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ようこそ帰祖村へ
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「ここが、さっき車の中で話した物語に出てくる村だよ」
「ここが?何もねぇ凄い田舎じゃん」
赤髪の男は不満そうな声で言うと、俺を見た。
「もう少し待ってれば、さっき話したモノが見られるよ」
「話したモノって、御地家の子祭りってやつ?」
ずっと黙っていたので、聞いてないと思っていたが眼鏡の女はちゃんと聞いていたようだ。
「何か雨が降りそうじゃない~?変な雲が出て来たよ?」
ロングヘア―の女は、空を見上げ不安そうに言った。
「この地域は雨が多いからね」
「それにさ~。ここに立ってるだけじゃつまんないんだけど~」
ロングヘアーの女が、身体を揺すりながら駄々をこねるように言う。この女は、俺が話していたことをあまり聞いてなかったようだ。
「何件か家があるけど人住んでるのか?どれも明かりが点いてないけど」
見渡す限りの田畑の中に、家が何件か点在する。何十年も経ってるのにどれもみな、崩れる事なくしっかりと形を保っている。流石、木工細工の腕を誇る村だけある。
「廃墟じゃないの~?」
ロングヘアーの女は、甘えたような声を出し赤髪に言った。
「でも、廃墟にしては綺麗そうだけど・・」
慎重な性格なのだろう。眼鏡の女はいくつかの家を見ながら言った。
「取り敢えず行ってみるか。百目鬼旅館だっけ?そこの女将さん面白そうじゃん!誰もいなかったら、俺が知ってる心スポに案内してやる。この近くなんだ。雑木林の中から沢山の骨が出た場所。大量殺人があったんだってさ」
得意気に言った赤髪の男は歩き出し、二人の女はそれについて行く。
「ちょっと待って」
俺の声に三人は立ち止まり振り返る。
「何だよ」
「何?」
「・・・・・」
ぽつぽつと雨が降って来た。
「やだぁ~雨が降ってきたんだけどぉ~」
「今日は帰った方がいいかしらね」
「マジで?ここまで来て帰るのかよ。そんなにひどい雨じゃないか行っちゃおうぜ」
「でも・・・」
行く事に迷いがある二人の女に対し、行きたくて仕方がない赤髪の男は少し困っているようだ。
「行くのか?戻るなら今の内だぞ」
俺は確かめるように言った。最終確認だ。
「どうしようかな。面白いモノ本当にあるの?」
「きっとあるって。俺、動画撮ってサイトに乗せようと思ってるんだ」
「あ~それもありね~」
「じゃ、決まりな。まず、あそこの家から行こう」
威勢よく言った赤髪の男は、先頭切って歩き出す。迷っていた二人の女も、視線を交わしながらも赤髪の男について行った。
その三人の後ろ姿を見送っていた俺は
「・・・そうか。逝ってもいいそうだぞ」
そう言うと、白田からもらったサングラスを取り自分の足元を見る。
「にゃふん」
俺に寄り添うようにして立つミヨが呆れたように鳴いた。
「おいおい。ちゃんと止めてやらなかったのか?それにまず、影来神社に先に行かせないと行けないんじゃないか?」
いつの間にいたのか、橋の欄干に腰を下ろしていた高野がニヤニヤとしながら言う。
「言ったさ。聞いてただろう?あいつらは、自分の意志で言ったんだ。影来神社への挨拶は後ででもいい。いずれ、呼ばれるだろうから」
そう。必ず呼ばれる。拝殿の中にあることり祖母ちゃんが付けていた数珠が呼ぶのだ。
高野は、勢いをつけて欄干から飛び降りると俺の方へと近づいてきた。
「まぁしゃあないわな」
「なぁ高野」
「ああ?」
「お前さ、病院で俺に「あいつに気をつけろ」って言っただろう?」
「ああ。薄っすらだけど覚えてるよ」
「気をつけろの後、しって言ってんだ。しの後に何て言おうとしてたんだ?」
「そんな事も分かんないのかよ「死ぬぞ」だよ」
「ああそうか」
「でも俺の言葉が最後まで分かったとしても、お前はここに来ただろ?」
「ああ。来た」
「ははは。白田さんのお陰で俺は死人にはならなかったが、まぁ微妙な位置で生きてるってところだな」
「うん・・・でも、俺は高野とミヨに会えて嬉しいよ」
「ちっ。気持ち悪ぃ。行くぞミヨ」
「にゃふ」
高野とミヨは、俺を置いて帰祖村へと歩いて行った。
俺は、そんな一人と一匹の後姿を見ながら
(これで良かったんだ)
と心から思い、誰もいない廃墟にぽつぽつと明かりが点き始めた村人達の家を見ながら、後を追った。
村の至る所に、紫陽花が咲き誇っていた。まるで、この土地の穢れを無くそうとするかのように。
「ここが?何もねぇ凄い田舎じゃん」
赤髪の男は不満そうな声で言うと、俺を見た。
「もう少し待ってれば、さっき話したモノが見られるよ」
「話したモノって、御地家の子祭りってやつ?」
ずっと黙っていたので、聞いてないと思っていたが眼鏡の女はちゃんと聞いていたようだ。
「何か雨が降りそうじゃない~?変な雲が出て来たよ?」
ロングヘア―の女は、空を見上げ不安そうに言った。
「この地域は雨が多いからね」
「それにさ~。ここに立ってるだけじゃつまんないんだけど~」
ロングヘアーの女が、身体を揺すりながら駄々をこねるように言う。この女は、俺が話していたことをあまり聞いてなかったようだ。
「何件か家があるけど人住んでるのか?どれも明かりが点いてないけど」
見渡す限りの田畑の中に、家が何件か点在する。何十年も経ってるのにどれもみな、崩れる事なくしっかりと形を保っている。流石、木工細工の腕を誇る村だけある。
「廃墟じゃないの~?」
ロングヘアーの女は、甘えたような声を出し赤髪に言った。
「でも、廃墟にしては綺麗そうだけど・・」
慎重な性格なのだろう。眼鏡の女はいくつかの家を見ながら言った。
「取り敢えず行ってみるか。百目鬼旅館だっけ?そこの女将さん面白そうじゃん!誰もいなかったら、俺が知ってる心スポに案内してやる。この近くなんだ。雑木林の中から沢山の骨が出た場所。大量殺人があったんだってさ」
得意気に言った赤髪の男は歩き出し、二人の女はそれについて行く。
「ちょっと待って」
俺の声に三人は立ち止まり振り返る。
「何だよ」
「何?」
「・・・・・」
ぽつぽつと雨が降って来た。
「やだぁ~雨が降ってきたんだけどぉ~」
「今日は帰った方がいいかしらね」
「マジで?ここまで来て帰るのかよ。そんなにひどい雨じゃないか行っちゃおうぜ」
「でも・・・」
行く事に迷いがある二人の女に対し、行きたくて仕方がない赤髪の男は少し困っているようだ。
「行くのか?戻るなら今の内だぞ」
俺は確かめるように言った。最終確認だ。
「どうしようかな。面白いモノ本当にあるの?」
「きっとあるって。俺、動画撮ってサイトに乗せようと思ってるんだ」
「あ~それもありね~」
「じゃ、決まりな。まず、あそこの家から行こう」
威勢よく言った赤髪の男は、先頭切って歩き出す。迷っていた二人の女も、視線を交わしながらも赤髪の男について行った。
その三人の後ろ姿を見送っていた俺は
「・・・そうか。逝ってもいいそうだぞ」
そう言うと、白田からもらったサングラスを取り自分の足元を見る。
「にゃふん」
俺に寄り添うようにして立つミヨが呆れたように鳴いた。
「おいおい。ちゃんと止めてやらなかったのか?それにまず、影来神社に先に行かせないと行けないんじゃないか?」
いつの間にいたのか、橋の欄干に腰を下ろしていた高野がニヤニヤとしながら言う。
「言ったさ。聞いてただろう?あいつらは、自分の意志で言ったんだ。影来神社への挨拶は後ででもいい。いずれ、呼ばれるだろうから」
そう。必ず呼ばれる。拝殿の中にあることり祖母ちゃんが付けていた数珠が呼ぶのだ。
高野は、勢いをつけて欄干から飛び降りると俺の方へと近づいてきた。
「まぁしゃあないわな」
「なぁ高野」
「ああ?」
「お前さ、病院で俺に「あいつに気をつけろ」って言っただろう?」
「ああ。薄っすらだけど覚えてるよ」
「気をつけろの後、しって言ってんだ。しの後に何て言おうとしてたんだ?」
「そんな事も分かんないのかよ「死ぬぞ」だよ」
「ああそうか」
「でも俺の言葉が最後まで分かったとしても、お前はここに来ただろ?」
「ああ。来た」
「ははは。白田さんのお陰で俺は死人にはならなかったが、まぁ微妙な位置で生きてるってところだな」
「うん・・・でも、俺は高野とミヨに会えて嬉しいよ」
「ちっ。気持ち悪ぃ。行くぞミヨ」
「にゃふ」
高野とミヨは、俺を置いて帰祖村へと歩いて行った。
俺は、そんな一人と一匹の後姿を見ながら
(これで良かったんだ)
と心から思い、誰もいない廃墟にぽつぽつと明かりが点き始めた村人達の家を見ながら、後を追った。
村の至る所に、紫陽花が咲き誇っていた。まるで、この土地の穢れを無くそうとするかのように。
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