ダンジョン・イーツ! ~戦闘力ゼロの俺、スキル【絶対配送】でS級冒険者に「揚げたてコロッケ」を届けたら、世界中の英雄から崇拝されはじめた件~

たくみさん

文字の大きさ
2 / 18
第一章 ダンジョン・イーツ開業 編

2:S級美少女、お持ち帰りします

しおりを挟む
「⋯⋯あの、あなたは?」モグモグ
 涙でぐしゃぐしゃになった顔を拭いながらも、コロッケを食べるのをやめられない、カグヤが尋ねてくる。
 周囲では、コロッケの匂いに興奮したミノタウロスたちが、今にも襲いかかろうと唸り声を上げていた。

「あ、申し遅れました。『ダンジョン・イーツ』配達員の天野レンです」
「ダンジョン⋯⋯イーツ?」

 カグヤが首を傾げる。無理もない。今さっき俺が勝手に作った屋号だ。

 俺は素早く周囲を確認する。魔物たちはコロッケの匂いに釣られているが、じきに痺れを切らして襲ってくるだろう。

「カグヤさん、お食事中申し訳ないんですが、ここから移動しましょう。まだ動けませんか?」
「⋯⋯ごめん。魔力が、空っぽで⋯⋯足に力が入らない」
「なるほど。自力歩行困難⋯と」

「では、追加オプションで『依頼人搬送サービス』をご利用になりますか? 地上まで安全にお届けします」

「え? わ、私を運ぶの? ここから?」
「はい。俺のスキルは、手に持った荷物、もしくは『背負った対象』も配送物に含めることができます。⋯⋯少々手荒になりますが、よろしいですか?」

 カグヤは一瞬戸惑ったが、迫りくるミノタウロスの巨体を見て、コクンと頷いた。
「お、お任せします⋯⋯」
「承知しました。では、失礼して」

 俺は、カグヤの片腕を俺の首に回してもらい、抱きかかえる。つまりはお姫様抱っこだ。
 S級とはいえ、やはり女の子、驚くほど軽い。彼女の柔らかさと温かさに少しドキッとするが、今は仕事中だ。邪念を振り払う。

「お、王子様⋯⋯?」
「っん?なんて?」
「な、何でもないわよっ!」

『おいおいおいおい!』
『氷姫をお姫様抱っこ!? 羨ましすぎる!』
『そこ代われえええええ!』
『なんかフラグ立ってね?!』
『いや状況見ろよ、ミノタウロスに囲まれてるんだぞ!?』
『お姫様抱っこしながら、この包囲網を抜けるとか無理ゲーだろ』

 コメント欄の懸念はもっともだ。一人ならまだしも、衰弱した抱きかかえての回避行動は難易度が跳ね上がる。
 だが、俺には勝算があった。

「カグヤさん、しっかりつかまっていてください。舌を噛まないように」
「ひゃい!」

「スキル再発動――目的地変更、地上ゲート前! 配送物:S級探索者カグヤ! 【絶対配送・緊急搬送モード】!」

 再び、視界が青く染まる。
 ミノタウロスたちが一斉に棍棒を振り上げた。四方八方からの同時攻撃。逃げ場はない――ように見えるだけだ。

「おっと、危ない」
 俺はカグヤを抱きかかえたまま、右へ左へと最小限の動きで棍棒を躱していく。まるでダンスでも踊るように。その度にカグヤが抱きついてくる為、密着度があがる⋯⋯約得だな。

 スキル補正がかかった俺の目には、奴らの動きがスローモーションに見える。

「す、すごい⋯⋯攻撃が、全部見えてるの?」

「はい、見えてはいますが、体が勝手に『最適解』を選んで動くんです。カーナビみたいなもんですよ」
 俺は魔物の腕を駆け上がり、その肩を踏み台にして高く跳躍した。

「いっけぇぇぇぇぇ!デリバリー・ランサー!」

 空中で待機させていたデリバリー・ランサーと言う名のママチャリに飛び乗り、着地と同時にペダルを全力で踏み込む。デリバリーバッグを背負っていたので、カグヤを抱っこしたが⋯⋯正直運転しにくいな⋯⋯。

「ちょ、ちょっと速すぎっ⋯⋯きゃああああああ!」
 カグヤの悲鳴がダンジョンの通路に響き渡る。

 俺たちは音速の弾丸となって、70階層からの帰路を爆走し始めた。

◆◆◆

 その頃、地上のダンジョン管理協会前は、お祭り騒ぎになっていた。
 カグヤの配信を見ていた野次馬、マスコミ、そして遅すぎる救援部隊がごった返している。

「おい、配信見たかよ! あの謎の配達員、カグヤ様をお姫様抱っこして、こっちに向かってるって!」
「70階層からだぞ? 戻ってくるのに何時間かかるんだ?」
「いや、あの速度だと⋯⋯もう着くんじゃないか?」

 その時だった。
 ダンジョンのゲートがまばゆい光を放ち、突風と共に「何か」が飛び出してきた。

 キキキキキィィィィ!!

 凄まじいブレーキ音と共に、協会の入り口前に砂煙が舞い上がる。
 煙が晴れると、そこにはボロボロのママチャリにまたがった、息も絶え絶えの男と――両手で俺にしがみつき、目を回している銀髪の美少女の姿があった。

「ご、到着⋯⋯です。お疲れ様でした⋯⋯」

 レンが力尽きたように呟く。
 一瞬の静寂の後、広場を揺るがすような大歓声が巻き起こった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...