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サイラスは水魔法で外套の端を濡らすと、カロクの身体を清める。そのまま自身とカロクの衣服を整えた所でキシリ、と床が鳴く音がしてサイラスは顔を上げた。
「あいつ、まだ彷徨いてんのか。」
視線を扉の向こうへと流しながらサイラスが言う。
日は既に半分以上が地平線へと沈み、鮮やかなオレンジは夜の藍に塗りつぶされようとしている。僅かに残った光が西側の教室に差し込むだけで、明かりのない旧校舎は既に半分以上が薄闇に包まれていた。
「どうして、そこまで‥」
カロクがポツリとこぼす。
最後に見たのはサイラスを見つけて弾んだ声を上げたその姿。その姿を思い返すだけで、カロクの心に闇がさした。
考えられるとすれば、サイラスとの出会いだ。騎士団長であるサイラスは、ほぼ学園には訪れない。そのため、出会うなら今しかない。
「俺が先に出る。」
「っ‥!! でも‥!!」
サイラスの言葉に、カロクが不安げに視線を上げた。それこそが、ロジーナの狙いかもしれないのに。
だが、カロクの不安をよそにサイラスはフッと不敵に笑った。
「大丈夫だから、守られていろ。」
そう言って、サイラスはカロクの頭を撫でた。魔王の器であるカロクを当たり前のように守ってくれようとするサイラスに、カロクの胸がキュゥと狭くなった。
「あ、サイラス様っ!!」
サイラスが廊下へ出ると、明るく弾んだ声が響いた。
「‥失礼だが、どこの令嬢だ?」
サイラスはわざとらしく問う。
わざわざ問い返すのは相手の無礼を咎める為だ。だがロジーナには、その皮肉が伝わらなかったようだ。
「あ、私ロジーナって言います。 サイラス様のお話は、シルヴェストからよく聞いていて‥。お会いしてみたかったんです!!」
そう言って明るく笑う。
そんなロジーナの姿に、サイラスはその灰青の瞳をスッと眇めた。
「‥‥名を呼ぶことを許した覚えは無いのだが。君は家から常識とやらを教えられていないのか?」
「ぁ‥‥、えと‥ごめん、なさい‥」
サイラスの威圧的な物言いに、ロジーナが怯んだ。しかしどこか困惑したような表情で、サイラスを仰ぎみながら謝罪の言葉を口にする。
「その、サイ‥‥じゃなくて、アークライト、様?の噂を聞いて、とても憧れていて‥」
ロジーナはモゴモゴと言い募る。
「つい嬉しくなってしまって、その‥失礼を‥」
そう言ってロジーナはスカートの端を僅かにつまんで、正式に頭を下げた。
「‥‥それで? 君はこんな時間まで何を?」
サイラスが問う。
「あ、はいっ!! 私の友達のカロク様をサイ‥アークライト様が追いかけて行ったように見えたので。
なにかあったのではないかと心配で。お知り合いですか?」
そう言ってロジーナは上目遣いでサイラスを伺った。
「知り合いも何も、あの子は友の息子だ。君より余程付き合いは長い。」
「え‥っ? じゃぁ、なんでカロク様は逃げるような真似を‥?」
サイラスの言葉にロジーナがコトリと首を傾げる。
「会うのは久しぶりだったからな。嬉しくて駆け出してしまったんじゃないか?」
揶揄うようなその言葉は、扉の向こうにいるカロクにあてたもので。そんなサイラスの言葉に、カロクはほんのりとその頬を染めた。
「随分と、仲がよろしいのですね‥?」
ロジーナが問う。
「あぁ、大切な子だ。」
そう言って、サイラスはその瞳を柔らかく細めた。そんなサイラスの様子を、ロジーナが怪訝そうに見る。
「‥‥そうなんですね!! なら今度、3人でお茶でもいかがですか?」
ロジーナは直ぐさま表情を取り繕うと、そう言って無邪気に笑った。
しかしそんなロジーナの様子を、サイラスが見逃すはずはない。その関心が一体どちらに向けられたものなのか、探るような視線を向けるも、ロジーナが表情を崩すことはなかった。
「‥そうだな、そんな機会があればな。」
そう言って、クッとサイラスは口角だけを上げて笑う。
「さて、もう生徒は帰る時間だ。特にこんな人気のない旧校舎など、いつまでもいるものでは無い。」
サイラスが言う。
「でもカロク様が‥」
「あの子は俺が探すから、君は早く帰りなさい。それとも、真っ暗中1人取り残される方がお好みかな?」
送る気がない、と暗に伝える。
ロジーナも伺うようにサイラスを見つめていたが、これ以上粘っても無駄だと分かったのだろう。仕方ない、と言うふうに息を吐くとペコりと頭を下げた。
「では、カロク様のことよろしくお願いしますね。」
そう言い残すと、ロジーナは校舎の外へと駆けていった。
「あいつ、まだ彷徨いてんのか。」
視線を扉の向こうへと流しながらサイラスが言う。
日は既に半分以上が地平線へと沈み、鮮やかなオレンジは夜の藍に塗りつぶされようとしている。僅かに残った光が西側の教室に差し込むだけで、明かりのない旧校舎は既に半分以上が薄闇に包まれていた。
「どうして、そこまで‥」
カロクがポツリとこぼす。
最後に見たのはサイラスを見つけて弾んだ声を上げたその姿。その姿を思い返すだけで、カロクの心に闇がさした。
考えられるとすれば、サイラスとの出会いだ。騎士団長であるサイラスは、ほぼ学園には訪れない。そのため、出会うなら今しかない。
「俺が先に出る。」
「っ‥!! でも‥!!」
サイラスの言葉に、カロクが不安げに視線を上げた。それこそが、ロジーナの狙いかもしれないのに。
だが、カロクの不安をよそにサイラスはフッと不敵に笑った。
「大丈夫だから、守られていろ。」
そう言って、サイラスはカロクの頭を撫でた。魔王の器であるカロクを当たり前のように守ってくれようとするサイラスに、カロクの胸がキュゥと狭くなった。
「あ、サイラス様っ!!」
サイラスが廊下へ出ると、明るく弾んだ声が響いた。
「‥失礼だが、どこの令嬢だ?」
サイラスはわざとらしく問う。
わざわざ問い返すのは相手の無礼を咎める為だ。だがロジーナには、その皮肉が伝わらなかったようだ。
「あ、私ロジーナって言います。 サイラス様のお話は、シルヴェストからよく聞いていて‥。お会いしてみたかったんです!!」
そう言って明るく笑う。
そんなロジーナの姿に、サイラスはその灰青の瞳をスッと眇めた。
「‥‥名を呼ぶことを許した覚えは無いのだが。君は家から常識とやらを教えられていないのか?」
「ぁ‥‥、えと‥ごめん、なさい‥」
サイラスの威圧的な物言いに、ロジーナが怯んだ。しかしどこか困惑したような表情で、サイラスを仰ぎみながら謝罪の言葉を口にする。
「その、サイ‥‥じゃなくて、アークライト、様?の噂を聞いて、とても憧れていて‥」
ロジーナはモゴモゴと言い募る。
「つい嬉しくなってしまって、その‥失礼を‥」
そう言ってロジーナはスカートの端を僅かにつまんで、正式に頭を下げた。
「‥‥それで? 君はこんな時間まで何を?」
サイラスが問う。
「あ、はいっ!! 私の友達のカロク様をサイ‥アークライト様が追いかけて行ったように見えたので。
なにかあったのではないかと心配で。お知り合いですか?」
そう言ってロジーナは上目遣いでサイラスを伺った。
「知り合いも何も、あの子は友の息子だ。君より余程付き合いは長い。」
「え‥っ? じゃぁ、なんでカロク様は逃げるような真似を‥?」
サイラスの言葉にロジーナがコトリと首を傾げる。
「会うのは久しぶりだったからな。嬉しくて駆け出してしまったんじゃないか?」
揶揄うようなその言葉は、扉の向こうにいるカロクにあてたもので。そんなサイラスの言葉に、カロクはほんのりとその頬を染めた。
「随分と、仲がよろしいのですね‥?」
ロジーナが問う。
「あぁ、大切な子だ。」
そう言って、サイラスはその瞳を柔らかく細めた。そんなサイラスの様子を、ロジーナが怪訝そうに見る。
「‥‥そうなんですね!! なら今度、3人でお茶でもいかがですか?」
ロジーナは直ぐさま表情を取り繕うと、そう言って無邪気に笑った。
しかしそんなロジーナの様子を、サイラスが見逃すはずはない。その関心が一体どちらに向けられたものなのか、探るような視線を向けるも、ロジーナが表情を崩すことはなかった。
「‥そうだな、そんな機会があればな。」
そう言って、クッとサイラスは口角だけを上げて笑う。
「さて、もう生徒は帰る時間だ。特にこんな人気のない旧校舎など、いつまでもいるものでは無い。」
サイラスが言う。
「でもカロク様が‥」
「あの子は俺が探すから、君は早く帰りなさい。それとも、真っ暗中1人取り残される方がお好みかな?」
送る気がない、と暗に伝える。
ロジーナも伺うようにサイラスを見つめていたが、これ以上粘っても無駄だと分かったのだろう。仕方ない、と言うふうに息を吐くとペコりと頭を下げた。
「では、カロク様のことよろしくお願いしますね。」
そう言い残すと、ロジーナは校舎の外へと駆けていった。
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