フォノンの物語

KIM2

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4章

スタッフの迷宮

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 旅に出て十日目になりました。
 道は大きな街道に入りましたが旅人の姿はまばらです。
 次はアニマートという少し大きな街に着く予定です。
 アニマートの街は音楽が盛んな街だったとフォノンはローランドから教えてもらいました。
 あちらこちらに演奏家や歌手が住んでいて、街中で演奏されていたというのです。
 演奏家が集まるには理由がありました。
 アニマートの街からすぐそこには、スタッフの迷宮があり、七色のドラゴン達が音楽を守ってるという言い伝えがあるのです。
 そのドラゴンにあやかって曲を作ろうと作曲家が集まり、演奏家がその曲を求め、歌手が歌うのでした。
 「楽しみだわ」
 と普段は無口なシンがぽうっとした表情で言います。
 「このところ歌ってなかったから」
 と不満の声を漏らし
 「街に着いたら歌いに行きたいわ」
 と切に願うのでした。
 ところが、アニマートの街まであと一日というところで、大勢の人々がアニマートから逆行してきました。
 「何かあったの?」
 と逆行してくる旅人を引き留めフォノンは聞きました。
 アコーディオンを持ったその男は言いました。
 「知らないのか?ドラゴンが出たんだ」
 「あんた達も行くのはやめた方がいい」
 と言って足早に去って行ってしまいました。

 この街道を引き返すって?五日は無駄になります。

 フォノンはユニを見ました。
 ユニはうなずいて言いました。
 「とりあえず街まで行って情報を集めよう!」
 シンもローランドも賛成です。
 一行はアニマートの街を目指しました。
 同じ方向には、荷物を乗せた小馬を引いている小太りの少年がいるだけです。小馬の荷物の上には小さな黒猫が座っていました。
 フォノン達一行は、まずは宿を探しました。
 アニマートの街は閑散としていました。
 一軒だけ「ソウルパーツ亭」という変わった名前の宿が取れました。一階は食堂で三階から宿泊部屋という形式の宿です。
 部屋に荷物を置いて食堂に集まると、さっきの小太りの少年も宿泊の手続きをしている最中でした。。
 テーブルに着き、飲み物を注文すると店の主人に聞きました。
 「ドラゴンが暴れてるってどういうことだい?」
 「ここいらの人じゃないね」
 と店の主人が値踏みするように言いました。
 「ああ初めてなんだ。事情を教えてくれないか?」
 そう言ってユニはいつの間にか銀貨を一枚主人の手に握らせていました。
 「スタッフの迷宮に住む七色のドラゴン達は、自らが守護する音を守るため、千年の昔からスタッフの迷宮に結界を張り鎮座していた」
 「七色のドラゴン達って?」
 とフォノンは聞きました。
 「知らないのか?紅竜、橙竜、黄竜、緑竜、青竜、紫竜、桜竜の七匹のドラゴン達さ」
 店の主人は続けました。
 「ドラゴン達の守護する音は調律され迷宮から聞こえる音色は素晴らしかった。ところが五年前のある日、守護していた音の宝玉が失われたらしいのさ。」
 「七色のドラゴン達は自分達が何を守護していたのかも忘れ、お互いがお互いの音の宝玉を獲ったのではないかと争うようになってしまった。もはや自分の名前すら忘れているんだろう。今じゃただのドラゴンさ。旅人もめっきり減っちまった。」
 「ところが話はそれだけじゃない」
 「ひと月前からもう一匹のドラゴンが現れたのさ」
 「その竜は黒色をしていて、スタッフの迷宮を通る旅人や街の住人になぞなぞを出して、答えれなかったものは喰っちまうそうだ。街の奴らもびびって逃げちまった」
 と店主は言いました。
 「あんたがたも引き返して、別の道を通った方がいい」
 と言い厨房へ入って行きました。

 「どうする引き返すか?」
 とローランドは言いました。
 「ドラゴンを退治すれば元どおりになるんじゃない?」
  とフォノンは言いました。
 「ドラゴン退治なんて簡単にできるものか」
  とローランドは呆れて言いました。
 「じゃあ、どうするの?」
 「明日、直接ドラゴンに聞いてみるか?なぞなぞを出すってことは言葉は通じるんだろう」
 「そーだーねー」
 と、いきなり聞き慣れない間延びした声が割ってきました。例の小太りの少年です。
 「なんだ盗み聞きか?どっからわいた?」
 とユニはすでにケンカ体制です。
 「驚かせてごめんなさい。僕はハッカと言います。中の魔法使いの弟子をしており、ドラゴン達に用事があるのです。」
 とハッカは自己紹介を一気にやってしまいました。
 「むー自分の都合だけ言い切ったな。」
 とローランドは言いました。
 「中の魔法使いって宮廷魔法使いのスパイスのこと?」
 とシンは聞きました。懐かしい名前です。
 「そうだけれどご存知で?」
 「よくお世話になってるわ」
 とシンは微笑みました。
 「まあいい。じゃあ明日みんなでスタッフの迷宮まで行くとしよう」
 とローランドはその場をまとめるように言いました。
 みんなお腹が空いていたので、同じテーブルで自己紹介がてら一緒に食事をすることになりました。
 テーブルには野菜のスープ、ミートボールパスタの大盛り、エスカルゴとジンジャーエールと大量のサラダが並んでいます。
 「僕はフォノン、こっちがユニでそっちがシン、でこれは白うさぎのローランド。気づいてるかもしれないけれどしゃべれる。」
 ミートボールを食べながらフォノンは言いました。
 ローランドはサラダをもしゃもしゃ食べながら言いました。
 「よろしく」
 「使い魔かい?僕のミントもしゃべるよ」
 とハッカはエスカルゴと格闘しながら黒猫のミントを呼びました。
 「ミント、みんなにご挨拶」
 黒猫は顔を洗いながら言いました。
 「チーッス」
 ハッカは言いました。
 「愛想ないけれどよろしくね」
 「ところで君はどういう目的で七色のドラゴン達を探してるの?」
 とフォノンはパスタを頬張りながらハッカに聞きました。
 「今、世界から音が消えて行ってるんだ。その原因を突きとめるために、音の守護者たる七色のドラゴン達に話を聞きに来たってわけ」
 とハッカもミートボールを食べながら答えました。
 「君達はどうして?」
 と聞かれユニが言いました。
 「俺達は北の魔女に会いに行く途中だ。この街道を通ってフォーコ火山を越えて行くつもりだったのに、通行禁止は困っちまう」
 「北の魔女のところへ?危険だなあ!」
 とハッカは正直な感想を言いました。
 「さあ明日に備えて今日はもう寝るとしよう」
 とローランドが言い、その場はお開きになったのでした。

 次の日の朝、フォノン、ユニ、シン、ローランド、ハッカとミントは揃ってスタッフの迷宮に向かいました。
 アニマートの街からは歩いて半日くらいの距離です。
 よく整備されてはいますが、歴史を感じさせる街道を歩いて行きます。
 するとどうでしょう。
 果たして大きな塔が見えて来ました。
 ずいぶん昔に建てられたみたいですが建物自体は頑丈そうです。
 ドラゴンの住処だというのも頷けます。
 「これって迷宮?神殿みたいだけれど」
 とシンは誰にともなく言いました。 
 「いい線いってる。この辺りが古代ムーサ帝国の時代は神殿だったらしいよ」
 とハッカが知識を披露します。
 「でも結界が張ってるのが感じられる。立ち入るのに苦労しそうだ」
 
 その時、上空から雷のような声がしました。

 「そこにいるのは誰だあ!」

 

 
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