の刀を携えている少年の名は群青蒼一郎(ぐんじょうそういちろう)。15歳から現在まで日本を守り続けてきた18歳。そして、蒼一郎のもとに食事を届けに来たの女性が八坂美琴(やさかみこと)。防衛省の職員であり、蒼一郎のお世話及び監視の命を受けている22歳。お世話と言っても1日3回の食事の配膳と蒼一郎が風呂に入っている間の周辺の監視、後は蒼一郎と話すことくらいだ。

 美琴:
 「もう蒼くん。私たちそんなに年も離れてないし、出会って1年以上たつんだしそんなよそよそしくしなくてもいいじゃない。美琴さんって呼んでもいいのよ。美琴お姉ちゃんでもいいわよ。」
 
 蒼一郎:
 「変な冗談はやめてください。いただきます。」

蒼一郎は手を合わせてから、ご飯を食べ始めた。

 美琴:
 「もぉ、冗談じゃないのに。それで蒼くん、今日はどんな感じなの?」

蒼一郎は口いっぱいに入ったご飯を飲み込み、お茶を飲んでから答えた。

 蒼一郎:
 「今日はまだ一機も来てないですね。このままどこも来なければいいですけどね。・・・!」

 蒼一郎:
 「言ってるそばから。」

蒼一郎は残っているご飯を急いで口にかきこみ、お茶で流し込んだ後立ち上がった。

 美琴:
 「どうしたの?」

 蒼一郎:
 「来ました。今回は中国の潜水艦3隻ですね。八坂さんは戻って住民にばれないように警戒するように防衛大臣に言っておいてください。東京湾の方向です。」

 美琴:
 「了解。気を付けてね。」

蒼一郎は物見塔から飛び降り、装着したパラグライダーを展開させ急いで現場に急行した。美琴は蒼一郎に言われた通り、急いで防衛省に戻って防衛大臣に警戒するように伝えた。

 美琴:
 「彼によると、今回は中国の潜水艦が3隻だそうです。」

 防衛大臣:
 「そうか、八坂君何人か連れて現場に急行しなさい。彼がもし怪我をしたら大変だし、絶対上陸しないとは限らないからな。しかし、大勢で行くと住民の皆様が怖がるから君含め合計3人まで許可する。」

 職員:
 「では、現場近くの自衛隊に要請いたします。」

 防衛大臣:
 「あぁ、そうしてくれ。八坂君頼んだぞ。」

 美琴:
 「はい。」

美琴は直ぐに準備して、蒼一郎が向かった現場に車で急行した。現場に到着すると、自衛隊2名がすでに到着、警戒していた。

 美琴:
 「すみません遅くなりました。状況はどうですか?」

 自衛隊員:
 「特に上陸してくる様子はありません。今日は市場も休みですから人もいないので避難遅れの心配はありません。」

 美琴:
 「わかりました。待機しておきましょう。」

 自衛隊員:
 「「了解。」」

次の瞬間、東京湾の沖の方から大きな音と巨大な水しぶきが上がった。美琴が双眼鏡で確認すると水しぶきがあった場所には潜水艦であったであろう鉄の塊がいくつか浮かび上がっていた。自衛隊員たちが唖然としていると、蒼一郎が岸から上がってきた。

 蒼一郎:
 「あっ、八坂さん。終わりましたよもう上陸してくる心配はありません。」

 美琴:
 「お疲れ様、怪我はない?」

 蒼一郎:
 「はい、ありません。・・自衛隊の方ですか?警戒ありがとうございますもう大丈夫ですよ。」

自衛隊員はあまりの呆気なさに言葉を失っていた。

 蒼一郎:
 「あの?大丈夫ですか?」

 自衛隊員:
 「え?あっはい。大丈夫です。あまりにも呆気なかったので、お疲れ様です。」

 蒼一郎:
 「別の楽だったわけではないですよ。日に日に各国の軍事兵器たちの強力になっていきますし、ですが、これが俺の仕事なのでいつでも頼ってくださいね。この国を必ず守って見せますから。それでは、失礼いたします。」

蒼一郎は自衛隊員に微笑みながら会釈して、物見塔へと帰っていった。

 自衛隊員:
 「なんかイメージと違いました。自分はもっと武骨で冷たい人だと思ってました。」

 自衛隊員:
 「俺も。確か彼の存在は住民の皆様は知らないんでしたっけ?」

 美琴:
 「えぇ、彼の存在を知ってるのは国の上層部と一部の警察官・自衛隊だけです。なぜか、総理と防衛大臣以外の上層部の人たちが彼の存在を隠したがっていて、まぁ公表するメリットもないんですけど。」

 自衛隊員:
 「ですが、噂以上に強いですね。他の国の軍事力を1人で圧倒するこの国の番人は。」

 自衛隊員:
 「答えられたらでいいんですけど、彼の家族は?」

 美琴:
 「・・いません。いえ、正確に言うとどこにいるのかがわからないですね。」

美琴は暗い顔になりながら答えた。

 美琴:
 「私が彼にあったのは去年のことなので詳しいことはわからないのですが、防衛大臣の話によると彼はいわば捨て子です。彼の両親は彼が物心ついたころに育児放棄して、遠い山奥に彼を捨てました。彼は何とか山を下山して、東京と栃木の県境辺りを徘徊していたボロボロの彼を警察が保護しました。その後、彼は孤児院の入ったのですが周りになじめずずっと独りぼっちでした。」

美琴が続きを話そうとした時、美琴のスマホに防衛省に戻ってくるようメッセージが入った。

 美琴:
 「すみません。呼ばれたので戻りますねお疲れさまでした。」

 自衛隊員:
 「あっちょっと!行ってしまいましたね。少年の過去は気になりますが我々も持ち場に戻りますか。」

 自衛隊員:
 「あぁそうだな。・・・孤独故の依存か。」

自衛隊員も自分たちの持ち場へと戻っていった。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

どうぞ添い遂げてください

あんど もあ
ファンタジー
スカーレット・クリムゾン侯爵令嬢は、王立学園の卒業パーティーで婚約もしていない王子から婚約破棄を宣言される。さらには、火山の噴火の生贄になるように命じられ……。 ちょっと残酷な要素があるのでR 15です。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

処理中です...