ダンジョン・イーツ! ~戦闘力ゼロの俺、スキル【絶対配送】でS級冒険者に「揚げたてコロッケ」を届けたら、世界中の英雄から崇拝されはじめた件~

たくみさん

文字の大きさ
46 / 72
第四章 ロストアーカイブ編

46:新入社員が……くノ一だった件

しおりを挟む
 世界中を震撼させた「ハリー・エクスプレス社」の不祥事は、連日ニュースのトップを飾り続けていた。
 巨大企業が隠蔽していた三十年前の人体実験、そして人工ウイルスの散布。レンたちが命懸けで持ち帰った「証拠」が突き付けられた瞬間、業界の巨人は一晩で砂上の楼閣のように崩れ落ちた。

 社長のハリーは、日本と某国との合同捜査により検挙され、会社は事実上の解体へ。独占的だった彼らの権益は剥奪され、物流の闇にようやく一筋の光が差し込んだ。

 一方、三十年の眠りから目覚めたロストアーカイブは、活気が戻りつつある。
 この街の人々にとって、独自の魔導技術で精製されたエネルギーや通信インフラは自前で事足りる。だが、長い断絶によって、彼らにとって未知の味覚や、最新の娯楽に飢えていた。

「今週分のコンビニ洋菓子セットと、最新の週刊漫画誌だよ!」
「待ってたよ、レンさん。これを楽しみに街のみんなで集まってるんだ」

 現在、地上とロストアーカイブを繋ぐ唯一のパイプラインは、ギルドが特例で認可したダンジョン・イーツの独占配送ルートだ。
 本来、ギルドとしては市場競争を促すために複数の業者を参入させる意向だった。しかし、ロストアーカイブ側がそれを断固として拒否したのだ。

『我々が信頼するのは、暗闇の街に光を届け、アイザックの遺志を繋いでくれたレン殿たちだけだ。彼ら以外がこの街の敷居を跨ぐことは許さない』――。

 そんな街の人々からの熱烈な指名により、将来的な市場開放を条件としつつも、現在はダンジョン・イーツが唯一の窓口としての重責を担っていた。

 レンはこの歴史的発見や配送の様子を配信すれば、チャンネル登録者数は数百万規模に跳ね上がることを分かっていた。だが、彼はカメラを回さない。

「……今はまだ、この街の平穏を切り売りするわけにはいかないからな」

 配信者としての名声よりも、一人の運び屋としての誠実さを選ぶ。そのストイックさが、ロストアーカイブの人々をさらに惹きつけていた。

 ギルドは街外れの丘に設置した、かつてのハリー社の残置施設を接収し、ダンジョン配送中継拠点として改装した。
 拠点の運営管理はギルド職員が行い、レンたちは純粋に運び屋の仕事に専念できる環境だ。

「お疲れ様、レン。……配信を休んでる間、ファンが心配してるみたいだけど、大丈夫?」
 中継地点のテラス席で、カグヤがスマホの画面を見せながら、レンに労いのタオルを渡す。

「ああ。『今は命に関わる配達の最中だ』って一行だけメッセージを入れておいた。嘘じゃないしな」

 カグヤたち「月詠」は、この拠点の常駐警備と、レンの極秘ルートの防衛をギルドから正式に請け負っていた。バルトは「ハリー社の連中を追い出した後の空気は最高だな」と笑いながら、新調した鎧の具合を確かめている。

 そんな時、平穏を破るように日本近海の深海を震源とする巨大な海底地震が発生した。
 数日後、津波の発生もなく、人的被害もなかった……と思われていたのだが。

「……ただの地震じゃなかったわ。ギルドの解析班が震源地の波形を調査したところ、ダンジョンが発生した際の波形と酷似していることが判明したの」

 カグヤが深刻な表情でタブレットを操作し、データを共有する。
「日本近海の海底三千メートル地点に、突如として『未知の海底ダンジョン』が発生した。発生と同時に周辺海域には強力な魔力磁場が発生して、付近を潜行していた、海洋調査潜水艇の電力がダウンして沈没……。現在、政府とギルドはパニック寸前よ」

 そこに、レイとユウキが走り込んできた。二人の顔はいつになく強張っている。

「兄さん!!その潜水艇から直接依頼が入った!」

「潜水艇から? 海底三千メートルで誰が注文するんだよ」

 レイが差し出した端末には、緊急デリバリー依頼が表示されていた。

 『こちら海洋調査隊……ダンジョン発生時の衝撃波で全電子機器が一時ダウン。数分後にシステムは復旧したが……運悪く崩落した海底岩盤の下敷きになり、完全に沈座した。 

 自力航行不能。魔導式の耐圧バリアで浸水は防いでいるが、脱出するには外部から岩盤を破壊する「特殊爆薬」と、それを設置するための人手が必要だ。

 ……あと、もう二日も食べてない。最後に、叙々煙の高級焼肉弁当を食いたい……。』

「え、これ、うちに出す依頼じゃないだろ……」

「もちろん海上保安庁とか、JAMSTEC(海洋研究開発機構)に打診したみたいだけど、難しいらしくてさ。そこの組織の誰だかが、『食い物に関することなら、ダンジョンイーツがなんとかしてくれるんじゃないか?』って事になったらしいよ」

「この国大丈夫なのか……?
 いやいや、何とかしたいところだけど、チャリで海底でと走れっていうのか?

 いや……絶対配送なら、もしかしたら……」

「いや、無理だよ。ルート検索したけど、駄目だった。」

「んじゃ、なんでお前、その依頼持ってきた?!」

「この依頼を受けるに当たって、力になってくれそうな人が居るんだよ。
 さっき面接に来た人でさ、ちょっと癖のある人だけど、面白いスキルを持ってるんだよ。」
 そうなのだ、当社ダンジョン・イーツは、業務拡大につき、新入社員を募集しているのだ。

「まぁ、うちは、癖のあるメンツしか居ないから、変わり者でも問題はないぞ?」
 ユウキとかな、今は随分、人に戻ってきたけど。
「本人を見ても、そう言えるかな?外で待ってもらってるから、会ってみてよ。

 アリス、お待たせ!入ってきていいよ!!」
 
「ハロー! レンさーん! 
 私、アメリカから来たアリス・グリーンです! 
 忍者に憧れて修行中でござるよ♪ 拙者のことはアリスって呼んでくだされ!ニンニン♪」

 金髪をツインテールにし、メッシュの入ったピンクの忍装束に身を包んだ美少女だった。
背中のリュックには、巨大なニッパーと接着剤が突き刺さっている。 

 これはまた……濃いのがやってきたな……
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

異世界に迷い込んだ盾職おっさんは『使えない』といわれ町ぐるみで追放されましたが、現在女の子の保護者になってます。

古嶺こいし
ファンタジー
異世界に神隠しに遭い、そのまま10年以上過ごした主人公、北城辰也はある日突然パーティーメンバーから『盾しか能がないおっさんは使えない』という理由で突然解雇されてしまう。勝手に冒険者資格も剥奪され、しかも家まで壊されて居場所を完全に失ってしまった。 頼りもない孤独な主人公はこれからどうしようと海辺で黄昏ていると、海に女の子が浮かんでいるのを発見する。 「うおおおおお!!??」 慌てて救助したことによって、北城辰也の物語が幕を開けたのだった。 基本出来上がり投稿となります!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

処理中です...