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後編
16. 嘘
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「お待たせしてしまってすまないね。いやいや、あんな高貴な人の急な来訪なんて、普段は無いんだけどさあ。流石に無碍にする訳にはいかないからね。いや申し訳ない」
慌てて戻ってきた公爵にロシェルダは立ち上がり、頭を下げた。
「いいえ、私の方こそ気を遣えず申し訳ありませんでした。日を改めるべきでしたのに」
「いやだなあ、私が引き留めたんじゃないか。ごめんねロシェルダちゃん。あ、ロシェルダちゃんて呼んでもいいかい?」
「は、はい。勿論です」
笑顔の圧が凄い公爵に、若干気圧されながらロシェルダは出来るだけ上品に微笑んだ。
公爵は、良かった良かったと口にしながらソファに腰を下ろす。
後から着いてきたソアルジュの顔が若干引き攣っているが、仕方無いだろう……元婚約者との訣別なのだ。
「ソアルジュ、そんなに落ち込むんじゃないよ。君たちは仲の良い婚約者だったけどね。家の為を思ってのあの発言は、私は嬉しかったよ。仕方がない事だと思っている」
公爵のその台詞にソアルジュは口を丸く開けて固まった。
「国王にもお話して、また良い相手を見つけよう。大丈夫だ。私は君を疵者扱いなんてしないからね」
「ち、義父上! 私は別に婚約者など!」
「作って貰わないと困るでしょうよ。君は次期公爵なんだから。ちゃんと相応しい相手と結ばれて、跡取りを設けて貰わないと。ねえロシェルダちゃん」
そう言って笑顔を向ける公爵に、ロシェルダもまた笑顔で応えた。
「勿論です。公爵閣下」
ソアルジュが恨めしそうにこちらを見ているが、公爵の圧には遠く及ばない。残念ながらこちらの味方をさせて貰う。
「ほーら、君の命の恩人もこう言ってるんだから、君は言う事を聞くべきだ。……馬鹿な事を考えるなよ」
その言葉にソアルジュはぐっと詰り、項垂れるように首肯した。
◇
公爵家で沢山のお菓子を頂き、お土産まで貰って帰ってきてしまった。少しばかり不思議な雰囲気の人だったけど、特に何を言われる事も無かったし。……まあ、興味を持たれなかった、という表現が正しいのかもしれないが……
『賢い子は好きだよ。また遊びにおいで、ロシェルダちゃん』
そう言って笑う公爵の笑顔は、やはりどこか隙の無いものだった。
行きの馬車で散々眠ったので帰りは眠く無い。
ロシェルダは向かいに座るソアルジュに目を向けた。
夕日が差し込む馬車内は、ソアルジュの雰囲気を普段と変え、憂いある青年は一枚の絵画のようだった。
(こうして改めて見ると、本当に綺麗な方ね)
ロシェルダは内心感嘆のため息を吐いた。
そう言えば王子様なのだ。
本来ならロシェルダのような平民がこんなに近くで見られる事が非現実的な存在。
馬車が城に到着し、業者がドアを叩く音を聞いた後、ソアルジュが少し待てと返事をした。
「ロシェルダ、話があるんだ」
ロシェルダは首を傾げた。
「お前たちは外に出ていろ。……すぐ済むから」
リサとアッサムに伝えると、従者の親子は瞳に戸惑いの色を見せた。だが察したリサが、少しだけですよ、ドアのすぐ近くにいますからね、と念を押し時間をくれた。
戸惑うロシェルダを引き留め座り直させ、ソアルジュは一つ息を吐いて口を開いた。
「ロシェルダ……私の身体の不調は……嘘だ」
慌てて戻ってきた公爵にロシェルダは立ち上がり、頭を下げた。
「いいえ、私の方こそ気を遣えず申し訳ありませんでした。日を改めるべきでしたのに」
「いやだなあ、私が引き留めたんじゃないか。ごめんねロシェルダちゃん。あ、ロシェルダちゃんて呼んでもいいかい?」
「は、はい。勿論です」
笑顔の圧が凄い公爵に、若干気圧されながらロシェルダは出来るだけ上品に微笑んだ。
公爵は、良かった良かったと口にしながらソファに腰を下ろす。
後から着いてきたソアルジュの顔が若干引き攣っているが、仕方無いだろう……元婚約者との訣別なのだ。
「ソアルジュ、そんなに落ち込むんじゃないよ。君たちは仲の良い婚約者だったけどね。家の為を思ってのあの発言は、私は嬉しかったよ。仕方がない事だと思っている」
公爵のその台詞にソアルジュは口を丸く開けて固まった。
「国王にもお話して、また良い相手を見つけよう。大丈夫だ。私は君を疵者扱いなんてしないからね」
「ち、義父上! 私は別に婚約者など!」
「作って貰わないと困るでしょうよ。君は次期公爵なんだから。ちゃんと相応しい相手と結ばれて、跡取りを設けて貰わないと。ねえロシェルダちゃん」
そう言って笑顔を向ける公爵に、ロシェルダもまた笑顔で応えた。
「勿論です。公爵閣下」
ソアルジュが恨めしそうにこちらを見ているが、公爵の圧には遠く及ばない。残念ながらこちらの味方をさせて貰う。
「ほーら、君の命の恩人もこう言ってるんだから、君は言う事を聞くべきだ。……馬鹿な事を考えるなよ」
その言葉にソアルジュはぐっと詰り、項垂れるように首肯した。
◇
公爵家で沢山のお菓子を頂き、お土産まで貰って帰ってきてしまった。少しばかり不思議な雰囲気の人だったけど、特に何を言われる事も無かったし。……まあ、興味を持たれなかった、という表現が正しいのかもしれないが……
『賢い子は好きだよ。また遊びにおいで、ロシェルダちゃん』
そう言って笑う公爵の笑顔は、やはりどこか隙の無いものだった。
行きの馬車で散々眠ったので帰りは眠く無い。
ロシェルダは向かいに座るソアルジュに目を向けた。
夕日が差し込む馬車内は、ソアルジュの雰囲気を普段と変え、憂いある青年は一枚の絵画のようだった。
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そう言えば王子様なのだ。
本来ならロシェルダのような平民がこんなに近くで見られる事が非現実的な存在。
馬車が城に到着し、業者がドアを叩く音を聞いた後、ソアルジュが少し待てと返事をした。
「ロシェルダ、話があるんだ」
ロシェルダは首を傾げた。
「お前たちは外に出ていろ。……すぐ済むから」
リサとアッサムに伝えると、従者の親子は瞳に戸惑いの色を見せた。だが察したリサが、少しだけですよ、ドアのすぐ近くにいますからね、と念を押し時間をくれた。
戸惑うロシェルダを引き留め座り直させ、ソアルジュは一つ息を吐いて口を開いた。
「ロシェルダ……私の身体の不調は……嘘だ」
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