ダンジョン・イーツ! ~戦闘力ゼロの俺、スキル【絶対配送】でS級冒険者に「揚げたてコロッケ」を届けたら、世界中の英雄から崇拝されはじめた件~

たくみさん

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第一章 ダンジョン・イーツ開業 編

2:S級美少女、お持ち帰りします

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「⋯⋯あの、あなたは?」モグモグ
 涙でぐしゃぐしゃになった顔を拭いながらも、コロッケを食べるのをやめられない、カグヤが尋ねてくる。
 周囲では、コロッケの匂いに興奮したミノタウロスたちが、今にも襲いかかろうと唸り声を上げていた。

「あ、申し遅れました。『ダンジョン・イーツ』配達員の天野レンです」
「ダンジョン⋯⋯イーツ?」

 カグヤが首を傾げる。無理もない。今さっき俺が勝手に作った屋号だ。

 俺は素早く周囲を確認する。魔物たちはコロッケの匂いに釣られているが、じきに痺れを切らして襲ってくるだろう。

「カグヤさん、お食事中申し訳ないんですが、ここから移動しましょう。まだ動けませんか?」
「⋯⋯ごめん。魔力が、空っぽで⋯⋯足に力が入らない」
「なるほど。自力歩行困難⋯と」

「では、追加オプションで『依頼人搬送サービス』をご利用になりますか? 地上まで安全にお届けします」

「え? わ、私を運ぶの? ここから?」
「はい。俺のスキルは、手に持った荷物、もしくは『背負った対象』も配送物に含めることができます。⋯⋯少々手荒になりますが、よろしいですか?」

 カグヤは一瞬戸惑ったが、迫りくるミノタウロスの巨体を見て、コクンと頷いた。
「お、お任せします⋯⋯」
「承知しました。では、失礼して」

 俺は、カグヤの片腕を俺の首に回してもらい、抱きかかえる。つまりはお姫様抱っこだ。
 S級とはいえ、やはり女の子、驚くほど軽い。彼女の柔らかさと温かさに少しドキッとするが、今は仕事中だ。邪念を振り払う。

「お、王子様⋯⋯?」
「っん?なんて?」
「な、何でもないわよっ!」

『おいおいおいおい!』
『氷姫をお姫様抱っこ!? 羨ましすぎる!』
『そこ代われえええええ!』
『なんかフラグ立ってね?!』
『いや状況見ろよ、ミノタウロスに囲まれてるんだぞ!?』
『お姫様抱っこしながら、この包囲網を抜けるとか無理ゲーだろ』

 コメント欄の懸念はもっともだ。一人ならまだしも、衰弱した抱きかかえての回避行動は難易度が跳ね上がる。
 だが、俺には勝算があった。

「カグヤさん、しっかりつかまっていてください。舌を噛まないように」
「ひゃい!」

「スキル再発動――目的地変更、地上ゲート前! 配送物:S級探索者カグヤ! 【絶対配送・緊急搬送モード】!」

 再び、視界が青く染まる。
 ミノタウロスたちが一斉に棍棒を振り上げた。四方八方からの同時攻撃。逃げ場はない――ように見えるだけだ。

「おっと、危ない」
 俺はカグヤを抱きかかえたまま、右へ左へと最小限の動きで棍棒を躱していく。まるでダンスでも踊るように。その度にカグヤが抱きついてくる為、密着度があがる⋯⋯役得だな。

 スキル補正がかかった俺の目には、奴らの動きがスローモーションに見える。

「す、すごい⋯⋯攻撃が、全部見えてるの?」

「はい、見えてはいますが、体が勝手に『最適解』を選んで動くんです。カーナビみたいなもんですよ」
 俺は魔物の腕を駆け上がり、その肩を踏み台にして高く跳躍した。

「いっけぇぇぇぇぇ!デリバリー・ランサー!」

 空中で待機させていたデリバリー・ランサーと言う名のママチャリに飛び乗り、着地と同時にペダルを全力で踏み込む。デリバリーバッグを背負っていたので、カグヤを抱っこしたが⋯⋯正直運転しにくいな⋯⋯。

「ちょ、ちょっと速すぎっ⋯⋯きゃああああああ!」
 カグヤの悲鳴がダンジョンの通路に響き渡る。

 俺たちは音速の弾丸となって、70階層からの帰路を爆走し始めた。

◆◆◆

 その頃、地上のダンジョン管理協会前は、お祭り騒ぎになっていた。
 カグヤの配信を見ていた野次馬、マスコミ、そして遅すぎる救援部隊がごった返している。

「おい、配信見たかよ! あの謎の配達員、カグヤ様をお姫様抱っこして、こっちに向かってるって!」
「70階層からだぞ? 戻ってくるのに何時間かかるんだ?」
「いや、あの速度だと⋯⋯もう着くんじゃないか?」

 その時だった。
 ダンジョンのゲートがまばゆい光を放ち、突風と共に「何か」が飛び出してきた。

 キキキキキィィィィ!!

 凄まじいブレーキ音と共に、協会の入り口前に砂煙が舞い上がる。
 煙が晴れると、そこにはボロボロのママチャリにまたがった、息も絶え絶えの男と――両手で俺にしがみつき、目を回している銀髪の美少女の姿があった。

「ご、到着⋯⋯です。お疲れ様でした⋯⋯」

 レンが力尽きたように呟く。
 一瞬の静寂の後、広場を揺るがすような大歓声が巻き起こった。
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