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二章

久々の殿下 

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 ぷぅぷぅと寝てたらお家に帰ってきてた。
 目を開けるとパパがいる。

「お帰りシロ。ちゃんとシリルの師匠にご挨拶できたか?」
「できた~」
「シロはちゃんといい子でご挨拶できましたよ」

 シリルがパパに補足してくれる。

「そうか、偉いなぁ~。夕飯はシロの好物を作ってもらってるぞ。シリルのもな」
「え? 僕のも?」
「ああ、今日一日上手にシロの子守りをできたご褒美だ」
「僕子供じゃないんだけど……」

 そう言いつつもシリルは嬉しそうだ。
 よかったねぇ。
 生温かい目を向けたらシリルに全く痛くないデコピンをされました。……え、すごくない? 後で教えてもらおっと。



***



 次の日、お外でエンペラーに寄り掛かって日向ぼっこをしてたら誰かに名前を呼ばれた。

「シロ」
「ん? あ、殿下、久しぶり」

 久々に殿下が現れた。最近姿を見なかったけど忙しかったのかな?
 殿下にぎゅっと抱き着く。

「ああよかった。ボクのこと忘れてなかったんだな。幼子は少しの間会わないとすぐに誰か忘れてしまうというから……」
「それはもうちょっと小っちゃい子だと思う」

 シロは五歳だからちゃんと覚えてるよ! えっへんと胸を張る。

「シロは賢いな」

 そう言って微笑む殿下の顔はどこか疲れてる。

「殿下お疲れ? お仕事忙しかったの?」
「ああ……他国の一団が来ていてな、その応対で忙しかったんだ」

 そうだったんだ。いつの間に。

「それが弱小国のくせになぜか上から目線の勘違い野郎共でな、正直ずっと腸煮えくりかえってた」
「ぶっちゃけるね殿下」

 殿下は私を抱きしめて、あ~癒される~と呟いている。

「おい殿下、国際問題になりそうな発言はせめて隊舎の中でやってくれ」
「あ、パパ」
「ブレイク」

 呆れた顔をしたパパがこちらに歩いてきた。

「シーベルト国の一団は随分酷い態度だったそうだな。今回全く関係なかった俺のところまで噂が届いてるぞ」
「前評判も最悪だったから、気を遣って今回は特殊部隊を外してやったんだ。ボクの心遣いだぞ」
「それは本当に感謝してる」

 噂だけでイライラしたからな、とパパ。そんなに酷かったんだ……。

「シーベルト国は十年くらい前までほとんど他国と交流してなかったから素で自国が一番上だと思ってる。だから素で他国を見下す態度をとる」
「しかも殿下は交流のために今度はシーベルト国に行かないといけないんだろ? 同情するよ」

 パパは本気で殿下に同情してるらしい。声にからかいの色が一切ない。
 
「―――それなんだがな、ブレイク」
「あ、嫌な予感がする。シロ、今すぐ隊舎に戻って籠城しよう」
「うん!」

 伸ばされたパパの手を取ろうとしたら、殿下にギュッと抱きしめられた。

「まあまあ二人とも、とりあえず話を聞きなよ」
「「断る」」
「息ピッタリだね。まあいいや、今日はとりあえずシロに癒されに来ただけだし。本題はまた今度にしておいてあげるよ」
「なんで俺らが借りを作ったみたいになってるんだ。そんなんならうちの子は抱っこさせんぞ」
「すみませんごめんなさい今回は本当に疲れたんです」

 「すみませんごめんなさい」の部分は完全なる棒読みだった。だけど、疲れてるのは本当のようだ。棒読みでもこんなことを口にするのは珍しいし。
 パパはそんな殿下を見て一つ溜息を吐いた。

「仕方ないな、ほらシロ、殿下に抱っこさせてやれ」
「は~い」

 殿下に向けて両手を突き出すと、間髪入れず抱き上げられた。

「エンペラーもおいで」
「ガウッ」

 テコテコと歩いて来ると、エンペラーが芝生の上に再び横たわった。

「寄り掛かって座ってもいいって」
「そうか、じゃあお言葉に甘えよう」

 そう言うと、殿下は私を抱っこしたままエンペラーにもたれ掛かって座った。

「殿下お仕事お疲れ様」
「ありがとうシロ。あ~、癒される」

 まるでお風呂に入ってる時みたいな声を出すと、殿下が脱力した。ほんとに疲れてるみたいだ。お疲れ様の意味を込めてお腹に回ってる手を揉む。

「シロがかわいい……」
「珍しく本気で疲れてるな」

 殿下の様子を見て、パパも若干気遣わし気な声を出す。

「ボクの周りには基本頭のいい人間しかいないから、バカの相手がこんなに疲れるなんて知らなかったんだ……」
「ガウッ!」
「ああ、人間だけじゃなくて動物も頭がいいのしかいなかったな」

 よしよしとエンペラーの頭を撫でる殿下。

「……ゆっくりと休んでね殿下」
「ああ、ゆっくりしていけ」
「はは、今日は二人ともいつもより優しいな」

 珍しく殿下が少し弱っているので、私は殿下に癒されてもらうべくぬいぐるみに徹した。













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