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カロクは惑うように視線を落とすと、躊躇いがちに口を開く。
「‥‥サイラス様、は‥、さっきの女性を見て、どう‥思いましたか‥?」
カロクの眉は、可哀想なくらいに眉尻が落ち、八の字になってしまっている。そんなカロクの表情を見るのは初めてで、サイラスは思わずその眉尻にキスを落とした。
「あいにく、あまり覚えていない。お前を追いかけるので必死だったからな。」
そう言ってサイラスが笑うと、カロクは少しホッとしたように息を吐き出した。
「お知り合いでは、ないんですよね‥?」
カロクが問う。
「あぁ、見た事ぐらいはあるかもしれんがな。」
あの年頃の知り合いは多くない、とサイラスが続ければ、カロクはようやく眉間のシワを解いた。
「‥彼女が、サイラス様の名前を呼んだんです。」
「俺の名前を?」
「‥‥はい。」
サイラスは小首を傾げてカロクを見つめる。カロクは、そんなサイラスの瞳から逃げるように視線を外した。
「‥貴方が取られるかもと、そう思ったら止まりませんでした。」
その言葉に、トクリとサイラスの鼓動が跳ねた。
「彼女は、サイラス様を知っていました。さっきも、せっかく会えたのにと。」
グッ、とカロクは拳を握った。
確かにロジーナは、サイラスを知っていた。落とされた独り言からも、サイラスと出会う事を望んでいたように思える。
あのままカロクが何もしなければ、ロジーナはサイラスに接触しただろう。もしそのまま、他の令息達にするようにサイラスに触れられたりでもすれば、今度こそカロクは彼女を攻撃してしまう。
「嫉妬してくれたのか?」
サイラスが問う。
「‥‥そんな、可愛いものじゃありません。」
カロクが言う。
「彼女の瞳にサイラス様が写っただけで、冷静ではいられなくなりました。サイラス様の瞳に、彼女が写るかもと考えただけで、目の前が真っ暗になるほど恐ろしかった。だから、彼女を消さなくてはと‥。」
キュッ、とカロクの瞳が切なく歪む。
「サイラス様が共にある事を許してくれたあの日から、僕の中のタガが外れてしまった。今までは、もう少し自分を抑えることが出来たのに‥。」
「カロク‥?」
「貴方さえいればそれでいい。サイラス様さえ側にいてくれるなら、他に何を取り上げられても構わない。」
でも、とカロクが続ける。
「もし、貴方を取り上げられてしまったのなら、僕は今度こそ魔王へと堕ちてしまうかもしれません。
だからどうか、僕のこの思いが負担になるというのなら、早めに切り捨てて下さい。貴方を困らせたくはないのです。
このままだと、僕は世界すらも捧げてしまうかもしれません。」
そう言って俯くカロクを、サイラスはきつく抱きしめた。
「はぁぁ‥‥」
サイラスは唸るようなため息を吐きながら、ギュウギュウとカロクの体を抱く。
サイラスが思っている以上に、カロクはサイラスを慕っているようだった。サイラスにとっては、嬉しい誤算だ。
サイラスこそ、カロクの生死すら望むほどに執着しているというのに。この程度の思いが、負担になるはずなどない。
だが、そんなサイラスをカロクは困らせたくないと嘆くのだ。サイラスが望めば、泣きながらもカロクはその手を離すのだろう。もちろん離してもらっては困るのだが。
「‥‥なんだ、この可愛い生き物は。」
思わずサイラスの口から言葉がこぼれた。
「‥‥サイラス様、は‥、さっきの女性を見て、どう‥思いましたか‥?」
カロクの眉は、可哀想なくらいに眉尻が落ち、八の字になってしまっている。そんなカロクの表情を見るのは初めてで、サイラスは思わずその眉尻にキスを落とした。
「あいにく、あまり覚えていない。お前を追いかけるので必死だったからな。」
そう言ってサイラスが笑うと、カロクは少しホッとしたように息を吐き出した。
「お知り合いでは、ないんですよね‥?」
カロクが問う。
「あぁ、見た事ぐらいはあるかもしれんがな。」
あの年頃の知り合いは多くない、とサイラスが続ければ、カロクはようやく眉間のシワを解いた。
「‥彼女が、サイラス様の名前を呼んだんです。」
「俺の名前を?」
「‥‥はい。」
サイラスは小首を傾げてカロクを見つめる。カロクは、そんなサイラスの瞳から逃げるように視線を外した。
「‥貴方が取られるかもと、そう思ったら止まりませんでした。」
その言葉に、トクリとサイラスの鼓動が跳ねた。
「彼女は、サイラス様を知っていました。さっきも、せっかく会えたのにと。」
グッ、とカロクは拳を握った。
確かにロジーナは、サイラスを知っていた。落とされた独り言からも、サイラスと出会う事を望んでいたように思える。
あのままカロクが何もしなければ、ロジーナはサイラスに接触しただろう。もしそのまま、他の令息達にするようにサイラスに触れられたりでもすれば、今度こそカロクは彼女を攻撃してしまう。
「嫉妬してくれたのか?」
サイラスが問う。
「‥‥そんな、可愛いものじゃありません。」
カロクが言う。
「彼女の瞳にサイラス様が写っただけで、冷静ではいられなくなりました。サイラス様の瞳に、彼女が写るかもと考えただけで、目の前が真っ暗になるほど恐ろしかった。だから、彼女を消さなくてはと‥。」
キュッ、とカロクの瞳が切なく歪む。
「サイラス様が共にある事を許してくれたあの日から、僕の中のタガが外れてしまった。今までは、もう少し自分を抑えることが出来たのに‥。」
「カロク‥?」
「貴方さえいればそれでいい。サイラス様さえ側にいてくれるなら、他に何を取り上げられても構わない。」
でも、とカロクが続ける。
「もし、貴方を取り上げられてしまったのなら、僕は今度こそ魔王へと堕ちてしまうかもしれません。
だからどうか、僕のこの思いが負担になるというのなら、早めに切り捨てて下さい。貴方を困らせたくはないのです。
このままだと、僕は世界すらも捧げてしまうかもしれません。」
そう言って俯くカロクを、サイラスはきつく抱きしめた。
「はぁぁ‥‥」
サイラスは唸るようなため息を吐きながら、ギュウギュウとカロクの体を抱く。
サイラスが思っている以上に、カロクはサイラスを慕っているようだった。サイラスにとっては、嬉しい誤算だ。
サイラスこそ、カロクの生死すら望むほどに執着しているというのに。この程度の思いが、負担になるはずなどない。
だが、そんなサイラスをカロクは困らせたくないと嘆くのだ。サイラスが望めば、泣きながらもカロクはその手を離すのだろう。もちろん離してもらっては困るのだが。
「‥‥なんだ、この可愛い生き物は。」
思わずサイラスの口から言葉がこぼれた。
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