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第2章 第10話 管理人との対峙 そして爆発
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「水瀬愛莉は何処にいるの?」
「知りませんね。013からログインして昏睡状態になっていたユーザーの中から、あなたと関わりがあった人のデータを吸い出しただけですから」
その言葉を聞いた鼎は、すぐに戦闘態勢になった。その様子を見た管理人は、ため息をついてからココアをもう一口飲んだ。
「あなた程度では、戦いになりませんよ」
「戦いじゃなくて、足止めのつもりだけど」
鼎もストリートのカフェで、堂々と攻撃を仕掛けるつもりは無かった。正当防衛でも無いのにデバイスを武器に変形させるのは、ブラックエリア以外では御法度だからである。
「ココアを飲み終えるまで、待って頂けませんか?」
明らかな敵意を向けられているにも関わらず、管理人は平然としていた。彼は自らのアバターの性能を自負して、ブラックエリア外においても負ける可能性は低いと考えていた。
「まぁ、こっちも特にアンタへの対抗策がある訳じゃないけど…」
ーー
(鼎サン…の隣にいる奴は、あのクソ野郎!)
加奈を現実世界に帰す手続きが済んでストリートに戻って来た桃香は、管理人を見て路地に身を潜めた。自分が戦って手も足も出なかった管理人の事は気に入らなかったが、今すぐ飛び出していく訳にはいかなかった。
(向こうにも怪しい連中がいたけど…放っておくか)
ーー
「ふむ…建物の陰に隠れてこちらを窺っているのは、あなたの連れ合いですね?」
(桃香…戻ってきて様子を見てるのね)
鼎だけでなく管理人も、隠れている意図は分からなかった。鼎は彼女に何か考えがあるのだと思い、メッセージを送って呼び戻す事はしなかった。
「…何か仕掛けてこないのであれば、私は帰ります。あなた程度では私に危害を加える事は出来ないでしょうから」
「あの大急ぎで物を運んでいる連中は、あんたの仲間?」
鼎の視線の先には、黒ずくめのアバターを使用しているユーザー達が素早く動いていた。それぞれが大小様々なケースを運んでいて、怪しさ満載だった。
「いえ、知りませんが…少し解析してみましょう」
管理人はデバイスのカメラで黒ずくめ達の映像を撮って、解析を始めた。その結果、かなり危険なプログラムが積まれている事が分かった。
「あなたにも教えますが…あのプログラムが起動すれば爆発が発生し、周囲の構造物は破壊されるでしょう。さらに、周囲のアバターに放射線障害と似たような症状を発生させます」
「放射線障害…?!」
「もちろん現実の肉体への影響はありませんが、修復にはかなり時間がかかるでしょうね」
「現実に影響は無くても、すぐに止めないと…って桃香?!」
鼎はすぐに彼らを止めようと、管理人を放置して動こうとした。彼女の腕を掴んで強引に引き留めたのは、いつの間にか横にいた桃香だった。
「まぁまぁ、ここは放っておいた方が面白いよ」
「面白いって…現実の身体に影響は無くても、アバターかなりの苦しみを与えるプログラムは止めないと!」
「人の苦しむ姿は見たくないので…私は帰りますね」
鼎が桃香を振り切って止めに行こうとする横で、管理人は素早く立ち去ろうとしていた。それを見た桃香は、今度は管理人の前に立ち塞がった。
「退いてください。このアバターを使っていても、無効化できないプログラムの可能性もあるので…」
「ダーメ、アンタもこの後の事態に付き合ってよ」
「嫌です」
「そうは行かないなぁ。アイツらの標的がアンタって可能性もあるからね」
桃香が立ち去ろうとする管理人に詰め寄っている横で、鼎は動き出していた。いくら能力が高くても、この2人に任せる事は出来ないと判断したのだ。
「ちょっと!鼎サンじゃ止められない…」
「あ…」
桃香が鼎を呼び止める1秒前に、管理人はプログラムの起動に気づいた。
そして2秒後、ストリートに何かが爆発した音が響いた。
「知りませんね。013からログインして昏睡状態になっていたユーザーの中から、あなたと関わりがあった人のデータを吸い出しただけですから」
その言葉を聞いた鼎は、すぐに戦闘態勢になった。その様子を見た管理人は、ため息をついてからココアをもう一口飲んだ。
「あなた程度では、戦いになりませんよ」
「戦いじゃなくて、足止めのつもりだけど」
鼎もストリートのカフェで、堂々と攻撃を仕掛けるつもりは無かった。正当防衛でも無いのにデバイスを武器に変形させるのは、ブラックエリア以外では御法度だからである。
「ココアを飲み終えるまで、待って頂けませんか?」
明らかな敵意を向けられているにも関わらず、管理人は平然としていた。彼は自らのアバターの性能を自負して、ブラックエリア外においても負ける可能性は低いと考えていた。
「まぁ、こっちも特にアンタへの対抗策がある訳じゃないけど…」
ーー
(鼎サン…の隣にいる奴は、あのクソ野郎!)
加奈を現実世界に帰す手続きが済んでストリートに戻って来た桃香は、管理人を見て路地に身を潜めた。自分が戦って手も足も出なかった管理人の事は気に入らなかったが、今すぐ飛び出していく訳にはいかなかった。
(向こうにも怪しい連中がいたけど…放っておくか)
ーー
「ふむ…建物の陰に隠れてこちらを窺っているのは、あなたの連れ合いですね?」
(桃香…戻ってきて様子を見てるのね)
鼎だけでなく管理人も、隠れている意図は分からなかった。鼎は彼女に何か考えがあるのだと思い、メッセージを送って呼び戻す事はしなかった。
「…何か仕掛けてこないのであれば、私は帰ります。あなた程度では私に危害を加える事は出来ないでしょうから」
「あの大急ぎで物を運んでいる連中は、あんたの仲間?」
鼎の視線の先には、黒ずくめのアバターを使用しているユーザー達が素早く動いていた。それぞれが大小様々なケースを運んでいて、怪しさ満載だった。
「いえ、知りませんが…少し解析してみましょう」
管理人はデバイスのカメラで黒ずくめ達の映像を撮って、解析を始めた。その結果、かなり危険なプログラムが積まれている事が分かった。
「あなたにも教えますが…あのプログラムが起動すれば爆発が発生し、周囲の構造物は破壊されるでしょう。さらに、周囲のアバターに放射線障害と似たような症状を発生させます」
「放射線障害…?!」
「もちろん現実の肉体への影響はありませんが、修復にはかなり時間がかかるでしょうね」
「現実に影響は無くても、すぐに止めないと…って桃香?!」
鼎はすぐに彼らを止めようと、管理人を放置して動こうとした。彼女の腕を掴んで強引に引き留めたのは、いつの間にか横にいた桃香だった。
「まぁまぁ、ここは放っておいた方が面白いよ」
「面白いって…現実の身体に影響は無くても、アバターかなりの苦しみを与えるプログラムは止めないと!」
「人の苦しむ姿は見たくないので…私は帰りますね」
鼎が桃香を振り切って止めに行こうとする横で、管理人は素早く立ち去ろうとしていた。それを見た桃香は、今度は管理人の前に立ち塞がった。
「退いてください。このアバターを使っていても、無効化できないプログラムの可能性もあるので…」
「ダーメ、アンタもこの後の事態に付き合ってよ」
「嫌です」
「そうは行かないなぁ。アイツらの標的がアンタって可能性もあるからね」
桃香が立ち去ろうとする管理人に詰め寄っている横で、鼎は動き出していた。いくら能力が高くても、この2人に任せる事は出来ないと判断したのだ。
「ちょっと!鼎サンじゃ止められない…」
「あ…」
桃香が鼎を呼び止める1秒前に、管理人はプログラムの起動に気づいた。
そして2秒後、ストリートに何かが爆発した音が響いた。
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