この世界と引き換えに愛を乞う

seto

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「‥きゃ!!」

ドンッと背中に衝撃を受けて、カロクは振り返る。するとカロクにぶつかったと思われる女子生徒が、今まさに尻もちをつこうとしている所が見えた。
手を伸ばせば助けることも出来ただろう。だがカロクはあえてそれを見送った。何故なら、その場面に覚えがあったからだ。

「‥‥大丈夫?」

カロクは口だけで女子生徒を心配する。
すると女子生徒は、ヘヘッと目元を軽く染めながらバツが悪そうに笑った。

「ごめんなさい、前を見ていなくって‥。あなたこそ、お怪我はない?」

そう言って女子生徒は立ち上がり、スカートの裾を軽く払った。

「あぁ‥。心配してくれてありがとう。」

そう言ってカロクは形だけの笑みを浮かべた。

「あっ、とごめんなさい。私先生に呼ばれていて‥。
私の名前はロジーナ。ロジーナ=ドレヴェスモブよ。もし何か不都合があったら、私を訪ねてきて。」

そう言ってロジーナは朗らかに笑うと、パタパタと廊下をかけて行った。

「‥‥。」

カロクはその背中を目尻をすがめて見送った。カロクはあの場面を知っている。女子生徒が尻もちを着く前にその体を抱き寄せ、怪我はなかったかい?と微笑むのだ。

「ねぇ、今の‥‥」

その時、廊下の曲がり角からカーナが姿を表した。その顔に訝しげな色を乗せて。

との出会いのシーンだね。」

カロクが言う。
この場面でカロクはカーナと出会い、興味を惹かれる。カロクの整った顔を近づけても、動揺すらしない朗らかな女の子。そんな主人公に、徐々に惹かれていくのだ。

「記憶持ち、かな‥?」

カーナが問う。

「まだ断定は出来ないけど、その可能性は高いんじゃないかな。」
「でも、ゲームの強制力‥‥とか‥。」

そう言ってカーナが視線を落とす。
カーナは今の所、カロク以外の誰とも接点を持っていない。そのため、世界が代わりの女の子を用意したのではないかとカーナは心配していた。

「その線は薄いとは思うけど、確かに否定は出来ない。でも、私や魔族がこれだけ変わっているんだ。ゲームの通りにはならないよ。」

そう言ってカロクが薄く笑うと、カーナは少しほっとしたように息を吐いた。

「それでも、注意はした方がいいだろうね。もしあの子が記憶を持っていたとしたら、君を排除しようとするかもしれないから、くれぐれも気をつけて。」
「えぇ‥、ありがとう‥」

カロクの言葉に、カーナはその眉を寄せた。
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