71 / 82
71
しおりを挟む
それからロジーナという女子生徒は、順調に攻略対象達と仲を深めていった。
定期的に開催されるエルネストとのお茶会にも度々顔を出し、無愛想を貫くカロクに絡んでくる。何が楽しいのか、一方的に喋りかけては朗らかな笑みを向けてくる。たまに一言二言返してやれば、何故か嬉しそうに微笑んでくるのだ。これが愛を知らないカロクならば、絆されたかもしれないとカロクは思った。
ゲームの中と違うのは、攻略対象の方がある程度節度を持って接していると言う事だ。
名前で呼ぶのはエルネストだけで、他のメンバーはみな家名でロジーナの名を呼ぶ。だがそれもエルネストがいる時だけのようで、2人っきりの時は名前で呼びあっているようだった。ハーレムルートでも狙っているのだろうか。現実で実現すれば、地獄しかないだろうにとカロクは思った。
今日もカロクはめげずに絡んでくるロジーナに辟易していた。偶然旧校舎の裏庭を通ったというロジーナが、カロクがお茶をしている所に突撃してきたのだ。勝手に向かいの席に腰をおろし、一方的に喋りかけてくる。本来であれば、今ここに座っているのはカーナだったというのに。
遅れて来たカーナは、ロジーナの姿を確認すると顔を青くして去っていってしまった。幸い、ロジーナにカーナの姿は見えなかったようだが。
カーナ曰く、ロジーナからの接触は今の所ないらしい。だが王子であるエルネスト達と親しいロジーナは、他の女子生徒達から反感を買っているようだ。それもそうだろうな、とカロクは他人事のように思った。
「カロク様? いい加減こちらの方を紹介して貰えます?」
そう言ってロジーナがプクッと頬を膨らませる。今日はカーナとの定期連絡の日。2人きりだと思われぬよう、当然魔族も同席している。今日の同席者は黒鳶だ。
漆黒の長髪を後ろで緩くまとめ、アメジストの瞳が神秘的な印象的を与える少年となっている。
「君に紹介出来る人はいないよ。」
そう言ってカロクは紅茶を口へと運ぶ。
「もうっ!! カロク様の意地悪っ!!」
そうロジーナは返すが、そのやり取りすら楽しそうだ。こちらはいい加減うんざりしていると言うのに。
黒鳶の方も、カロクがロジーナにいい印象を持っていない事が分かっているのか、一瞥すらもしない。ただ黙々と、お茶を啜っているだけだ。
いい加減追い払おうと考えて顔をあげる。すると、視界の端に見慣れた白銀が揺れた。サイラスだ。思わず頬が緩みそうになって、はたと気づく。
ロジーナがもしサイラスと出会ってしまったら。彼女は十中八九、サイラスに近づこうとするだろう。無邪気な顔をして、黒鳶にすら色目を使う人物だ。サイラスに粉をかけようとしてもおかしくは無い。
彼女が前世の記憶を持っているのかは不明だ。だが事実、他の攻略対象とは親しくしている。彼らの印象をあげる何かを持っている、もしくはそう行動しているという事は明白だ。
もし、サイラスを取られてしまったら。そう考えるだけで、カロクの心に深い影が差した。
「カロク。」
しかし無情にも、サイラスはカロクを見つけて声をかける。いや、サイラスはカロクを旧校舎へと探しに来たのだろう。
でなければ、使われていないこの場所に訪れるわけが無い。しかもサイラスは部外者だ。用事がなければ、学園を訪れることもないのだ。
「あの方はー‥」
振り返ったロジーナがポツリとこぼす。
彼女の瞳にサイラスが映るだけで、カロクは腹の中に冷水をぶち込まれた気持ちになった。カロクの心情に呼応するかのように、黒鳶の瞳孔が細く鋭くなる。静止をかけなければ、今にも飛びかかってしまいそうだ。
「もしかして、サイラス様‥?」
ロジーナがポツリと呟く。
その瞬間、カロクの怒気が上がった。
殺してしまえ。
本能が囁く。
ダメだ、短絡的すぎる。
冷静な部分がそう叫ぶ。
悩んだのは一瞬だった。
サイラスを取られるくらいならば。
カロクは胸元に忍ばせたナイフへと手を伸ばした。
定期的に開催されるエルネストとのお茶会にも度々顔を出し、無愛想を貫くカロクに絡んでくる。何が楽しいのか、一方的に喋りかけては朗らかな笑みを向けてくる。たまに一言二言返してやれば、何故か嬉しそうに微笑んでくるのだ。これが愛を知らないカロクならば、絆されたかもしれないとカロクは思った。
ゲームの中と違うのは、攻略対象の方がある程度節度を持って接していると言う事だ。
名前で呼ぶのはエルネストだけで、他のメンバーはみな家名でロジーナの名を呼ぶ。だがそれもエルネストがいる時だけのようで、2人っきりの時は名前で呼びあっているようだった。ハーレムルートでも狙っているのだろうか。現実で実現すれば、地獄しかないだろうにとカロクは思った。
今日もカロクはめげずに絡んでくるロジーナに辟易していた。偶然旧校舎の裏庭を通ったというロジーナが、カロクがお茶をしている所に突撃してきたのだ。勝手に向かいの席に腰をおろし、一方的に喋りかけてくる。本来であれば、今ここに座っているのはカーナだったというのに。
遅れて来たカーナは、ロジーナの姿を確認すると顔を青くして去っていってしまった。幸い、ロジーナにカーナの姿は見えなかったようだが。
カーナ曰く、ロジーナからの接触は今の所ないらしい。だが王子であるエルネスト達と親しいロジーナは、他の女子生徒達から反感を買っているようだ。それもそうだろうな、とカロクは他人事のように思った。
「カロク様? いい加減こちらの方を紹介して貰えます?」
そう言ってロジーナがプクッと頬を膨らませる。今日はカーナとの定期連絡の日。2人きりだと思われぬよう、当然魔族も同席している。今日の同席者は黒鳶だ。
漆黒の長髪を後ろで緩くまとめ、アメジストの瞳が神秘的な印象的を与える少年となっている。
「君に紹介出来る人はいないよ。」
そう言ってカロクは紅茶を口へと運ぶ。
「もうっ!! カロク様の意地悪っ!!」
そうロジーナは返すが、そのやり取りすら楽しそうだ。こちらはいい加減うんざりしていると言うのに。
黒鳶の方も、カロクがロジーナにいい印象を持っていない事が分かっているのか、一瞥すらもしない。ただ黙々と、お茶を啜っているだけだ。
いい加減追い払おうと考えて顔をあげる。すると、視界の端に見慣れた白銀が揺れた。サイラスだ。思わず頬が緩みそうになって、はたと気づく。
ロジーナがもしサイラスと出会ってしまったら。彼女は十中八九、サイラスに近づこうとするだろう。無邪気な顔をして、黒鳶にすら色目を使う人物だ。サイラスに粉をかけようとしてもおかしくは無い。
彼女が前世の記憶を持っているのかは不明だ。だが事実、他の攻略対象とは親しくしている。彼らの印象をあげる何かを持っている、もしくはそう行動しているという事は明白だ。
もし、サイラスを取られてしまったら。そう考えるだけで、カロクの心に深い影が差した。
「カロク。」
しかし無情にも、サイラスはカロクを見つけて声をかける。いや、サイラスはカロクを旧校舎へと探しに来たのだろう。
でなければ、使われていないこの場所に訪れるわけが無い。しかもサイラスは部外者だ。用事がなければ、学園を訪れることもないのだ。
「あの方はー‥」
振り返ったロジーナがポツリとこぼす。
彼女の瞳にサイラスが映るだけで、カロクは腹の中に冷水をぶち込まれた気持ちになった。カロクの心情に呼応するかのように、黒鳶の瞳孔が細く鋭くなる。静止をかけなければ、今にも飛びかかってしまいそうだ。
「もしかして、サイラス様‥?」
ロジーナがポツリと呟く。
その瞬間、カロクの怒気が上がった。
殺してしまえ。
本能が囁く。
ダメだ、短絡的すぎる。
冷静な部分がそう叫ぶ。
悩んだのは一瞬だった。
サイラスを取られるくらいならば。
カロクは胸元に忍ばせたナイフへと手を伸ばした。
21
あなたにおすすめの小説
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました!
えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。
※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです!
※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる