謎の臭いがする部屋

風上すちこ

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最終話/臭いの真実・解説

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楓美side


あの時、香織を怖がらせたくなくて言わなかったけど、本当に、それで良かったんだよね…。
あののこと…

最初、不動産屋に行く前は誰かが人を焼き殺したんだとばかり思っていたけれど、自分の身を自分で焼くという選択肢に香織が気がついたとき、頭の中のごちゃごちゃの全て繋がった。

香織は今コンビニに買い物に行っている。
私はネットですぐに呪いについて調べた。だいぶ前にオカルト雑誌で読んだ、について。

用意するのは、ライターか、マッチ。火をつけれるものならなんでもいい。消火用のバケツなんかがあったら、もっと便利…。光を遮った部屋で、呪いの儀式は開始する。
ライターで自分の身を火で炙りながら、呪いたい相手の名前を呟く。ぶつぶつ、ぶつぶつと。
呪いの儀式をすればするほど、怨念は強まり、相手は強く呪われるという。最悪、呪われた相手は死に至るらしい…
煙草に火をつけるように、何度も、何度も、自分の身をライターで炙っていく…
当時雑誌を読んだときは信じられずに鼻で笑ったけれど…。本当だったのかもしれない。
そして、私は思い出した。あのアパートの周辺で、焼身自殺が起こったことを。
私は急いで焼身自殺をした男性のニュースを調べた。
あまり大きくは取り上げられていなかったが、2ヶ月前の新聞の一部で、報道されていた。

【当時、自殺をした男性はある女性に対してストーカー行為をしており、警察に相談されていた。男性の自殺は振られたショックによるものではないかと警察は考えており…】

これだ。
多分、この焼身自殺をした男性はあの部屋の前住居者にストーカーしてたんだ。男性が警察に相談されたことを逆恨みし、女性への執着がもっと強くなっていたんだとしたら…
前住居者は悩んで、呪いにでもなんでも縋るかもしれない。
この男性はショックで自殺したんじゃない。
呪いで死んじゃったんだ…。
私の推測であるが、私は全てのピースがぴたりとハマった気がした。前住居者の自傷行為だったという結論よりも、信憑性はないだろう。
しかし、私はこの呪いが原因で、あの部屋には臭いが充満してるのではないか、そう考えてしまうのだ。
臭いなんて、そう簡単に染み付くものじゃない。
不動産屋だって、消臭を行っていると言っていたし…。
香織が入居したことで、臭いが強くなった…??
真相は分からないけれど、私はもう二度とあのアパートには近づきたくないと、そう強く思う。

香織には言わないでおこう…。なんだかとても疲れた。
疲れを取るためにお風呂にでも入ろうか…
私はお風呂に向かおうと立ち上がる。しかし、なぜか部屋のタンスに入れているライターに手が伸びていた。



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香織たちが辿りつかなかった真相

・藤崎かれんはこのアパートに住んでいた。では、何号室に住んでいたのだろうか?
香織たちは何号室だったのか聞いていないが、もしかすると102号室だった可能性も多いにある。

右手の包帯は骨折したのではなく火傷した手の手当てだったとしたら…。

・儀式に必要なのは、相手の名前と火をつけるもの。たったそれだけ。
香織たちは藤崎に名前を教えているが大丈夫なのだろうか。事件について調べていた香織たちを藤崎は疎ましく思うかもしれない。香織たちが真相に辿りつくとき、藤崎はまた、呪いの儀式をするだろう。
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