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第六章 皇帝陛下の思惑

ペットが逃げたのかな?

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 皇帝陛下の謁見が終わり、謁見の間から出るとノア先生とキャメロンさんが話していた。

 私に気付いたキャメロンさんはお辞儀した。

「お疲れ様です。先程の部屋まで案内しますね」

 キャメロンさんは歩き出した。

 私自身、長居はしたくないから正直助かる。
 せっかくここまで来たんだからという理由でお茶にでも誘われたらと考えただけでも恐ろしい。

 ドジしそうなんだもん。

 ……あれ。

 キャメロンさんのあとを追うように着いていってたら、不意に私の視界に木に座ってる綺麗な女性がこっちを見ていた。

 横目だったから気のせいかも。そう思って私は横を向くと気のせいではなかった。

 金髪ショートで茶色の瞳。白と緑が基準のドレスを着ている。
 二十代前半ぐらいだろうか。
 顔立ちは可愛らしいというよりも美人だ。

 女性は私と目が合うと自分の唇の前で人差し指を上に立てる。

「シー」って言っているような仕草だ。

 気付かれちゃいけないのかな……?

「アメリア様!? どこですか」

 一人の侍女が誰かを探しながら歩いている。
 私たちに気付くと、一礼する。

「どうした?」

 キャメロンさんの問いに、侍女は姿勢を正して答えた。

「そ、それが……アメリア様が」
「またか」

 アメリア……? って、誰だろう。

「では、見つけ次第捕獲しますね」

 捕獲? ということは、ペットが逃げたのかな。
 様付けしてるから偉い方のペットなんだろうな。

 侍女は一礼して歩いていった。

「では、行きましょうか」

 キャメロンさんは一息ついてから、私とノア先生の方を向いた。

 そして、歩き出す。

 何気なく窓を見るとさっきまで居た綺麗な女性は居なかった。

 あの人は誰だったんだろう。
 ドレスで木に登るなんて、誰かに見られたら大変なのに。

 そういえば、さっき静かにしてっていう合図をされたけど……。

 まさか、アメリアって!!

 彼女のこと!?

 確か、アメリア・コリンズ公爵令嬢が妃教育のため、アシェル城の別邸に滞在しているんだったわね。
  
 アイリスがそんなことを話してたっけ。
 さっきまですっかり忘れてたけど。

 でも、大人しくてちょっと暗めでよく鼻血を出す子だと聞いてたけど……。

 暗めの子が木登りなんてするかしら。

 でも、関わりは持たないだろうし、あんまり深く考えても仕方ないか。

 皇帝陛下とも、次に会うのは学園の卒業パーティだもん。

 入学したら、ヒロインの行動にも注意しとかないと。

 私の死亡フラグを回避するために。


 ーーーーーーーーーーーー
 [アメリア視点]

「はぁ……。今度はいつ来てくれるのかしら。ノア様」

 私、アメリア・コリンズは、アルロ様の婚約者。

 まぁ、実際には恋人のフリをしてるんだけど。

 ちょっとした私の不注意でアルロ様に秘密がバレてしまったんだ。

 隠していた私の秘密。それは、イケメンや美形の男の人同士がイチャイチャするのを妄想するのが大好きだってこと。

 ああー、やばい。想像しただけでも興奮するわ。

 興奮しすぎて鼻血出ちゃった。

 秘密がバレた私をアルロ様は脅し……、いいえ。
 優・し・い・アルロ様は私の秘密を誰にも言わない代わりに婚約をしてくれないかと言われて、二つ返事で答えたわ。

 ただ、恋人のフリだけでいいと。
 なんでアルロ様が私と婚約したのかなんて、どうでもいいのよ。
 大事なのは、私の秘密がバレなければそれでいい。

 ……だって、こんな秘密を知ったら誰だって引いてしまう。

 気持ち悪がられるもん。

 だからこそ、目立たないようにしてきた。

 アルロ様は引かなかったけど。

 最初は断ろうかと迷ったけど、アルロ様の一言で婚約することに決めたの。

「俺と婚約すれば、キミの大好きな妄想が好きなだけできるよ」

 と、魅力的なお誘いだった。

 でもね、冷静になった今では思うのよ。
 妄想って何処でも出来るじゃんっと。

 アルロ様にはめられた気がするけど、美形な人が多いから良しとしよう。

 私は美形同士のイチャイチャを妄想出来るなら、妃教育なんて耐えられる。
 妄想のために、頑張れるのよ。

 その美形の中でも私の推しは、たまに顔を出してくるノア様。

 それと、キャメロン様。

 この二人だったら受けがキャメロン様で攻めがノア様かしら。
 いや、その逆でも良いわね!!

 ちょっとした休憩時間に木に登って鼻歌を口ずさみながらそんなことを考えていると、キャメロンさんとノア様が歩いているのが見えた。

 のぉー!!!?

 鼻息を荒くしながら興奮したら十代ぐらいの女の子が一緒に歩いていた。

 誰かしら、あの子。

 見た感じだと貴族かな。歳は十代ぐらい?
 じーっと女の子を見ていたら、その子と目が合った。

 私は咄嗟に人差し指を上に立てると、彼女は動揺しながらもすぐに目を逸らしてくれた。

 フフッ。いい子ね。

 一人の侍女が来るのが見えたので、焦った。

 休憩時間終わり!?

 やば。怒られる!!! 

 私はゆっくりと木から降り、侍女の元に急いだ。

 あの子、私と同じにおいがする。

 また、会えるかしら……?


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