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第4話 俺、旅に出る
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幼少期時代から神藤新太は、人を疑う事もしない純粋な子供だった。
しかし、この純粋過ぎる性格から、よく友人に嘘を付かれてそれを鵜呑みにしてしまう事が多々あったのだ。
あまりにも騙される事が増えたため、新太本人は、とある癖を付ける事にした。
それは、大事になりそうな物は仕舞い、大事になりそうな事はメモに取る事だ。
そして、その癖が今現在の新太を救う事になっている。
「なぁ、魔王。俺が持つ武具の8割をお前に譲ろう」
「8割だと?」
「ああそうだ。俺の持つ武具合計1000本の内、8割をお前に譲ると言っている」
「無論、全て無償で譲る訳ではないだろう?」
「ああ。俺の旅に最低限の物を用意してもらう事が条件だ」
「ほう、魔王相手に交渉だと?」
「ああ。交渉だ」
しばらく沈黙が流れ、突然魔王が笑いだした。
「面白い、面白いぞ! 良いだろう。貴様は、命と旅支度を、我は贄と武具を」
新太にとって、かなりの痛手だが、今また殺されるよりかはかなりましだろう。
「ああ。これでお互い同意で成立だな」
「無論だ」
こうして、何とか新太は旅に出る準備が出来る。
◇◇◇◇◇
地面を車輪が走り、薄く太陽の光が差し込む中、大きな欠伸と共に手綱を握り締めていた。
「眠い」
今日、いや、昨日はいろいろな事が起こりすぎて全く寝ていなかった。
それに、行く宛もなく適当に出てきたものの、この辺りの地形はほとんど分からない。
(さて、どうするかな)
嘆息を吐き出し、道すがら進んでいるのだが、荷車に乗っているもう一人の人物が新太に後頭部からのし掛かる。
「なぁなぁ、新太! 見てみて、太陽だよ、太陽!」
光が差し込んで太陽が昇り始めた場所を指差し、無邪気にはしゃいでいた。
「わかった、わかったから! 俺に乗っかるな」
「ごめんごめん」
慌てて新太から退いて隣に座り込んだ。
「全く、はしゃぐのは勝手だが、俺に迷惑を掛けるな」
「でもさ、アラタ……」
「いいな?」
「はい」
落ち込んだらしく、隣から後ろの荷車に戻る。
(全く……これで本当に強いのか?)
身長も新太より低く、少女らしく華奢だ。
それに、人間とは違って動物のような耳や尻尾が生えている。
確かにファンタジーの世界では、当たり前に見る種族なのだろうが、新太にとってこの世界には、飽き飽きしていた。
「あの魔王…もし騙してたら、復讐リストに載せてやる!」
などと、誰にも聞こえないような苛立ちを呟いていた。
そう、あの少女は、魔王からの餞別代わりに武器を贄にして作り出した勇者としての能力を失った新太のボディーガード役なのである。
しかし、この純粋過ぎる性格から、よく友人に嘘を付かれてそれを鵜呑みにしてしまう事が多々あったのだ。
あまりにも騙される事が増えたため、新太本人は、とある癖を付ける事にした。
それは、大事になりそうな物は仕舞い、大事になりそうな事はメモに取る事だ。
そして、その癖が今現在の新太を救う事になっている。
「なぁ、魔王。俺が持つ武具の8割をお前に譲ろう」
「8割だと?」
「ああそうだ。俺の持つ武具合計1000本の内、8割をお前に譲ると言っている」
「無論、全て無償で譲る訳ではないだろう?」
「ああ。俺の旅に最低限の物を用意してもらう事が条件だ」
「ほう、魔王相手に交渉だと?」
「ああ。交渉だ」
しばらく沈黙が流れ、突然魔王が笑いだした。
「面白い、面白いぞ! 良いだろう。貴様は、命と旅支度を、我は贄と武具を」
新太にとって、かなりの痛手だが、今また殺されるよりかはかなりましだろう。
「ああ。これでお互い同意で成立だな」
「無論だ」
こうして、何とか新太は旅に出る準備が出来る。
◇◇◇◇◇
地面を車輪が走り、薄く太陽の光が差し込む中、大きな欠伸と共に手綱を握り締めていた。
「眠い」
今日、いや、昨日はいろいろな事が起こりすぎて全く寝ていなかった。
それに、行く宛もなく適当に出てきたものの、この辺りの地形はほとんど分からない。
(さて、どうするかな)
嘆息を吐き出し、道すがら進んでいるのだが、荷車に乗っているもう一人の人物が新太に後頭部からのし掛かる。
「なぁなぁ、新太! 見てみて、太陽だよ、太陽!」
光が差し込んで太陽が昇り始めた場所を指差し、無邪気にはしゃいでいた。
「わかった、わかったから! 俺に乗っかるな」
「ごめんごめん」
慌てて新太から退いて隣に座り込んだ。
「全く、はしゃぐのは勝手だが、俺に迷惑を掛けるな」
「でもさ、アラタ……」
「いいな?」
「はい」
落ち込んだらしく、隣から後ろの荷車に戻る。
(全く……これで本当に強いのか?)
身長も新太より低く、少女らしく華奢だ。
それに、人間とは違って動物のような耳や尻尾が生えている。
確かにファンタジーの世界では、当たり前に見る種族なのだろうが、新太にとってこの世界には、飽き飽きしていた。
「あの魔王…もし騙してたら、復讐リストに載せてやる!」
などと、誰にも聞こえないような苛立ちを呟いていた。
そう、あの少女は、魔王からの餞別代わりに武器を贄にして作り出した勇者としての能力を失った新太のボディーガード役なのである。
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