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第二章 ~遥かなる高みへ~
第四十九話 ~宴~
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神発暦3512年 秋
帝都までは非常に順調に進んだ。そして馬車が帝都の中に入ると、帝都の人達からの喝采が聞こえてきた。
僕は馬車の中から少しだけ外を見ると、道の端や建物の窓にはたくさんの人影が、帰還した伯爵軍を迎えていた。
「すごい人」
「坊っちゃんは、初めてでしたなこんなに人がいるのを見るのは」
ぼくが驚くとウル爺が声をかけてきた。
「うん、初めて」
「いやぁ、思い出しますな。ドナー殿と初めて会った日のこと」
「父様とですか?」
「ウルフリック!」
ウル爺が話そうとすると、父さんが、恥ずかしそうにウル爺を止める。僕はそれを見て父さんにも何か言いたくない秘密があるのだと思った。ウル爺の機転のおかげが、僕の中で暗く感じていた馬車の雰囲気が、幾分明るくなったように感じた。
そして、少し時間が立つと馬車が停車した。そして、僕が馬車から降りると目の前には大きなお城が立っていた。それを見て一度だけ前世の祖父母に連れて行ってもらったテーマパークのお城を思い出したが、僕の目の前の城はその大きさよりも一回り大きく見えた。
「坊っちゃん。置いてかれますぞ」
ウル爺が驚きに耽っている僕の背を叩いた。
「う、うん」
僕はそう言うと、先に歩いている父さん達の後を追う。
「お待ちしておりました。マルク男爵御一行様。どうぞ、こちらへ」
このお城の執事の人が僕たちを豪華な部屋に案内した。部屋の壁には高そうな絵が飾られていたり、端には触ってはいけない雰囲気を纏ったツボがおいてる。そんな雰囲気に飲まれている僕にウル爺が話しかけてきてくれた。
「坊っちゃんは初めて皇帝陛下と会われることになりますが、大丈夫ですぞ。皇帝陛下はかなり豪快な方ですから多少の失礼なら気にもしない方です」
「ウルフリック様?。私が何度レオン様に礼儀作法を教えたと思っていますの?。失礼など起こりませんよ。ねぇ、レオン様?」
「う、はい。もちろんです」
僕はマーシャの気迫に、防衛戦の時の未来視で見たもうひとりのぶっ飛んだマーシャを知っているため余計に恐縮した。
「なんてね。冗談ですよレオン様。そもそも失礼とかそういう次元の話にはなりませんから」
「え?」
僕がマーシャの言葉を不思議に思うと、扉が開き先程の執事の人が入っていた。
「お待たせいたしました。準備が整いましたので、こちらへ」
そして、執事の人が案内した先には、とても大きな扉があった。
(この先によく物語に出る玉座が...)
僕は一体どんな場所なのかドキドキと緊張していた。そして、扉が開かれるとそこは、
「えっ?!」
僕は思わず声が漏れてしまった。そこにあったのは玉座の間などではなく、広々としたただのパーティ会場であった。もちろんテーブルの上に乗っている食べ物はすべて豪華な盛り付けがされているが、僕の想像した場所とはむしろ正反対の場所だった。
中にはすでに何人もの人がテーブルを囲んでいた。その中には父とともに戦ったキオッジャ伯爵やミラ・ベルンもいたが、ほとんどは見たことのない人たちであった。
「ほら、坊っちゃん。呆けてないでゆきますぞ」
ウル爺は笑いながら僕の後押しをする。そして、中に入るといろいろな人から声をかけられた。その中でも異色だったのはなぜかその場で唯一顔を仮面で隠した女性だった。
「おお、君がレオン君かい?」
「は、はい。そうです」
「緊張しなくていいよ。ただの食事会だと思うといい」
「は、はい」
「また、後でね」
「えっ?」
仮面の女性はそそくさと移動してしまい。言葉の意味を聞くことはできなかった。
「レオン。ちゃんと食べてるか?」
「タレス先生!」
「いやぁ、良く生きてたねえ。聞いたよ。勝手に残って戦ったって。あの時の意味深な返事はそういうことだったのね」
「まぁ、はい。その説はありがとうございました」
「君の実力だ。生き残って、こうしてここにいるのは君に実力があった。それだけのことさ。楽しむといいよ」
そんな終始和やかなムードの会場であるが、僕はこの場に来てからずっと疑問に思っていたことを、とりあえず、ウル爺に聞くことにした。
「ねえ、ウル爺?」
「どうされました?坊っちゃん」
「皇帝陛下はいつ来るんですか?」
「フハハハハ。そうですな。確かにそこが一番の疑問でしょうな」
ウル爺は笑いながら僕に答えを教えてくれた。
「坊っちゃん。あそこのテーブルで今。ドナー殿と話されている男の人がいるでしょう?」
「うん」
今。父は初老の男性とその周りの人たちと何やら楽しそうにお話をしていた。
「あれが、皇帝陛下ですよ」
「っ!?」
(威厳がない!)
僕は失礼にもそう思ってしまった。なぜなら、確かに初老ではあるが、豪快に食べ物を口にいれ、口にはソースがつき、お付きの人にしかられながら拭かれていた。
「ほ、本当に?」
「ええ、まあ、あの御方はいつもああいう感じですよ。この程度で驚いていては、きりがないのです」
僕がその皇帝陛下を見ていると、目があってしまった。すると、皇帝陛下は僕に手で近づくよう促した。僕はその通りに皇帝陛下に近づいていった。すると、父が僕の紹介をしてくれた。
「こちらは、私の息子のレオンです。陛下」
「おお、そうか、この子が運良く生き残った少年か」
「は、はい。レオン・マルクです」
「かしこまらずとも良い。好きなだけ食べてなさい、たくさん食べないと強くなれないぞ。そうだな儂が息子の嫁くらい食えるようなら一人前だ」
「えっ?」
「ほれ、あっちを見てみろ。あそこで皿を何重にも重ねて食ってるおなごがいるだろう?」
「はい...」
「あれがな、儂の次男の嫁で、今は『6人の皇帝魔導士』の一人でもあるのだ」
「えっ!?」
「だから、あれだけ食えるようになれば、きっとお主も運だけでなく実力もつくようになる。頑張りなさい」
「はい、ありがとうございます」
その後、ぼくは皇帝陛下から離れて、食事に集中するようにした。変に緊張しているのが馬鹿らしくなった。そして、そんな感じで食べていると、僕と同じくらいの背丈の女の人を見つけた。
(僕くらいの年齢の子もいたんだぁ)
僕がそう思い少しお話をしようと近づくと、バッと女性が振り向いた。
「なんね?」
「ご、ごめんなさい。お話しようと思って」
「お話なんね?」
「そ、そう。同い年くらいの子がいると思ったから」
「いいんね」
(変な語尾)
僕はその女の子の話し方を不思議に思いながら話を続けた。
「僕は、レオン・マルク。君は?」
「シズク・ナカニシなんね」
「へえ、その名前的に、東の出?」
「南なんね」
「南?」
「南の海の先なんね」
「ハハハ、君冗談がうまいね。まあ、いいや。どうしてここにいるの?」
僕が笑った理由は、この世界の航海技術は魔法あるせいか、ほぼ発展はしておらず、前世のように巨大な鉄の船はない。それに加えて海の中には強大な魔獣も多く船上では戦うことすら厳しいため、このような女の子が船で来たようなことを行ったので冗談だとおもった。
「貿易交渉なんね」
「ふーん。そうなんだ」
僕が話していると、後ろから再び皇帝陛下が現れ、シズクに話しかけた。
「おお!。こんなところにいらっしゃたか、ナカニシ殿。レオン君や、少しいいかな?」
「あ、はい。どうぞ」
僕はよくわからなかったが、何やら皇帝陛下の知り合いらしく皇帝陛下と話を始めていた。そして、また、僕は物知りなウル爺に知っているか聞いてみた。
「うーん。見たことはありませんが、あの見た目ですと、恐らくは小人族でしょうな」
「小人族?」
「ええ、成人しても坊っちゃん程度の大きさにしかならない種族です。非常に数が少ないと聞いておりますな」
「もしかして、僕より年上?」
「恐らくは、遥かに年上でしょうな?。恋ですかな?」
「そんなんじゃないよ!」
(失礼なことしちゃったかな?)
僕はそんなことを思った。こうして、初めは謁見をしていろんな報告を皇帝陛下にするもんだと、思い緊張していたものが、ただのパーティに変わり僕達は城を後にした。
*
次の日、帝都にある貴族用の仮屋敷に泊まった僕は起きてまっすぐ父のいる部屋に向かった。すべてを父に話すために
「お父様。僕です」
「入れ、レオン」
僕は父の部屋に入った。
「レオン。皆にはお前が運良く生き残ったといってある。ちょうどお前には運神の加護が備わっていたことだしな」
「はい」
「だが、あの場にいたものは誰もがわかっているお前が何かをしたのだと。レオン。父に何か隠していることがあるな?」
「はい。父上。すべてお話します」
帝都までは非常に順調に進んだ。そして馬車が帝都の中に入ると、帝都の人達からの喝采が聞こえてきた。
僕は馬車の中から少しだけ外を見ると、道の端や建物の窓にはたくさんの人影が、帰還した伯爵軍を迎えていた。
「すごい人」
「坊っちゃんは、初めてでしたなこんなに人がいるのを見るのは」
ぼくが驚くとウル爺が声をかけてきた。
「うん、初めて」
「いやぁ、思い出しますな。ドナー殿と初めて会った日のこと」
「父様とですか?」
「ウルフリック!」
ウル爺が話そうとすると、父さんが、恥ずかしそうにウル爺を止める。僕はそれを見て父さんにも何か言いたくない秘密があるのだと思った。ウル爺の機転のおかげが、僕の中で暗く感じていた馬車の雰囲気が、幾分明るくなったように感じた。
そして、少し時間が立つと馬車が停車した。そして、僕が馬車から降りると目の前には大きなお城が立っていた。それを見て一度だけ前世の祖父母に連れて行ってもらったテーマパークのお城を思い出したが、僕の目の前の城はその大きさよりも一回り大きく見えた。
「坊っちゃん。置いてかれますぞ」
ウル爺が驚きに耽っている僕の背を叩いた。
「う、うん」
僕はそう言うと、先に歩いている父さん達の後を追う。
「お待ちしておりました。マルク男爵御一行様。どうぞ、こちらへ」
このお城の執事の人が僕たちを豪華な部屋に案内した。部屋の壁には高そうな絵が飾られていたり、端には触ってはいけない雰囲気を纏ったツボがおいてる。そんな雰囲気に飲まれている僕にウル爺が話しかけてきてくれた。
「坊っちゃんは初めて皇帝陛下と会われることになりますが、大丈夫ですぞ。皇帝陛下はかなり豪快な方ですから多少の失礼なら気にもしない方です」
「ウルフリック様?。私が何度レオン様に礼儀作法を教えたと思っていますの?。失礼など起こりませんよ。ねぇ、レオン様?」
「う、はい。もちろんです」
僕はマーシャの気迫に、防衛戦の時の未来視で見たもうひとりのぶっ飛んだマーシャを知っているため余計に恐縮した。
「なんてね。冗談ですよレオン様。そもそも失礼とかそういう次元の話にはなりませんから」
「え?」
僕がマーシャの言葉を不思議に思うと、扉が開き先程の執事の人が入っていた。
「お待たせいたしました。準備が整いましたので、こちらへ」
そして、執事の人が案内した先には、とても大きな扉があった。
(この先によく物語に出る玉座が...)
僕は一体どんな場所なのかドキドキと緊張していた。そして、扉が開かれるとそこは、
「えっ?!」
僕は思わず声が漏れてしまった。そこにあったのは玉座の間などではなく、広々としたただのパーティ会場であった。もちろんテーブルの上に乗っている食べ物はすべて豪華な盛り付けがされているが、僕の想像した場所とはむしろ正反対の場所だった。
中にはすでに何人もの人がテーブルを囲んでいた。その中には父とともに戦ったキオッジャ伯爵やミラ・ベルンもいたが、ほとんどは見たことのない人たちであった。
「ほら、坊っちゃん。呆けてないでゆきますぞ」
ウル爺は笑いながら僕の後押しをする。そして、中に入るといろいろな人から声をかけられた。その中でも異色だったのはなぜかその場で唯一顔を仮面で隠した女性だった。
「おお、君がレオン君かい?」
「は、はい。そうです」
「緊張しなくていいよ。ただの食事会だと思うといい」
「は、はい」
「また、後でね」
「えっ?」
仮面の女性はそそくさと移動してしまい。言葉の意味を聞くことはできなかった。
「レオン。ちゃんと食べてるか?」
「タレス先生!」
「いやぁ、良く生きてたねえ。聞いたよ。勝手に残って戦ったって。あの時の意味深な返事はそういうことだったのね」
「まぁ、はい。その説はありがとうございました」
「君の実力だ。生き残って、こうしてここにいるのは君に実力があった。それだけのことさ。楽しむといいよ」
そんな終始和やかなムードの会場であるが、僕はこの場に来てからずっと疑問に思っていたことを、とりあえず、ウル爺に聞くことにした。
「ねえ、ウル爺?」
「どうされました?坊っちゃん」
「皇帝陛下はいつ来るんですか?」
「フハハハハ。そうですな。確かにそこが一番の疑問でしょうな」
ウル爺は笑いながら僕に答えを教えてくれた。
「坊っちゃん。あそこのテーブルで今。ドナー殿と話されている男の人がいるでしょう?」
「うん」
今。父は初老の男性とその周りの人たちと何やら楽しそうにお話をしていた。
「あれが、皇帝陛下ですよ」
「っ!?」
(威厳がない!)
僕は失礼にもそう思ってしまった。なぜなら、確かに初老ではあるが、豪快に食べ物を口にいれ、口にはソースがつき、お付きの人にしかられながら拭かれていた。
「ほ、本当に?」
「ええ、まあ、あの御方はいつもああいう感じですよ。この程度で驚いていては、きりがないのです」
僕がその皇帝陛下を見ていると、目があってしまった。すると、皇帝陛下は僕に手で近づくよう促した。僕はその通りに皇帝陛下に近づいていった。すると、父が僕の紹介をしてくれた。
「こちらは、私の息子のレオンです。陛下」
「おお、そうか、この子が運良く生き残った少年か」
「は、はい。レオン・マルクです」
「かしこまらずとも良い。好きなだけ食べてなさい、たくさん食べないと強くなれないぞ。そうだな儂が息子の嫁くらい食えるようなら一人前だ」
「えっ?」
「ほれ、あっちを見てみろ。あそこで皿を何重にも重ねて食ってるおなごがいるだろう?」
「はい...」
「あれがな、儂の次男の嫁で、今は『6人の皇帝魔導士』の一人でもあるのだ」
「えっ!?」
「だから、あれだけ食えるようになれば、きっとお主も運だけでなく実力もつくようになる。頑張りなさい」
「はい、ありがとうございます」
その後、ぼくは皇帝陛下から離れて、食事に集中するようにした。変に緊張しているのが馬鹿らしくなった。そして、そんな感じで食べていると、僕と同じくらいの背丈の女の人を見つけた。
(僕くらいの年齢の子もいたんだぁ)
僕がそう思い少しお話をしようと近づくと、バッと女性が振り向いた。
「なんね?」
「ご、ごめんなさい。お話しようと思って」
「お話なんね?」
「そ、そう。同い年くらいの子がいると思ったから」
「いいんね」
(変な語尾)
僕はその女の子の話し方を不思議に思いながら話を続けた。
「僕は、レオン・マルク。君は?」
「シズク・ナカニシなんね」
「へえ、その名前的に、東の出?」
「南なんね」
「南?」
「南の海の先なんね」
「ハハハ、君冗談がうまいね。まあ、いいや。どうしてここにいるの?」
僕が笑った理由は、この世界の航海技術は魔法あるせいか、ほぼ発展はしておらず、前世のように巨大な鉄の船はない。それに加えて海の中には強大な魔獣も多く船上では戦うことすら厳しいため、このような女の子が船で来たようなことを行ったので冗談だとおもった。
「貿易交渉なんね」
「ふーん。そうなんだ」
僕が話していると、後ろから再び皇帝陛下が現れ、シズクに話しかけた。
「おお!。こんなところにいらっしゃたか、ナカニシ殿。レオン君や、少しいいかな?」
「あ、はい。どうぞ」
僕はよくわからなかったが、何やら皇帝陛下の知り合いらしく皇帝陛下と話を始めていた。そして、また、僕は物知りなウル爺に知っているか聞いてみた。
「うーん。見たことはありませんが、あの見た目ですと、恐らくは小人族でしょうな」
「小人族?」
「ええ、成人しても坊っちゃん程度の大きさにしかならない種族です。非常に数が少ないと聞いておりますな」
「もしかして、僕より年上?」
「恐らくは、遥かに年上でしょうな?。恋ですかな?」
「そんなんじゃないよ!」
(失礼なことしちゃったかな?)
僕はそんなことを思った。こうして、初めは謁見をしていろんな報告を皇帝陛下にするもんだと、思い緊張していたものが、ただのパーティに変わり僕達は城を後にした。
*
次の日、帝都にある貴族用の仮屋敷に泊まった僕は起きてまっすぐ父のいる部屋に向かった。すべてを父に話すために
「お父様。僕です」
「入れ、レオン」
僕は父の部屋に入った。
「レオン。皆にはお前が運良く生き残ったといってある。ちょうどお前には運神の加護が備わっていたことだしな」
「はい」
「だが、あの場にいたものは誰もがわかっているお前が何かをしたのだと。レオン。父に何か隠していることがあるな?」
「はい。父上。すべてお話します」
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