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第3章 第5話 桃香の家にて 再びアナザーアースへ
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「夜ご飯はシンプルなもので良いよね?」
「ええ。だいぶ疲れてるし…」
鼎はそこまでお腹が空いている訳では無かったので、夜ご飯は軽めがいいと思っていた。シンプルなものを出されるのは、今の彼女にとってありがたい事だった。
ーー
「本当に余り物みたいだけど…」
ハムやソーセージ、そして小さなサラダがこの日の夜ご飯だった。余り物を合わせただけに見えるが、他のエリアだと良くある事らしい。
「大丈夫。これだけ有れば、お腹いっぱいになるよ」
「まぁこんな感じで…ちゃんと料理しないタイプだから、そこら辺よろしく」
シンプルな夜ご飯だったが、鼎は美味しく食べる事が出来た。桃香は余り物と言っていたが、これだけシンプルな食文化も悪くはないと思い始めていた。
ーー
夜ご飯を食べ終わり桃香が風呂に入っている間、鼎は改めて部屋を見て回った。どの部屋も細かく用途が分かれていて、無駄が無かった。
(サウナもあるんかい…)
桃香の家にはスモークとロウリュ、2種類のサウナがあった。水風呂等は無く、外気浴でクールダウンするようだ。
(別荘があると、こんな気分を味わえるのかな…)
鼎は桃香の生活が、少しだけ羨ましいと感じ始めていた。ただ、掃除とか機能点検とかをどうしているのかは気になるが…
(そう言えば廊下のあちこちに小さいクローゼットみたいなのがあるけど…)
クローゼットみたいな扉を開けると、内部には箱型のロボットが収納されていた。どうやら高性能タイプの、自動清掃用ロボットみたいだった。
(…そりゃそうか。これだけ大きい家なら、掃除用ロボットも使うよね)
ーー
「鼎サン、ボクの家探検してどうだった」
「本当に広い…別荘みたい」
家の中を見て回って、リビングに戻ったら既に桃香が風呂から出ていた。桃香のパジャマはシンプルな白いものだったが、少し高級そうに見えた。
「そう言えば着替えは…いくつかボクのサイズに合わなかった服置いたから、合いそうな服を着て」
「…サイズ見ないで買ってるの?」
「いや見てるよ。でも表記が無いのは、気に入ったら買っちゃう感じかな」
「ええ…まぁいいや。取り敢えずどれを寝巻きにするか決める」
ーー
(色々あるなぁ…)
桃香が用意していた部屋着は、シンプルな物から可愛らしいデザインの物まであった。機能性を重視した物、ロリータファッションに近い服もあった。
(桃香…アバターに猫耳つけてるし、やっぱり可愛いものが好きなのかな)
鼎はシンプルなデザインの部屋着を、パジャマにする事に決めた。ポケットが付いているので、デバイスを持ち歩く事も出来る。
(お風呂はどんな感じかな…)
ーー
湯船は正方形に近い形をしていて、鼎の家の物の倍近くの大きさだった。ヒノキの様ないい香りがするが、どうやら天然素材のアロマオイルの匂いらしい。
(これなら足を伸ばしてゆったり出来る…)
鼎は湯船に浸かって温まりながら、体を休めていた。ヒノキの香りに包まれて、普段よりもリラックス出来ていた。
(思えば私は、一人でいる事の方が多かったんだな…)
アナザーアースにいる時も、鼎は一人で探偵として活動している事が多かった。色々あって愛莉を助けてからは、彼女を助手として連れて回る事も増えたが…
(そう言えばアバターの修理終わったのかな…)
結局003の景色に気を取られて、巴とメッセージによる連絡をずっとしていなかった。昨日修理を急ぐ様に頼んだが、それからの連絡はまだだった。
(桃香との共同生活か…疲れそう)
鼎は長い間一人暮らしを続けていて、苦労はあまり無いが退屈な日々を送っていた。愛莉や巴と言ったアナザーアース内での知り合いはいたが、現実で接点を持つ他人はほとんどいない。
(愛莉を助け出したら…)
水瀬愛莉はリアルではエリア013で暮らしている少女だった。013にはまだ行った事は無く、もちろん愛莉に会った事も無い。
(愛莉や巴とも、リアルで会ってみよう)
彼女達とリアルで会う、それは鼎自身にとっては、大きな決意だった。彼女はヒノキの香りを十分に堪能してから、風呂を出た。
ーー
「我が家のお風呂はどうだった?」
「あのアロマオイル私も欲しい」
風呂から出た鼎は取り敢えず、巴と連絡を取ってみる事にした。今回はデバイスにお互いの様子が表示される通話だった。
『こんな夜遅くに…しかもアンタリアルじゃん」
「巴こそ、まだアナザーアースにログインしてるの?」
『1日1回はログアウトしてるよ』
「ええ…」
『冗談、冗談。アバターの修理は済ませたよ』
「ありがとね。明日からlunar eclipse project始めるから…」
鼎はリアルの姿なのに対して、巴はアナザーアース内のアバターだった。彼女もlunar eclipse project…通称月食の存在は知っていたが、鼎が始めようとしているのは意外だった。
『鼎、月食やろうとしてるの?正直つまらなそうに見えるからスルーしてたんだけど…』
「桃香が言うには、アナザーアースの開発者が関わってるかも知れないんだって」
『なるほどねぇ…私もその内始めようかな。そう言えば鼎、もうちょっと髪型整えてみたら?顔は悪く無いんだし…』
「余計なお世話」
鼎は巴との通話を終えたので、さっさと寝る事にした。どの部屋を使わせてもらうかは、先程決めておいた。
「もっと広い部屋じゃなくていいの?」
「私はあのくらい小さい部屋の方が落ち着く」
とは言っても、普段鼎が暮らしている部屋よりも広い寝室だった。鼎にとっては丁度いい部屋だったので、そこで寝る事にした。
ーー
(この部屋、家具の色合いも落ち着く感じなんだよね)
鼎が使う事にした寝室は、家具や壁紙が暖色系でまとめられている部屋だった。この部屋なら、落ち着いた気分で過ごせるだろう。
(それじゃ、早く寝ないと…)
鼎はさっさと布団に入り、そのまま数秒で眠りについた。眠りを妨げられる事は無かったので、朝まで目を覚まさなかった。
ーー
「おはよう…って桃香はまだ起きてないのか」
鼎は午前6時に目を覚ましてそのまま起き上がり、リビングへ向かった。少しずつ日が昇るのも、遅くなってきているのが分かった。
(さて…桃香はどんな本読んでるのかな?)
鼎は家から本を持ってきていなかったので、桃香が読んでる本を見てみる事にした。居間にも本棚が置いてあったので、彼女はそれなりに本を読むタイプである事が窺える。
(…漫画がメインか)
居間の本棚に収納してあったのは、殆どが漫画本だった。鼎も知っている物が殆どだったが、中にはマイナーそうな作品もあった。
「クソマンガもいっぱいあるよ」
「え、そういうの好きなの?」
「このアクション漫画とか凄いよ。人喰いの化け物がいる世界観なのに、2話目でいきなり日常回もどきやるし」
「絵は綺麗に見えるけど…所々雑なところあるね…」
漫画の話は程々にして、鼎達は朝ごはんを食べる事にした。今回の朝ごはんはパンやハム、チーズなどだった。
「好きな具材挟んで」
今日の朝ごはん好きな具材を挟んでいい、サンドイッチの様だ。鼎は硬めのパンをハムとチーズ両方を挟む事にした。
「結構しっかり硬いパン…」
「エリアによっては、柔らかいパンが主流になっちゃってるけどね」
鼎は柔らかいサンドイッチよりも、硬いパンを使ったサンドイッチの方が好きだった。鼎はサンドイッチをしっかり食べて、英気を養った。
ーー
「アナザーアースへのログイン自体、久々だな…って桃香、今日平日だけど学校は?」
「休んでるよ。成績は良いから、無理言って特別待遇にしてもらってる」
「本当に?それでOKなの…?」
「学校側のバレたらまずい情報もこっちが握ってるし」
「それって…」
「教員のセクハラとか」
「うわぁ…」
「私は善人じゃ無いから告発はしないよ。利用するけどね」
ブラックエリアの賭場で数多くの違法取り引きを行ってきた桃香が、真っ当な人間であるはずが無かった。桃香が通うスクールにも"匿名の人物"による被害がかなり発生して、迂闊に反撃に転じる事も出来ない状況らしい。
「本当に容赦無いね」
「それは置いといて…ほら久々のストリートだよ。すっかり復元できたみたいだね」
アナザーアースにログインした鼎達は、2010年代の東京を再現したストリートに降り立った。以前テロ組織が起動したプログラムにより破壊されたが、既に復旧は完了していた。
「さて、lunar eclipse project専用のエリア…月食エリアに行こうか」
「ええ。だいぶ疲れてるし…」
鼎はそこまでお腹が空いている訳では無かったので、夜ご飯は軽めがいいと思っていた。シンプルなものを出されるのは、今の彼女にとってありがたい事だった。
ーー
「本当に余り物みたいだけど…」
ハムやソーセージ、そして小さなサラダがこの日の夜ご飯だった。余り物を合わせただけに見えるが、他のエリアだと良くある事らしい。
「大丈夫。これだけ有れば、お腹いっぱいになるよ」
「まぁこんな感じで…ちゃんと料理しないタイプだから、そこら辺よろしく」
シンプルな夜ご飯だったが、鼎は美味しく食べる事が出来た。桃香は余り物と言っていたが、これだけシンプルな食文化も悪くはないと思い始めていた。
ーー
夜ご飯を食べ終わり桃香が風呂に入っている間、鼎は改めて部屋を見て回った。どの部屋も細かく用途が分かれていて、無駄が無かった。
(サウナもあるんかい…)
桃香の家にはスモークとロウリュ、2種類のサウナがあった。水風呂等は無く、外気浴でクールダウンするようだ。
(別荘があると、こんな気分を味わえるのかな…)
鼎は桃香の生活が、少しだけ羨ましいと感じ始めていた。ただ、掃除とか機能点検とかをどうしているのかは気になるが…
(そう言えば廊下のあちこちに小さいクローゼットみたいなのがあるけど…)
クローゼットみたいな扉を開けると、内部には箱型のロボットが収納されていた。どうやら高性能タイプの、自動清掃用ロボットみたいだった。
(…そりゃそうか。これだけ大きい家なら、掃除用ロボットも使うよね)
ーー
「鼎サン、ボクの家探検してどうだった」
「本当に広い…別荘みたい」
家の中を見て回って、リビングに戻ったら既に桃香が風呂から出ていた。桃香のパジャマはシンプルな白いものだったが、少し高級そうに見えた。
「そう言えば着替えは…いくつかボクのサイズに合わなかった服置いたから、合いそうな服を着て」
「…サイズ見ないで買ってるの?」
「いや見てるよ。でも表記が無いのは、気に入ったら買っちゃう感じかな」
「ええ…まぁいいや。取り敢えずどれを寝巻きにするか決める」
ーー
(色々あるなぁ…)
桃香が用意していた部屋着は、シンプルな物から可愛らしいデザインの物まであった。機能性を重視した物、ロリータファッションに近い服もあった。
(桃香…アバターに猫耳つけてるし、やっぱり可愛いものが好きなのかな)
鼎はシンプルなデザインの部屋着を、パジャマにする事に決めた。ポケットが付いているので、デバイスを持ち歩く事も出来る。
(お風呂はどんな感じかな…)
ーー
湯船は正方形に近い形をしていて、鼎の家の物の倍近くの大きさだった。ヒノキの様ないい香りがするが、どうやら天然素材のアロマオイルの匂いらしい。
(これなら足を伸ばしてゆったり出来る…)
鼎は湯船に浸かって温まりながら、体を休めていた。ヒノキの香りに包まれて、普段よりもリラックス出来ていた。
(思えば私は、一人でいる事の方が多かったんだな…)
アナザーアースにいる時も、鼎は一人で探偵として活動している事が多かった。色々あって愛莉を助けてからは、彼女を助手として連れて回る事も増えたが…
(そう言えばアバターの修理終わったのかな…)
結局003の景色に気を取られて、巴とメッセージによる連絡をずっとしていなかった。昨日修理を急ぐ様に頼んだが、それからの連絡はまだだった。
(桃香との共同生活か…疲れそう)
鼎は長い間一人暮らしを続けていて、苦労はあまり無いが退屈な日々を送っていた。愛莉や巴と言ったアナザーアース内での知り合いはいたが、現実で接点を持つ他人はほとんどいない。
(愛莉を助け出したら…)
水瀬愛莉はリアルではエリア013で暮らしている少女だった。013にはまだ行った事は無く、もちろん愛莉に会った事も無い。
(愛莉や巴とも、リアルで会ってみよう)
彼女達とリアルで会う、それは鼎自身にとっては、大きな決意だった。彼女はヒノキの香りを十分に堪能してから、風呂を出た。
ーー
「我が家のお風呂はどうだった?」
「あのアロマオイル私も欲しい」
風呂から出た鼎は取り敢えず、巴と連絡を取ってみる事にした。今回はデバイスにお互いの様子が表示される通話だった。
『こんな夜遅くに…しかもアンタリアルじゃん」
「巴こそ、まだアナザーアースにログインしてるの?」
『1日1回はログアウトしてるよ』
「ええ…」
『冗談、冗談。アバターの修理は済ませたよ』
「ありがとね。明日からlunar eclipse project始めるから…」
鼎はリアルの姿なのに対して、巴はアナザーアース内のアバターだった。彼女もlunar eclipse project…通称月食の存在は知っていたが、鼎が始めようとしているのは意外だった。
『鼎、月食やろうとしてるの?正直つまらなそうに見えるからスルーしてたんだけど…』
「桃香が言うには、アナザーアースの開発者が関わってるかも知れないんだって」
『なるほどねぇ…私もその内始めようかな。そう言えば鼎、もうちょっと髪型整えてみたら?顔は悪く無いんだし…』
「余計なお世話」
鼎は巴との通話を終えたので、さっさと寝る事にした。どの部屋を使わせてもらうかは、先程決めておいた。
「もっと広い部屋じゃなくていいの?」
「私はあのくらい小さい部屋の方が落ち着く」
とは言っても、普段鼎が暮らしている部屋よりも広い寝室だった。鼎にとっては丁度いい部屋だったので、そこで寝る事にした。
ーー
(この部屋、家具の色合いも落ち着く感じなんだよね)
鼎が使う事にした寝室は、家具や壁紙が暖色系でまとめられている部屋だった。この部屋なら、落ち着いた気分で過ごせるだろう。
(それじゃ、早く寝ないと…)
鼎はさっさと布団に入り、そのまま数秒で眠りについた。眠りを妨げられる事は無かったので、朝まで目を覚まさなかった。
ーー
「おはよう…って桃香はまだ起きてないのか」
鼎は午前6時に目を覚ましてそのまま起き上がり、リビングへ向かった。少しずつ日が昇るのも、遅くなってきているのが分かった。
(さて…桃香はどんな本読んでるのかな?)
鼎は家から本を持ってきていなかったので、桃香が読んでる本を見てみる事にした。居間にも本棚が置いてあったので、彼女はそれなりに本を読むタイプである事が窺える。
(…漫画がメインか)
居間の本棚に収納してあったのは、殆どが漫画本だった。鼎も知っている物が殆どだったが、中にはマイナーそうな作品もあった。
「クソマンガもいっぱいあるよ」
「え、そういうの好きなの?」
「このアクション漫画とか凄いよ。人喰いの化け物がいる世界観なのに、2話目でいきなり日常回もどきやるし」
「絵は綺麗に見えるけど…所々雑なところあるね…」
漫画の話は程々にして、鼎達は朝ごはんを食べる事にした。今回の朝ごはんはパンやハム、チーズなどだった。
「好きな具材挟んで」
今日の朝ごはん好きな具材を挟んでいい、サンドイッチの様だ。鼎は硬めのパンをハムとチーズ両方を挟む事にした。
「結構しっかり硬いパン…」
「エリアによっては、柔らかいパンが主流になっちゃってるけどね」
鼎は柔らかいサンドイッチよりも、硬いパンを使ったサンドイッチの方が好きだった。鼎はサンドイッチをしっかり食べて、英気を養った。
ーー
「アナザーアースへのログイン自体、久々だな…って桃香、今日平日だけど学校は?」
「休んでるよ。成績は良いから、無理言って特別待遇にしてもらってる」
「本当に?それでOKなの…?」
「学校側のバレたらまずい情報もこっちが握ってるし」
「それって…」
「教員のセクハラとか」
「うわぁ…」
「私は善人じゃ無いから告発はしないよ。利用するけどね」
ブラックエリアの賭場で数多くの違法取り引きを行ってきた桃香が、真っ当な人間であるはずが無かった。桃香が通うスクールにも"匿名の人物"による被害がかなり発生して、迂闊に反撃に転じる事も出来ない状況らしい。
「本当に容赦無いね」
「それは置いといて…ほら久々のストリートだよ。すっかり復元できたみたいだね」
アナザーアースにログインした鼎達は、2010年代の東京を再現したストリートに降り立った。以前テロ組織が起動したプログラムにより破壊されたが、既に復旧は完了していた。
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