ダンジョン・イーツ! ~戦闘力ゼロの俺、スキル【絶対配送】でS級冒険者に「揚げたてコロッケ」を届けたら、世界中の英雄から崇拝されはじめた件~

たくみさん

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第六章 その配送、安物につき群雄割拠 編

63:カミングアウト

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 東京湾沖合、第7封鎖プラント。

 そこは、巨大なドーナツ状の防壁に囲まれた、海上要塞だった。
 中央には、青白い光を放ちながら海面に浮遊するダンジョンゲートが鎮座している。

 周囲には海上自衛隊のイージス艦や、海上保安庁の大型巡視船が複数展開し、蟻一匹通さない警戒網を敷いていた。
 そのレーダーサイトが、突如として絶叫のような警報を鳴らした。

『正体不明の飛行物体、高速で接近! 』
『ミサイルか!? 迎撃用意!』

 護衛艦のCIC(戦闘指揮所)が色めき立つ。
 だが、光学モニターに映し出されたのは、ミサイルではなかった。
 氷の翼を広げ、天使のような美貌を持った、一人の女性だった。

『なっ……人間だと!?』
『あれは……S級冒険者、『氷姫』カグヤ!? なぜ彼女がここに!?』
 艦長の困惑をよそに、上空のカグヤは静かに手をかざした。

 彼女の目に、眼下の軍艦たちは「レンとの愛を邪魔する障害物」にしか見えていない。
「……凍りなさい」

 パキィィィィィィィィン!!

 世界が、白に染まった。
 荒れ狂う波が瞬時に凍結し、白銀の大地へと変わる。
 鋼鉄の護衛艦も、最新鋭の巡視船も、その船体ごと海に縫い止められ、砲塔までもが分厚い氷に覆われた。
 中の乗員たちは無事だが、システムは完全にダウン。船はただの鉄の棺桶と化した。

『う、動けん! スクリューが破損!』
『全火器使用不能! 魔法障壁、突破されました!』
 圧倒的な暴力。
 たった一人の魔女によって、日本最高峰の防衛網が無力化されたのだ。

 その隙を突くように、彼方の水平線から、黒煙を上げた船団が現れた。
 H&Lロジのマークが入った、改造大型タグボートの群れだ。
 それらは凍りついた海域を、カグヤが開けた水路を通って侵入し、無防備になったプラントの中心部――『浮遊型ゲート』へと到着した。

『ヒャッハー! 自衛隊がカカシみたいだぜぇ!』
『ゲートにワイヤーを撃ち込め! お宝を頂くぞ!』

 ドシュッ、ドシュッ!
 太いワイヤーアンカーがゲートの支柱に次々と打ち込まれる。
 数隻のタグボートがエンジンを全開にし、黒煙を吐き出す。
 ズズズ……と、巨大な異界への入り口が動き出した。



直後、モニターに映し出されたニュース映像は、絶望的なものだった。
 東京湾沖合の海上要塞が、一瞬にして氷漬けにされたのだ。
 そして、H&Lロジの船団が、巨大な『ゲート』にワイヤーを打ち込み、東京へ向かって牽引を始めている。

「……あのサイズ…配送不可…」
 拓実が呟く。
「……でも、あのゲート何に使うんですか?」
 ユウキは首をコテンと傾ける。

「政府は、ダンジョンゲートの研究をしていた。ゲートを使い行く先を自由に操作しようとしていた。

 お前らがゲートに差し込んだ、ゲートストーンを操作することで、任意の場所に繋げる事が可能になった。

 H&Lは、でかい穴をつくりスタンピードを起こすと言っていた。ダンジョンゲートをでかい穴にするんだとしたら……」

「ダンジョンゲートからモンスターが溢れだして、東京はモンスターまみれ……、そ、そんな事無理ですよね!?先輩!!」
 ユウキは、真っ青な顔で俺に掴みかかってくる。

「ユウキ!落ち着け!!」
 どうすればいい?!一体どうしたら……

 大門が無線機を掴み、怒鳴るように叫んだ。
「総員に通達! 緊急事態発生(コード・レッド)!
 対象は『浮遊型ゲート』! 阻止限界点は隅田川・H&Lロジ倉庫!
 大和運輸の全戦力を投入しても止めろ! これは配送じゃない、戦争だ!」
『りょ、了解! しかし相手は海上です! 陸路からは手出しが……!』

「だ、大門さん…大和運輸って運送会社じゃないんですか?」
「ダンジョンに関わる大手の会社は、国から不測の事態が起こった場合の対処をする義務がある。
 大和運輸にも、強力な警備部門が存在している。」

 レンはカグヤが消えた空を睨んだ。
「……人任せにできるかよ。カグヤを止めるのは俺の役目だ。あいつは、バカみたいに強いくせに、戦い以外の事は全く駄目だ。
 洗い物をすれば、皿を割る。料理をすれば、異臭騒動がおこる!」

「「「え?!」」」

「でも、あいつは常に一生懸命なんだ!
 いつも俺の事を考えてくれて……たしかに、俺の体をマッサージすると言って、骨を数本砕かれたり、窓掃除をすれば、窓が摩擦で消失したりはするが……

 あいつの全てを受け入れられるのは、俺だけなんだ!
 行くぞみんな! ターゲットは東京湾上!
 これがダンジョンイーツ、最大のミッションだ!」
「「「お、おーーー!!!」」」

 大門が振り返る。心なしか大門の俺を見る目に優しさを感じる。
「レン殿! 気持ちは分かるが、どうやって追う!?
 我々の装甲トラックでも、海の上は走れんぞ!」

 その問いに、拓実が静かに立ち上がった。
 彼はポケットから、いつものキーを取り出し、ニヤリと笑った。

「……問題ありません。
 俺のサンバーは、まだ『本気』を出してませんから」
「なんだと?」
「……アリスさん。例の『オプションパーツ』、使いますよ」
 アリスが耳をピクリと動かし、ニカッと笑った。

「お任せくだされ! ついにアレを使うときがが来たでござるな!
 強襲揚陸仕様『ウルトラ・サンバー・マリンカスタム』! 出撃でござる!」
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