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イチゴ大福一撃
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早朝、
紅葉も真っ盛りの秋の山道である。
俺はごく普通のファミリーカーに乗って、二車線の山道を登っていた。
右へ左へ曲がり、緩やかなカーブを描くワインディングを流しながら、左手でタバコをふかす。
「ふぅーーーーっ‥‥」
少し開けた運転席の窓から、煙が吸われていく。
ブラインドコーナーを抜け、いつものヘアピンをクイックに曲がり、2・3個のコーナーを抜けたところで、前方の路肩に赤い車が停まっているのを目にした。
車の傍らに女の子が1人たたずんでいる。
赤い車のドライバーだろうか。
近づくにつれ、だんだん赤い車の車種名がわかってくる。
ホンダ・ビート。660cc。赤。かなり古い軽自動車のオープンカーである。
「ずいぶん懐かしい車だなぁ、乗ってるのは若い女の子か」
俺の青春時代のオープンカーである。ダチが乗り回していたっけ。
当時は、走り屋にあこがれ、山道をよく走ったものだ。
今やオヤジと化した自分を、あの頃の若い仲間らの顔と比べて、ルームミラーの無精髭を生やした顔にげんなりする。
時が経つのは早いものである。
前方の赤い車が近づくにつれ、女の子が手を挙げているのに気がついた。
なんだ? こんなオヤジに何か用??
車を女の子の車の前に停めた。
女の子が走ってくる。
「すみません~っ」
窓を開ける。
「すみません、クルマが故障しちゃったみたいで、ここ、圏外で、電話もかけれないから、大変申し訳ないんですけど、ふもとまで乗せていってはもらえないでしょうか?」
は?
「‥ウェルカム! 乗りな姉ちゃん」
助手席に女の子を乗せる。
車をUターンさせて、トロトロと発進させた。
紅葉の赤と、女の子の頰の赤さと羞恥心を置いてけぼりにして、山道を下る。
「君は、ここら辺のひとかい?」
「いいえ、旅行中の者です」
そういえばナンバープレートをチェックし忘れていた。
「バッテリーでも上がったのかな?」
俺の心のバッテリーは、やけにハイになったようだった。
ふと横顔を見ると、いちご大福のような頬の可愛らしいキミが座っている。
一期一会?
なんのことだ?
この時の顔を俺はいつまでも忘れない。
初めてきみと出会った時の大切な記憶だから。
つづく
紅葉も真っ盛りの秋の山道である。
俺はごく普通のファミリーカーに乗って、二車線の山道を登っていた。
右へ左へ曲がり、緩やかなカーブを描くワインディングを流しながら、左手でタバコをふかす。
「ふぅーーーーっ‥‥」
少し開けた運転席の窓から、煙が吸われていく。
ブラインドコーナーを抜け、いつものヘアピンをクイックに曲がり、2・3個のコーナーを抜けたところで、前方の路肩に赤い車が停まっているのを目にした。
車の傍らに女の子が1人たたずんでいる。
赤い車のドライバーだろうか。
近づくにつれ、だんだん赤い車の車種名がわかってくる。
ホンダ・ビート。660cc。赤。かなり古い軽自動車のオープンカーである。
「ずいぶん懐かしい車だなぁ、乗ってるのは若い女の子か」
俺の青春時代のオープンカーである。ダチが乗り回していたっけ。
当時は、走り屋にあこがれ、山道をよく走ったものだ。
今やオヤジと化した自分を、あの頃の若い仲間らの顔と比べて、ルームミラーの無精髭を生やした顔にげんなりする。
時が経つのは早いものである。
前方の赤い車が近づくにつれ、女の子が手を挙げているのに気がついた。
なんだ? こんなオヤジに何か用??
車を女の子の車の前に停めた。
女の子が走ってくる。
「すみません~っ」
窓を開ける。
「すみません、クルマが故障しちゃったみたいで、ここ、圏外で、電話もかけれないから、大変申し訳ないんですけど、ふもとまで乗せていってはもらえないでしょうか?」
は?
「‥ウェルカム! 乗りな姉ちゃん」
助手席に女の子を乗せる。
車をUターンさせて、トロトロと発進させた。
紅葉の赤と、女の子の頰の赤さと羞恥心を置いてけぼりにして、山道を下る。
「君は、ここら辺のひとかい?」
「いいえ、旅行中の者です」
そういえばナンバープレートをチェックし忘れていた。
「バッテリーでも上がったのかな?」
俺の心のバッテリーは、やけにハイになったようだった。
ふと横顔を見ると、いちご大福のような頬の可愛らしいキミが座っている。
一期一会?
なんのことだ?
この時の顔を俺はいつまでも忘れない。
初めてきみと出会った時の大切な記憶だから。
つづく
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