この世界と引き換えに愛を乞う

seto

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眠ってしまったカロクをローレンスに預けて、サイラスはオーヴァンと共に執務室へと戻る。
カロクには悪質な呪印が施されていた為、サイラスは解呪もできる魔法医師を呼ぶよう伝えた。その際に簡単に今の現状を説明すれば、ローレンスとオーヴァンから穴が空くほど見つめられた。

「それで‥‥‥?」

部屋に入って開口一番にオーヴァンが言う。

「触れたのか‥‥? あの子に‥‥?」

オーヴァンからの圧が強い。
サイラスはガシガシと頭を掻きながら言う。

「医療行為だと思えっつったろ。他に方法がなかった。」
「性的に、触れたんだな‥‥?」

その返しに、サイラスの顔がバツが悪そうに歪む。オーヴァンの気持ちも分からなくは無い。父ほども離れた男が我が子にそういう意味で触れたのだ。心穏やかではいられまい。しかし。

「なら他にどうすれば良かった? 俺は解呪は出来ん。専門外だ。だが、カロクを見つけた時には既に限界まで熱に犯されていた。後遺症が残っても良かったと?」

開き直ってそうまくし立てると、グッと悔しげにオーヴァンの喉がなった。

「安心しろ。あの子の同意は得てるし、下半身には触れていない。」
「‥‥下半身に触れずにどうやって発散させたと?」
「詳しく聞きたいのか?」

そう問い返せば、オーヴァンは押し黙った。
しばらくの沈黙の後、オーヴァンは肺の空気を全て押し出すかのように息を吐いた。

「‥‥‥いや、すまない。分かっている。分かってはいるんだ。」

そう言ってオーヴァンは顔を伏せた。

「それより、あれキースどうしている?」

サイラスが問う。

「‥‥あぁ。精神喪失、といった所か。目立った外傷はないが、まるで反応がない。まるで人形のようだ。」

オーヴァンの言葉に、やはりとサイラスは思う。カロクを見つけた時、その傍には黒い蛇がいた。あれが闇の魔族だと言うのなら、辻褄は合う。

「恐らく、闇の魔族に精神を食われたんだろう。」
「まさか‥‥」

オーヴァンが息を飲む。

「7体、揃ったぞ。」
「ーっ‥!!」

サイラスの言葉に、オーヴァンは思わず頭を抱えた。みなまで言わずとも、何が揃ってしまったのか、オーヴァンには分かった。カロクの元に、魔族が、揃ってしまったのだ。いつ人類の脅威になってもおかしくは無い。

「報告は‥‥?」
「する。残念だが、看過できない。」

サイラスはそう断言した。
本来であれば、4体揃った時点で国へと報告をしなければならない。だが、サイラスの一存で先延ばしにしていたに過ぎないのだ。それは、4体だけならばサイラス1人で対処可能だと判断したからだ。

「それに、北から公国が降りてきている。恐らく、今年の冬には戦端が開かれるだろう。」
「行くのか?」
「あぁ。」

サイラスが最近忙しくしていたのは、北の公国が怪しい動きをしていたからだ。それの調査と、対処に追われていた。今日も、その件についてオーヴァンと相談する為に訪れていたのだ。

「俺がいない間に、あの子との仲を深めておけ。」

サイラスが言う。

「自惚れではなく、俺はあの子に慕われているのだろう。それとお前の1番上の子と、ローレンスか。」
「シリルか?」
「あぁ、よく話に上がる。関係は良好なようだ。」
「そう、か‥」

シリルがカロクと交流している事は、オーヴァンにも報告として上がってきている。
シリルが一方的に構っているのかと思っていたが、そうでは無いようだ。

「だが、あの子を繋ぎ止めるのが3人だけなどいくらなんでも危険すぎる。ローレンスは老齢で、俺は騎士だ。いつどうなるか分からん。」
「しかし‥‥」
「ほかの家門を近づけるのも危険だ。もし下心のある者があの子の心を掴んでしまったら。」
「大きな力を得ることになるだろうな‥?」
「そういう事だ。特にヴァリス家には注意しろ。北と繋がってる可能性がある。」
「頭が痛いな‥。」

オーヴァンは深く息を吐き出した。

「それにー‥‥‥」

サイラスが歯切れが悪そうに言う。

「‥‥しばらくは外に出さない方がいいだろうな。あの子は、天性の魔性だ。」

その言葉にピクリとオーヴァンが反応した。

「まさか、お前‥‥っ!!」
「俺にそういう趣味は無い‥!!」

慌ててサイラスが言う。
確かに煽られたが、とは口が裂けても言えなかったが。

「いったいいくつ離れていると思ってる。今回のは特別だ。」

そう言ってサイラスが息を吐く。
そして、「それに」とサイラスが続けた。

「俺は人を愛する事が出来ない。」

そう明言すれば、オーヴァンの顔が苦く歪んだ。

「お前は、まだー‥」
「とにかく、そういう事だ。あの子も保護対象でしかない。」

安心しろ、とサイラスは笑った。
そんなサイラスの様子を、オーヴァンは複雑な心境で見つめていた。
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