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二章
とんでもないところに来ちゃった
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「じゃあボクはこっちの陛下に挨拶をしてくるから、皆は先に滞在場所に向かってくれ」
殿下はげんなりとした顔でそう言った。こっちの王族にいい思い出ないんだね。
可哀想な殿下の頭をなでなでしてあげる。
みんなでついて行ってストレスを分散させてあげたいけど、流石に陛下に挨拶するのにこんな大勢でゾロゾロ行くわけにはいかないからね。
殿下にはちょこっとだけ我慢してもらうしかない。
若干いつもより肩が丸まってる気がする殿下と別れる。少し待っていると、私達を案内してくれるらしい人がやって来た。
「ではついて来てください」
お待たせしましたという言葉もなにもなく、侍女服を着た彼女はそう言った。彼女の言葉にアニとエルヴィスが顔を見合わせる。
パパは殿下の護衛としてついて行ってるから今はいない。
滞在場所に向かう途中、私達の前を歩く侍女がちらりと私とエンペラーを見た。
「子どもと犬なんか連れてきて、そちらの国は我が国を舐めてらっしゃるのかしらね?」
「……」
特に返答は求めてないようで、こちらを振り返っていた侍女の顔はすぐに前を向いた。
すぐに前を向いて正解だと思う。今特殊部隊のみんなが物凄い形相で睨みつけてるから。殺気も漏れ出してるけど、侍女は鈍いのか、こちらを振り返ることなく先を歩いて行く。
鈍くてよかったね。
とはいえ、何も知らなかったら小さな子どもと犬を連れてくるのはどういうつもりだと思っても無理もないかなと思う。だからシロは全然気にしてないよ。ただエンペラーは犬じゃなくてオオカミだけどね。
***
「……」
私達が案内されたのは同じ敷地内だけど、王城から少し離れた場所にある洋館だった。あんまり使われていないのか、壁にはツタが這っている。
……たしか、殿下もシロ達といっしょに滞在するんだったよね……?
この洋館、大きさは十分だけどあんまり手入れされてなさそうだよ……?
私達は各々嫌な予感を抱えつつも、洋館の中に足を踏み入れた。
「わぁ」
中に入ると、耐えられずに私は少し声を漏らしてしまった。私達を案内してくれた侍女さんがその声を聞きとがめてぎろっとこちらを見てくる。殺気には全然気付かないのに耳はいいんだね。
そんな皮肉めいたことを思ってしまう。
だって私達はまだしも、殿下も滞在するんだよ? こんな埃っぽところで他国の要人を過ごさせるとか本気?
軽く掃除はされたみたいだけど全然足りないよ。
さっそくクロがくしゃみしてるし。
殿下が使う部屋の場所だけ伝えると侍女さんは帰って行こうとした。それをエルヴィスが引き止める。
「ここは随分と薄汚れていますけど、掃除などはこちらで勝手にしていいんですか?」
「ええ、どうぞお好きに住みよいようにしてください。では」
それ以上何かを聞かれるのも面倒だといった様子で侍女さんは去っていった。
「……予想以上に酷い国だな」
侍女さんが去った後、エルヴィスが呟く。それには特殊部隊の隊員達も騎士さん達も完全に同意で、うんうんと大きく頷いていた。
シロもびっくりだよ。
その後一応殿下の部屋を見に行ったけど、殿下の部屋だけはさすがに綺麗に整えられていた。他の部屋は全然だったけど。
これはせめて殿下の部屋だけはちゃんとしていてよかったと思えばいいのか殿下以外をあからさまに蔑ろにされていることに怒ればいいのかよくわかんないね。
「へくちゅっ!!」
埃のせいで私もくしゃみが出た。するとエルヴィスが抱き上げてくれる。
「シロは背が小さいから埃に近いな。鼻ちーんするか?」
「する」
鼻をちーんし、一旦スッキリする。
「――とりあえず、掃除しないとダメだねぇ」
シリルが言う。
それにエルヴィスが苦笑いした。
「そうだな。まさか他国に来て掃除することになるとは思わなかったが。……シリル? この洋館を爆破して建物ごとキレイにするのはなしだぞ?」
「なんでバレたの? お好きにしてくださいっていうから建物ごと爆破するのもありかと思って」
「俺らの滞在場所がなくなるだろうが」
シリルの頭をエルヴィスが叩く。
その後、みんなはなんだかんだ言いながら慣れない掃除に精を出していた。
この出来事があり、私達の中でこの国は好き勝手していい場所だと認定されたのだった。
殿下はげんなりとした顔でそう言った。こっちの王族にいい思い出ないんだね。
可哀想な殿下の頭をなでなでしてあげる。
みんなでついて行ってストレスを分散させてあげたいけど、流石に陛下に挨拶するのにこんな大勢でゾロゾロ行くわけにはいかないからね。
殿下にはちょこっとだけ我慢してもらうしかない。
若干いつもより肩が丸まってる気がする殿下と別れる。少し待っていると、私達を案内してくれるらしい人がやって来た。
「ではついて来てください」
お待たせしましたという言葉もなにもなく、侍女服を着た彼女はそう言った。彼女の言葉にアニとエルヴィスが顔を見合わせる。
パパは殿下の護衛としてついて行ってるから今はいない。
滞在場所に向かう途中、私達の前を歩く侍女がちらりと私とエンペラーを見た。
「子どもと犬なんか連れてきて、そちらの国は我が国を舐めてらっしゃるのかしらね?」
「……」
特に返答は求めてないようで、こちらを振り返っていた侍女の顔はすぐに前を向いた。
すぐに前を向いて正解だと思う。今特殊部隊のみんなが物凄い形相で睨みつけてるから。殺気も漏れ出してるけど、侍女は鈍いのか、こちらを振り返ることなく先を歩いて行く。
鈍くてよかったね。
とはいえ、何も知らなかったら小さな子どもと犬を連れてくるのはどういうつもりだと思っても無理もないかなと思う。だからシロは全然気にしてないよ。ただエンペラーは犬じゃなくてオオカミだけどね。
***
「……」
私達が案内されたのは同じ敷地内だけど、王城から少し離れた場所にある洋館だった。あんまり使われていないのか、壁にはツタが這っている。
……たしか、殿下もシロ達といっしょに滞在するんだったよね……?
この洋館、大きさは十分だけどあんまり手入れされてなさそうだよ……?
私達は各々嫌な予感を抱えつつも、洋館の中に足を踏み入れた。
「わぁ」
中に入ると、耐えられずに私は少し声を漏らしてしまった。私達を案内してくれた侍女さんがその声を聞きとがめてぎろっとこちらを見てくる。殺気には全然気付かないのに耳はいいんだね。
そんな皮肉めいたことを思ってしまう。
だって私達はまだしも、殿下も滞在するんだよ? こんな埃っぽところで他国の要人を過ごさせるとか本気?
軽く掃除はされたみたいだけど全然足りないよ。
さっそくクロがくしゃみしてるし。
殿下が使う部屋の場所だけ伝えると侍女さんは帰って行こうとした。それをエルヴィスが引き止める。
「ここは随分と薄汚れていますけど、掃除などはこちらで勝手にしていいんですか?」
「ええ、どうぞお好きに住みよいようにしてください。では」
それ以上何かを聞かれるのも面倒だといった様子で侍女さんは去っていった。
「……予想以上に酷い国だな」
侍女さんが去った後、エルヴィスが呟く。それには特殊部隊の隊員達も騎士さん達も完全に同意で、うんうんと大きく頷いていた。
シロもびっくりだよ。
その後一応殿下の部屋を見に行ったけど、殿下の部屋だけはさすがに綺麗に整えられていた。他の部屋は全然だったけど。
これはせめて殿下の部屋だけはちゃんとしていてよかったと思えばいいのか殿下以外をあからさまに蔑ろにされていることに怒ればいいのかよくわかんないね。
「へくちゅっ!!」
埃のせいで私もくしゃみが出た。するとエルヴィスが抱き上げてくれる。
「シロは背が小さいから埃に近いな。鼻ちーんするか?」
「する」
鼻をちーんし、一旦スッキリする。
「――とりあえず、掃除しないとダメだねぇ」
シリルが言う。
それにエルヴィスが苦笑いした。
「そうだな。まさか他国に来て掃除することになるとは思わなかったが。……シリル? この洋館を爆破して建物ごとキレイにするのはなしだぞ?」
「なんでバレたの? お好きにしてくださいっていうから建物ごと爆破するのもありかと思って」
「俺らの滞在場所がなくなるだろうが」
シリルの頭をエルヴィスが叩く。
その後、みんなはなんだかんだ言いながら慣れない掃除に精を出していた。
この出来事があり、私達の中でこの国は好き勝手していい場所だと認定されたのだった。
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