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第二章
23、エドワード
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俺が全員のステータスを見終わるとアキラさんから隠密通信が来た。
俺は首を傾げつつ出た。
「アキラさん?」
「マコトさん、エドワードさんの話」
「あ!」
「忘れてましたね」
はい、忘れてました。
それにずっとエドいたし、疲れて寝ちゃったし。言い訳です、ごめんなさい。素直に謝ろう。
「はい」
「今、いませんよね?」
「はい、狩りに行ってます」
「では、こちらに来て貰っていいですか?さすがに離れられないので」
「分かりました」
俺は通信を切るとユリウスたちの方に声をかけた。
「ごめん、呼び出し」
『一緒に行きましょうか?』
「いや、ちょっと話をしてくるだけだからここにいてくれ。エドたちが先に帰ってきたら大丈夫だっていておいてくれ」
『分かった』
ユリウスとグランは首だけを起こして聞いてきたので待機をお願いした。
ユキ?ユキはすでにおねむだった。
***
俺がギルドに着くとアキラさんが苦笑しながら傍に来た。
本当に申し訳ない。
「すみません」
「いいえ、馬車の素材確保に一生懸命でしたから。こちらもあえて言いませんでしたし」
「はい」
そう、アキラさんはエドたちがクエスト受注して行ったから別行動だと踏んで連絡をくれたのだ。その通りだし、本当に助かった。
これで一日ずれたけどエドの話が聞ける。ほぼ俺のせいだが。
小さな会議室に案内され、相変わらず防音処理をされた。
アキラさんは俺と自分に飲み物を出してくれた。日本の紅茶と同じで味もアールグレイに似ている。こっちではアーレイっていう。
アキラさんはすぐに本題に入った。
「エドワードさんのことですよね」
「はい」
「エドワードさん、確かに幼いんです。年齢は確かに24ですけど」
「生活環境のせいですか?」
「そうですね。エドワードさんのご両親は母親がエルフで父親がヒューマンです。ですが、母親は奴隷でした」
「奴隷?!」
「ええ」
なんとも言えない話だった。
エドの母親は年頃になった時に貴族のお抱え奴隷商に攫われた。
この世界では奴隷商も合法的な商売らしい。もちろん厳しい法律がある。
種類としては『負債奴隷』・『敗戦奴隷』・『犯罪奴隷』・『不法奴隷』の4つだ。
不作で食べるのにも困ったり借金が払えなかったりしてなる『負債奴隷』、敗戦国の兵士などがなる『敗戦奴隷』、重罪を犯した者がなる『犯罪奴隷』。
この3つは正式な決まりと法で決められているが最後の『不法奴隷』だけは違う。
これは法の決まりを逸脱した方法で捕えた奴隷のことを言う。
そう、何の罪も負債もない者を誘拐し奴隷にした場合のことだ。
この『不法奴隷』は奴隷ではなく、それを知って主人になった者や捕え売った商人を侮蔑する呼び名らしい。奴隷自体はすぐにでも権利を復帰できるようだが、心に傷を負っている場合が多く、色々難しいらしい。
そして、エドの母親はその『不法奴隷』だった。
普通の奴隷は奴隷自体の合意がなければ肉体関係を結べないが『不法奴隷』は強固な隷属魔法下にあり、拒否できない。そうしてできたのがエドだった。
奴隷が産んだ子どもに教育をさせることも認知することもない。なのでエドは10になるまで読み書きが出来なかった。エドは母親に匿われながら生きてきたので母親と一緒にいた地下牢がすべてだった。
エドが10になる頃、黒い噂の絶えなかったその貴族に摘発が入り、エドとエドの母親が見つかった。
エドたちはエルフの国に帰らされるはずだったがハーフエルフのエドがいては暮らし辛い。その現実に母親は陰で泣いていた。だから、エドは母親を思って一人ここに残り、母親だけエルフの国に返した。
「ですので、エドワードさんは他より成長が、というより知識や感覚が幼いんです」
「なるほど」
「エドワードさんやお母さんは悪くないんですよ。実際、エドワードさんのもとにお母さんからの手紙も届いて文通をしているみたいですし」
「それを聞いて安心しました」
「前にも言いましたがエルフの国は変わり始めています。今では少数ですがハーフエルフも一緒に暮らしているようです」
「そうなんですか?」
「はい。エドワードさんたちのことが発覚する前より変わり始めていましたし、区画を作ってそこでハーフエルフも暮らしているようです。そこから交流を持っているようです」
「エドのことから14年。なかなか速いペースですね」
「ええ、親はもともと同じエルフなので習慣が似通っているのでしょう。共通点が多ければ自然と親しみが増えていったみたいです」
「そうですね。違う種族も文化も共用できる場所もあるんですからエルフにだってそれが出来るはずなんです」
「私もそう思います。いずれ、ハーフエルフだハイエルフだと気にしなくてもいい未来が訪れると」
俺とアキラさんはお互いの思いに頷きあった。
そうなんだ、この国はいろんな種族も受け入れている。誰にだってできるはずなんだ、違うことを受け入れることが。
俺の故郷である日本でもそうだった。昔は日本人以外は受け入れないような国だったが長い時をかけて他の国や文化なんかを受け入れていった。
だから、エルフにだってそういうことが出来ると信じたい。
だって、いつかエドを母親のいる故郷に里帰りさせてやりたいから。
まぁ、エドをいじめやがった奴らに制裁は加えるけどな。
できればエドのいない時に出会わないかなぁ。
俺は首を傾げつつ出た。
「アキラさん?」
「マコトさん、エドワードさんの話」
「あ!」
「忘れてましたね」
はい、忘れてました。
それにずっとエドいたし、疲れて寝ちゃったし。言い訳です、ごめんなさい。素直に謝ろう。
「はい」
「今、いませんよね?」
「はい、狩りに行ってます」
「では、こちらに来て貰っていいですか?さすがに離れられないので」
「分かりました」
俺は通信を切るとユリウスたちの方に声をかけた。
「ごめん、呼び出し」
『一緒に行きましょうか?』
「いや、ちょっと話をしてくるだけだからここにいてくれ。エドたちが先に帰ってきたら大丈夫だっていておいてくれ」
『分かった』
ユリウスとグランは首だけを起こして聞いてきたので待機をお願いした。
ユキ?ユキはすでにおねむだった。
***
俺がギルドに着くとアキラさんが苦笑しながら傍に来た。
本当に申し訳ない。
「すみません」
「いいえ、馬車の素材確保に一生懸命でしたから。こちらもあえて言いませんでしたし」
「はい」
そう、アキラさんはエドたちがクエスト受注して行ったから別行動だと踏んで連絡をくれたのだ。その通りだし、本当に助かった。
これで一日ずれたけどエドの話が聞ける。ほぼ俺のせいだが。
小さな会議室に案内され、相変わらず防音処理をされた。
アキラさんは俺と自分に飲み物を出してくれた。日本の紅茶と同じで味もアールグレイに似ている。こっちではアーレイっていう。
アキラさんはすぐに本題に入った。
「エドワードさんのことですよね」
「はい」
「エドワードさん、確かに幼いんです。年齢は確かに24ですけど」
「生活環境のせいですか?」
「そうですね。エドワードさんのご両親は母親がエルフで父親がヒューマンです。ですが、母親は奴隷でした」
「奴隷?!」
「ええ」
なんとも言えない話だった。
エドの母親は年頃になった時に貴族のお抱え奴隷商に攫われた。
この世界では奴隷商も合法的な商売らしい。もちろん厳しい法律がある。
種類としては『負債奴隷』・『敗戦奴隷』・『犯罪奴隷』・『不法奴隷』の4つだ。
不作で食べるのにも困ったり借金が払えなかったりしてなる『負債奴隷』、敗戦国の兵士などがなる『敗戦奴隷』、重罪を犯した者がなる『犯罪奴隷』。
この3つは正式な決まりと法で決められているが最後の『不法奴隷』だけは違う。
これは法の決まりを逸脱した方法で捕えた奴隷のことを言う。
そう、何の罪も負債もない者を誘拐し奴隷にした場合のことだ。
この『不法奴隷』は奴隷ではなく、それを知って主人になった者や捕え売った商人を侮蔑する呼び名らしい。奴隷自体はすぐにでも権利を復帰できるようだが、心に傷を負っている場合が多く、色々難しいらしい。
そして、エドの母親はその『不法奴隷』だった。
普通の奴隷は奴隷自体の合意がなければ肉体関係を結べないが『不法奴隷』は強固な隷属魔法下にあり、拒否できない。そうしてできたのがエドだった。
奴隷が産んだ子どもに教育をさせることも認知することもない。なのでエドは10になるまで読み書きが出来なかった。エドは母親に匿われながら生きてきたので母親と一緒にいた地下牢がすべてだった。
エドが10になる頃、黒い噂の絶えなかったその貴族に摘発が入り、エドとエドの母親が見つかった。
エドたちはエルフの国に帰らされるはずだったがハーフエルフのエドがいては暮らし辛い。その現実に母親は陰で泣いていた。だから、エドは母親を思って一人ここに残り、母親だけエルフの国に返した。
「ですので、エドワードさんは他より成長が、というより知識や感覚が幼いんです」
「なるほど」
「エドワードさんやお母さんは悪くないんですよ。実際、エドワードさんのもとにお母さんからの手紙も届いて文通をしているみたいですし」
「それを聞いて安心しました」
「前にも言いましたがエルフの国は変わり始めています。今では少数ですがハーフエルフも一緒に暮らしているようです」
「そうなんですか?」
「はい。エドワードさんたちのことが発覚する前より変わり始めていましたし、区画を作ってそこでハーフエルフも暮らしているようです。そこから交流を持っているようです」
「エドのことから14年。なかなか速いペースですね」
「ええ、親はもともと同じエルフなので習慣が似通っているのでしょう。共通点が多ければ自然と親しみが増えていったみたいです」
「そうですね。違う種族も文化も共用できる場所もあるんですからエルフにだってそれが出来るはずなんです」
「私もそう思います。いずれ、ハーフエルフだハイエルフだと気にしなくてもいい未来が訪れると」
俺とアキラさんはお互いの思いに頷きあった。
そうなんだ、この国はいろんな種族も受け入れている。誰にだってできるはずなんだ、違うことを受け入れることが。
俺の故郷である日本でもそうだった。昔は日本人以外は受け入れないような国だったが長い時をかけて他の国や文化なんかを受け入れていった。
だから、エルフにだってそういうことが出来ると信じたい。
だって、いつかエドを母親のいる故郷に里帰りさせてやりたいから。
まぁ、エドをいじめやがった奴らに制裁は加えるけどな。
できればエドのいない時に出会わないかなぁ。
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