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破壊と創造の悪役令嬢
世界が再構成される瞬間、すべての生命に“選択”が与えられた。
生きる理由、進む道、そして――甘味への愛を、問われる時代が始まった。
混沌とした輝きの中で、ただ一人、少女はふわりと空を歩いていた。
ゆるやかな風が金色の髪を揺らし、パンケーキの甘い香りが漂う。
「名前は……“スイート・ドミニオン”でどうかしら。国家名よ」
その声は、笑顔のまま、堂々としていた。
彼女の名は、セシリア・グランチェスター。
乙女ゲームの悪役令嬢に転生し、神の代理人だった前前世の記憶を取り戻し、前世の知識で世界を破壊し、そして今――世界を、再構成していた。
「スイーツ税は撤廃。朝・昼・晩、三食パンケーキも合法にして……チョコソースも、イチゴソースもかけ放題にしておいて……」
空中に浮かぶ設計図(魔術式)を、指先でクルクルといじりながら、セシリアは楽しげに世界の設定を調整していく。
「セシリア!本当にそんな世界で大丈夫なのか!?」
隣で叫ぶのは、リュカ・アルセイド。
元・王族。
今・“パンケーキ省外務担当”。
「いいのよ。だって甘いものって、幸せじゃない?」
「いや、そうだけども……国の名前が“スイート・ドミニオン”って!」
「だって響きが可愛いでしょ?」
「可愛いだけで国家名決めないで! あと、魔法省の名前なんだよ!“お菓子召喚局”って!」
「うふふ、響きって大事よ? ちゃんと“糖分バースト魔法”の研究も進んでるんだから」
「科学の進歩が糖分頼りなの、怖すぎるだろ……」
それでも、世界は形を得ていく。
王家の血筋は、リュカ以外消滅し、旧貴族たちは“スライム栽培区域”での再教育中。
身分も財産も関係なく、スイーツで勝敗を競う平等な世界が築かれていた。
そして、かつての反逆者――カイルは、今や“世界意思セキュリティAIカイル”として第二の人生(?)を歩んでいる。
「パンケーキ提供システム、異常なし」
「ありがと、カイルくん。今日はミディアムでお願いね。カリッと、ふわっと~」
「了解。なお、非常時用殲滅兵器も随時待機中です」
「それはいいから。今はバター溶かして?」
「了解。溶解モード起動」
そんな彼らの頭上では、魔法でできたスイーツ衛星が静かに軌道を回っていた。
そして、この世界の新しいルールが、各地に広まり始める。
『争いは禁止。問題は“お菓子ランクバトル”で決着せよ』
“お菓子バトル・ランクC”
“パンケーキ・マスター”
“チョコの精霊認定資格”
――などなど、甘味による社会システムが、形成されつつある。
リュカは疲れきった顔でつぶやく。
「……こんな世界、誰が予想できた……」
「私は、ちょっとだけ想像してたわ」
セシリアは、空にふわりと浮かび、まるで星を並べるように、新たな魔法陣を描く。
「さぁ、次は“シュークリームによる外交交渉術”を整備しなきゃ」
「……もう、止められないんだな」
そうして始まったのは――
争いも、差別も、憎しみも、どこかに溶けて消えた、ふんわり甘い新世界。
この世界では、誰もが自由で、誰もが自分の“甘味”で輝く。
――ある意味、世界は平和になった。
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