ダンジョン・イーツ! ~戦闘力ゼロの俺、スキル【絶対配送】でS級冒険者に「揚げたてコロッケ」を届けたら、世界中の英雄から崇拝されはじめた件~

たくみさん

文字の大きさ
13 / 18
第一章 ダンジョン・イーツ開業 編

13:それでも、俺のチャリは止まらない!

しおりを挟む
 この階層のヤバさは、暑さでも寒さでもない。この二つの温度が複雑に絡まる場所があり、なにも考えずにそこに触れると、鉄がガラスのように砕けてしまうポイントがあることだ。

 さらには、温度調整も難しい。灼熱の気温かと思いきや、その数分後には、極寒の寒さがやってくる。その繰り返しだ。いかにハイテク機器をもってしても、システムの負荷は計り知れない。

 とはいえ、俺には『絶対配送《デリバリー・ロード》』がある。
 絶対配送は、俺が目的地に絶対にたどり着ける最短ルートを自動的に示してくれる。もちろん無茶なルート設定ではない。その場所の状況に応じた、最も安全なルートも設定可能だ。

 実はこの階層には、安全に聖域へとたどり着ける道が存在している。それは、熱波と寒波が存在することによって起きる「炎の竜巻」の中心、竜巻の目とも言える場所だ。

 もちろん、全ての竜巻が聖域へと向かうわけではない。複数発生している竜巻の中のひとつだけが、ゴールへ向かっていく。

 絶対配送が導き出したルートは、正直「バグってんじゃないか」と疑うものだった。まず、指定のポイントに向かい、そこで15分待機する。
 それが、絶対配送の導き出したルートだったのだ……本当に大丈夫か?

◆◆◆

 ハリー・エクスプレス社は、順調に聖域へと向かっていた。だが異変は、ゴールまで残り5キロ地点、魔力濃度が高い『竜の喉仏』と呼ばれるエリアで起きた。

「……アイヤー! 警告! 警告アル!」

 先頭を走るエースライダーのインカムに、警報音が鳴り響く。

「なんだ!? 結界の出力が勝手に上がっていくネ! 制御できないヨ!」
「お、俺のバイクのフレームに亀裂が出来てるヨ!」

 ハリー・エクスプレス社の展開する結界は、確かに強力にこの階層の温度変化からドライバーとバイクを守っていた。だが、高負荷で使用し続けた結果、システムが悲鳴を上げていたのだ。

 さらには、瞬間的に変わる温度変化への対応に遅れが生じ始めた結果、徐々に始まっていたバイクの亀裂が、ついに目で見てわかるほどに現れていた。

「熱い! エンジンがオーバーヒートしてるヨ! いったんエンジンを――」
 一瞬で大爆発が起こった。

 龍脈エンジンは、大気中の空気と魔力を高圧縮して爆発させ、推進力を得る。しかし、想定以上の魔力濃度のせいで異常燃焼が起こり、亀裂により耐久力の落ちていたエンジンは、一気に爆発を起こした。

 そもそも、この龍脈エンジンは今回初めて実践投入されたものだ。テスト走行もろくに行わず、人命を軽視し投入された結果がこれだ。

 爆発を免れたバイクも、エンジンの再始動は不可能だった。

「降りて押すネ! 何としてもたどり着くアル!」
「無理ヨ!! バイクなしじゃ荷物は運べないヨ!!」
「無理は通用しないヨ! この任務に失敗したら待ってるのは……粛清よ……」
「お、俺は逃げる!!」

 彼らが罵り合う中、その数十メートル横を――。

 チリンチリーン。

 涼やかな鈴の音が、通り過ぎた……。
 ような気がしたが、渦巻く竜巻の轟音で、なにも聞こえるはずがない。

「と、ともかく聖域まで行くしかないアル。バイクのエンジンが止まってしまっては、この結界発生装置もそのうち止まるヨ……」
「な……ッ!? バッテリー残量は……くそ! 走れば間に合うか……」
「聖域で、救援を呼ぶアル!」

◆◆◆

 聖域までたどり着けたのは、わずか4人だけ。半数以上の命が失われた。
 そして彼らは、視線の先にいた人物を見て驚愕した。

「バ、バカな……! なぜ貴様がここにいる!? その貧弱な装備で、この階層で無事なわけないヨ!」

「アンタらは機械に頼りすぎだ。ダンジョンの中では、様々なことが起こる。それを解決できるのは、結局、人の知識と経験だけなんだよ」

『ハリー・エクスプレスの看板、初日で炎上で草』
『一億円のバイクがただの鉄屑かよ。ダンジョンを舐めすぎだろ』
『絶対配送のルート、マジでバグだろwww 竜巻の中を無傷で移動とか聞いてないwww』
『ハリー社の連中、あれだけ大口叩いておいて、このザマかよwww』
『ざまぁみろハリー! 数と金だけでダンジョンは支配できねえんだよ!』

 配信画面は、歓喜のコメントで埋め尽くされた。

 ◆◆◆

 俺が聖域にたどり着けたのは、実に不思議な現象のおかげだった。
 ポイントに向かい15分待つと、俺を中心に空気の渦が発生し始めた。そのすぐ後に、再びルート案内が始まった。
 台風の目のようなものが渦の中心に発生し、周りの景色は炎が渦巻く地獄絵図だが、俺が進んでいるルートは穏やかで、なんとも不思議な気分だった。

 俺は聖域にごろごろ転がっている結晶を数個、鉛のボトルに放り込むと、キツく栓をしてデリバリーバッグに収めた。

 さて帰るかと思ったが、ハリー・エクスプレスの配送員たちに目が止まる。

「おまえら、帰る手段あるのか?」
「……今、救助要請はしてるけど、いつ来るかわからないし、そもそも来れるのかすらわからないヨ……」

「仕方ないな……。――『デリバリー・キャリア』!!」

 レンが叫ぶと、愛車にリアカーが連結される。

「さあ、このリアカーに全員乗れ。ゲート前まで連れて行ってやる」
「私たち、あなたの敵アルよ?」
「あー、でもまあ、勝手に死なれて困るしな。おまえらのやり方は気に入らないけど、殺したいほど恨んでるわけでもない。実際、困ってるだろ?」
「すまないアル……」

 ◆◆◆

 地上ゲート――

 ハリー社のスタッフたちが用意していた祝勝会場は、お通夜のように静まり返っていた。
 現れたのは赤いバイクではなく、無傷の状態でリアカーを引いたママチャリだったからだ。
 キキーッ!
 レンがブレーキをかけ、錬金術師パラケルススの前で止まる。


『おい待てwww 一億円のマシンで乗り込んだハリーエクスプレスの連中が、ママチャリのリアカーでドナドナされてるぞwww』
『ハリーエクスプレス、大口叩いてたくせに、今は全員リアカーで借りてきた猫みたいになってて草』
『レン君さ、さらっと「デリバリー・キャリア」とか言ってるけど、あの重量引きながら第65階層を逆走する脚力、人間やめてない?』
『恒例の嘔吐はなかったなwww』
 配信のコメント欄も、俺の到着に盛り上がる。

「……お届けものは、こちらでよろしいですか?」
 レンがバッグを開く。中から取り出された鉛のボトルには、膨張による変形もない。
 パラケルススは懐から丸メガネを取り出し、鉛のボトルを観察し始めた。鉛のボトルの状態を確認できる錬金術で作成されたメガネらしい。

「……完璧じゃ。内圧の揺らぎすら微塵も感じられん。小僧、どうやってこいつを運んできた?」
「いつも通りに運んだだけで、特別変わったことはしてないですよ」

 パラケルススは満足げに笑い、レンが差し出した伝票に受領印を押した

 ハリー・エクスプレス社の部隊は終始無言で、俺を一瞥したあと、待機していたバンに乗り込み、この場から去っていった
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

おばさん冒険者、職場復帰する

神田柊子
ファンタジー
アリス(43)は『完全防御の魔女』と呼ばれたA級冒険者。 子育て(子どもの修行)のために母子ふたりで旅をしていたけれど、子どもが父親の元で暮らすことになった。 ひとりになったアリスは、拠点にしていた街に五年ぶりに帰ってくる。 さっそくギルドに顔を出すと昔馴染みのギルドマスターから、ギルド職員のリーナを弟子にしてほしいと頼まれる……。 生活力は低め、戦闘力は高めなアリスおばさんの冒険譚。 ----- 剣と魔法の西洋風異世界。転移・転生なし。三人称。 一話ごとで一区切りの、連作短編(の予定)。 ----- ※小説家になろう様にも掲載中。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。

蛇崩 通
ファンタジー
 ネットオークションに、異世界転移魔方陣が出品されていた。  三千円で。  二枚入り。  手製のガイドブック『異世界の歩き方』付き。  ガイドブックには、異世界会話集も収録。  出品商品の説明文には、「魔力が充分にあれば、異世界に行けます」とあった。  おもしろそうなので、買ってみた。  使ってみた。  帰れなくなった。日本に。  魔力切れのようだ。  しかたがないので、異世界で魔法の勉強をすることにした。  それなのに……  気がついたら、魔王軍と戦うことに。  はたして、日本に無事戻れるのか?  <第1章の主な内容>  王立魔法学園南校で授業を受けていたら、クラスまるごと徴兵されてしまった。  魔王軍が、王都まで迫ったからだ。  同じクラスは、女生徒ばかり。  毒薔薇姫、毒蛇姫、サソリ姫など、毒はあるけど魔法はからっきしの美少女ばかり。  ベテラン騎士も兵士たちも、あっという間にアース・ドラゴンに喰われてしまった。  しかたがない。ぼくが戦うか。  <第2章の主な内容>  救援要請が来た。南城壁を守る氷姫から。彼女は、王立魔法学園北校が誇る三大魔法剣姫の一人。氷結魔法剣を持つ魔法姫騎士だ。  さっそく救援に行くと、氷姫たち守備隊は、アース・ドラゴンの大軍に包囲され、絶体絶命の窮地だった。  どう救出する?  <第3章の主な内容>  南城壁第十六砦の屋上では、三大魔法剣姫が、そろい踏みをしていた。氷結魔法剣の使い手、氷姫。火炎魔法剣の炎姫。それに、雷鳴魔法剣の雷姫だ。  そこへ、魔王の娘にして、王都侵攻魔王軍の総司令官、炎龍王女がやって来た。三名の女魔族を率いて。交渉のためだ。だが、炎龍王女の要求内容は、常軌を逸していた。  交渉は、すぐに決裂。三大魔法剣姫と魔王の娘との激しいバトルが勃発する。  驚異的な再生能力を誇る女魔族たちに、三大魔法剣姫は苦戦するが……  <第4章の主な内容>  リリーシア王女が、魔王軍に拉致された。  明日の夜明けまでに王女を奪還しなければ、王都平民区の十万人の命が失われる。  なぜなら、兵力の減少に苦しむ王国騎士団は、王都外壁の放棄と、内壁への撤退を主張していた。それを拒否し、外壁での徹底抗戦を主張していたのが、臨時副司令官のリリーシア王女だったからだ。  三大魔法剣姫とトッキロたちは、王女を救出するため、深夜、魔王軍の野営陣地に侵入するが……

処理中です...