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少女と夏の終わり
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「海の体験をベースに書いた青春ミステリーなのだが、どうかね?」
「日常の何気ないことをミステリーにしているのはいいと思います。海の描写もちゃんとしていると感じます」
「おぉ!その描写はかなり凝ったのだ!海にきた青年たちが将来について遊びながら考え、一人一人未来を考える。とても良くないか?」
「確かにそこはとてもいいと思います。ですが、小学生向けとは思えません」
「なぜだね?!」
「まず、難しい言葉が多すぎます。然しも、しかしでいいですし、四字熟語や慣用句など小学生が読んでもわかるかどうか微妙なラインです。なのでもう少し簡単な表現にしてはどうでしょう?」
「なるほど。少し考えてみよう」
そういうと、先生は机に向かい考え始めた。
あれから二週間経って、私の生活は大きく変わった。生活そのものが変わったのではなく、心が変わったのだ。今まで道具だったのが人間になれた。夜眠れない日もあるが、最近は眠れるようになった。家事も効率良くこなせるようになった。料理もたまに先生からおいしいと言わせてやれるようになった。お茶の淹れ方もいま学んでいる最中だ。
そろそろ学校も始まる。正直不安ではある。先生が学校側に私の事情を嘘を混じえながら伝えてくれた。
入学手続きの前に戸籍の心配があったが法務局にいる先生の手の者によって私は先生の子どもということになった。手続きが大変だったらしく、私を連れてよく市役所に行っていた。
「はい。話は聞いております。その子の戸籍の件ですね?」
「そうだ。頼む」
「わかりました」
私の本籍はヤクザに売られた時点で行政的な手続きを得てヤクザ事務所の社長の戸籍となっているので、それを移す必要があるのだ。
「本籍の移動となるので転籍届と戸籍全部事項証明書が必要となりますが持ってきていますか?」
「あぁ、これでいいかね?」
先生が書類を手渡し、それを確認する。
「確認しました。住所蘭への記入はまた別の書類が必要になります。あちらでその書類と現在登録されている住所の変更ができますので、それをしてからご記入ください」
「わかった」
それから住所の変更を行い、書類に先生の家の住所を書き込む。
「はい。確認しました。これで戸籍変更ができました」
「ありがとう。また何かあったら頼むよ」
「いえ、旦那の頼みですから」
次に転入の手続き。私がもともと在籍していた学校に申し立て、転校に必要な書類を受け取る。住民票の異動手続きを行い学務課に必要な書類を持っていった。
学校生活に支障はないだろう。だが、不安なことに変わりはない。友達の作り方なんて全くわからない。そんな不安を感じながら、学校から出された課題に向かう。学校の課題はそんなに難しくなくすらすら解ける。わからない問題は海に行ったときに出会った大学生のグループに教えてもらっている。
さて、もうそろ夕飯の支度をしなければ。外で鳴く蝉の声がだんだんと少なくなって、日の落ちるスピードも変わっている。キッチンの後ろにある窓から見える夕陽も少しずつ見えなくなっている。夏の終わりを感じさせる風が吹き込んでくる。
こういう風はどうしてか冷たく感じる。涼しいではなく、冷たいだ。秋が来るよと季節が挨拶をくれているのだろうか。そんなことを考えながら夕飯を作る。今夜のメニューは冷やし中華だ。野菜も肉も一緒に取れて栄養満点。先生は最近夏バテ気味なので、味付けは辛めに。きゅうりは細く切り、卵は薄く鍋に広げ焼いたものを短冊切りに、豚肉は豚しゃぶにして、麺はしっかり水分を搾り出しておく。そこへコチュジャンと味噌ダレを合わせた辛めのソースを上からかける。
これこそ夏バテ防止飯である(最近ネットで知った)
「先生!夕飯ができましたよ」
「わかった。今行く」
いただきますをいい、先生が一口。果たして評価の程は
「おいしい」
やったー!内心ガッツポーズを決める。
ご飯の時は基本喋らない。先生は黙々と食べるタイプなのだ。そのため美味しそうに食べるとか不味そうに食べるとか顔に出ないのでわかりづらいが、おいしいと口に出していうということは本当に美味しいと感じているのだろう。
すっかり食べ終わり、先生がお茶を淹れてくれと言ってきた。
私は洗い物を済まし、お茶をお出しする。
「うん。普通」
評価は普通だった。まだまだ練習の余地がありそうだ。
「そうですか。そういえば先生。最近夏バテ気味でしたが、今夜のご飯で少しは治りましたか?」
「ん?あぁ、そうだな。もう何日かこういったメニューがあれば治りそうだ」
「わかりました。明日からそうします」
「頼む」
それからまた、他愛もない話をした。先生は友人でも父親でもないただの話し相手になるとおっしゃった。それを守ってくれているのだ。必要以上に私の過去に触れず、私が話すのをきちんと待ってくれている。家族のことについても触れない。私も話さない。まだ、私を売った両親のことを心のどこかで家族だと思っているらしい。だが先生といるこの時間この空間を気に入り始めている。穏やかな時が流れるこの空気を。
「日常の何気ないことをミステリーにしているのはいいと思います。海の描写もちゃんとしていると感じます」
「おぉ!その描写はかなり凝ったのだ!海にきた青年たちが将来について遊びながら考え、一人一人未来を考える。とても良くないか?」
「確かにそこはとてもいいと思います。ですが、小学生向けとは思えません」
「なぜだね?!」
「まず、難しい言葉が多すぎます。然しも、しかしでいいですし、四字熟語や慣用句など小学生が読んでもわかるかどうか微妙なラインです。なのでもう少し簡単な表現にしてはどうでしょう?」
「なるほど。少し考えてみよう」
そういうと、先生は机に向かい考え始めた。
あれから二週間経って、私の生活は大きく変わった。生活そのものが変わったのではなく、心が変わったのだ。今まで道具だったのが人間になれた。夜眠れない日もあるが、最近は眠れるようになった。家事も効率良くこなせるようになった。料理もたまに先生からおいしいと言わせてやれるようになった。お茶の淹れ方もいま学んでいる最中だ。
そろそろ学校も始まる。正直不安ではある。先生が学校側に私の事情を嘘を混じえながら伝えてくれた。
入学手続きの前に戸籍の心配があったが法務局にいる先生の手の者によって私は先生の子どもということになった。手続きが大変だったらしく、私を連れてよく市役所に行っていた。
「はい。話は聞いております。その子の戸籍の件ですね?」
「そうだ。頼む」
「わかりました」
私の本籍はヤクザに売られた時点で行政的な手続きを得てヤクザ事務所の社長の戸籍となっているので、それを移す必要があるのだ。
「本籍の移動となるので転籍届と戸籍全部事項証明書が必要となりますが持ってきていますか?」
「あぁ、これでいいかね?」
先生が書類を手渡し、それを確認する。
「確認しました。住所蘭への記入はまた別の書類が必要になります。あちらでその書類と現在登録されている住所の変更ができますので、それをしてからご記入ください」
「わかった」
それから住所の変更を行い、書類に先生の家の住所を書き込む。
「はい。確認しました。これで戸籍変更ができました」
「ありがとう。また何かあったら頼むよ」
「いえ、旦那の頼みですから」
次に転入の手続き。私がもともと在籍していた学校に申し立て、転校に必要な書類を受け取る。住民票の異動手続きを行い学務課に必要な書類を持っていった。
学校生活に支障はないだろう。だが、不安なことに変わりはない。友達の作り方なんて全くわからない。そんな不安を感じながら、学校から出された課題に向かう。学校の課題はそんなに難しくなくすらすら解ける。わからない問題は海に行ったときに出会った大学生のグループに教えてもらっている。
さて、もうそろ夕飯の支度をしなければ。外で鳴く蝉の声がだんだんと少なくなって、日の落ちるスピードも変わっている。キッチンの後ろにある窓から見える夕陽も少しずつ見えなくなっている。夏の終わりを感じさせる風が吹き込んでくる。
こういう風はどうしてか冷たく感じる。涼しいではなく、冷たいだ。秋が来るよと季節が挨拶をくれているのだろうか。そんなことを考えながら夕飯を作る。今夜のメニューは冷やし中華だ。野菜も肉も一緒に取れて栄養満点。先生は最近夏バテ気味なので、味付けは辛めに。きゅうりは細く切り、卵は薄く鍋に広げ焼いたものを短冊切りに、豚肉は豚しゃぶにして、麺はしっかり水分を搾り出しておく。そこへコチュジャンと味噌ダレを合わせた辛めのソースを上からかける。
これこそ夏バテ防止飯である(最近ネットで知った)
「先生!夕飯ができましたよ」
「わかった。今行く」
いただきますをいい、先生が一口。果たして評価の程は
「おいしい」
やったー!内心ガッツポーズを決める。
ご飯の時は基本喋らない。先生は黙々と食べるタイプなのだ。そのため美味しそうに食べるとか不味そうに食べるとか顔に出ないのでわかりづらいが、おいしいと口に出していうということは本当に美味しいと感じているのだろう。
すっかり食べ終わり、先生がお茶を淹れてくれと言ってきた。
私は洗い物を済まし、お茶をお出しする。
「うん。普通」
評価は普通だった。まだまだ練習の余地がありそうだ。
「そうですか。そういえば先生。最近夏バテ気味でしたが、今夜のご飯で少しは治りましたか?」
「ん?あぁ、そうだな。もう何日かこういったメニューがあれば治りそうだ」
「わかりました。明日からそうします」
「頼む」
それからまた、他愛もない話をした。先生は友人でも父親でもないただの話し相手になるとおっしゃった。それを守ってくれているのだ。必要以上に私の過去に触れず、私が話すのをきちんと待ってくれている。家族のことについても触れない。私も話さない。まだ、私を売った両親のことを心のどこかで家族だと思っているらしい。だが先生といるこの時間この空間を気に入り始めている。穏やかな時が流れるこの空気を。
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