73 / 236
第八章 世界樹の精霊
世界樹の精霊
しおりを挟む
せっかく希望が見えてきたのに。
まさかの魔法陣に酔うだなんて、そんなの聞いてない。
いや、違うね。『聞いてない』のではなく、疑問に思い聞いてみないといけなかったんだ。
それは私が悪い。シーアさんは悪くない。
自分を棚に上げて相手を責めるなんて、情けなくて泣けてくる。
シーアさんはベッドに横になって熟睡している。横になった瞬間、規則正しい寝息を立てるんだもん。
……ビックリよ。
気持ち良さそうに眠っているシーアさんを起こすわけにはいかない。
その間にオリヴァーさんのところに行こう。
私の寝室の扉の外にいるんだろうけど。
扉をゆっくりと開けると、オリヴァーさんと目が合う。
オリヴァーさんはニコッと微笑んだ。
「どうしました?」
「その……どこから話していいのか。とりあえず、寝室に入ってください」
「わかりました」
寝室に入ったオリヴァーさんは扉を閉め、私のベッドを見つめた。
そ・こ・に・誰がいるのか、わかるんだろう。
「これは……、精霊? いや、姿が見えない」
「本人曰く、世界樹の精霊だと」
「見えるのですか!? 普通の人は裸眼では見えないはず……いや、俺はギリギリ光が見えるだけで姿が見えない。しかも、世界樹の精霊? 有り得ない」
竜騎士だったらシーアさんの姿が見えるだろうと思ったんだけど、一番驚いてたのが『世界樹の精霊』だったのに疑問を持った。
「なにが有り得ないのでしょう?」
「世界樹は存在しません。世界樹の精霊なんて聞いたことがない」
「世界樹の精霊は『聖なる乙女』なんです」
「聖なる乙女!? その、寝てるんですか? それとも起きていて、横になっているんですか?」
「寝ています。あの、私と契約をしようとしたら魔法陣に酔ったみたいで」
「酔う? 契約?? 『聖なる乙女』は確かに精霊みたいですね」
「どういうことでしょう?」
「精霊は、ドラゴンと違って不安定な存在なんです」
不安定?
でもおかしい。シーアさんはドラゴンになっていた。それが本当の姿なのだと。
「でも、シー……『聖なる乙女』は、ドラゴンになってました。手のひらサイズですが」
「……手のひらサイズ? なるほど。これは俺の憶測ですが、本体は別の場所に居るのかもしれません。ドラゴンが手のひらサイズなのは有り得ないんです。見たことも聞いたこともない。俺が『聖なる乙女』がギリギリ光って見えるぐらいなので」
「別の場所? 私、夢の中から引っ張り出しちゃったんです」
「夢、ですか? 詳しいことは彼女(聖なる乙女)に聞くとして」
オリヴァーさんは視線をベッドから私に移した。
「契約はしないでください。命に関わります」
「えっ!?」
「なんのための護衛なのかわかりません。無茶はしないでください」
契約って命に関わることだったの!?
だけど、私はどうしても契約をしなくては。
私の今後の人生に大きな影響があると思うから。
「私、契約を結びたいんです。自分のためにも」
「ソフィア様……」
目を反らさず、オリヴァーさんを真っ直ぐに見て言い放す。
オリヴァーさんは深いため息をした。
私の両肩を掴む。
「俺は、殿下からソフィア様を守れと命令されています。そんな危ないことをさせると思いますか?」
「で、でも!!」
どうしよう。説得しないと。
そう思っても、納得のいく言葉が思いつかない。
命に関わるって聞くと、死亡フラグに近付いてるんだと思う。
だけど、私はシーアさんを信じてる。
絶対に死んだりしないってそう思う。
「うるさいのぉ。オチオチ寝てられんわい」
その声は、私とオリヴァーさんではない。
ベッドの方から声がする。私はその声の主をよく知っている。
オリヴァーさんも声が聞こえたのか、驚いたようにベッドの方を向いている。
ベッドに寝ていたはずのシーアさんは上半身を起こしていた。
シーアさんはベッドから降りようとした。
が、
「ぎもぢわるい……」
その場にしゃがみこんで口を押さえた。
本調子じゃないのに、動くから。
シーアさんのところに歩み寄ろうとしたらノック音が聞こえた。
「ソフィア様」
その声は、マテオ様だった。
まさかの魔法陣に酔うだなんて、そんなの聞いてない。
いや、違うね。『聞いてない』のではなく、疑問に思い聞いてみないといけなかったんだ。
それは私が悪い。シーアさんは悪くない。
自分を棚に上げて相手を責めるなんて、情けなくて泣けてくる。
シーアさんはベッドに横になって熟睡している。横になった瞬間、規則正しい寝息を立てるんだもん。
……ビックリよ。
気持ち良さそうに眠っているシーアさんを起こすわけにはいかない。
その間にオリヴァーさんのところに行こう。
私の寝室の扉の外にいるんだろうけど。
扉をゆっくりと開けると、オリヴァーさんと目が合う。
オリヴァーさんはニコッと微笑んだ。
「どうしました?」
「その……どこから話していいのか。とりあえず、寝室に入ってください」
「わかりました」
寝室に入ったオリヴァーさんは扉を閉め、私のベッドを見つめた。
そ・こ・に・誰がいるのか、わかるんだろう。
「これは……、精霊? いや、姿が見えない」
「本人曰く、世界樹の精霊だと」
「見えるのですか!? 普通の人は裸眼では見えないはず……いや、俺はギリギリ光が見えるだけで姿が見えない。しかも、世界樹の精霊? 有り得ない」
竜騎士だったらシーアさんの姿が見えるだろうと思ったんだけど、一番驚いてたのが『世界樹の精霊』だったのに疑問を持った。
「なにが有り得ないのでしょう?」
「世界樹は存在しません。世界樹の精霊なんて聞いたことがない」
「世界樹の精霊は『聖なる乙女』なんです」
「聖なる乙女!? その、寝てるんですか? それとも起きていて、横になっているんですか?」
「寝ています。あの、私と契約をしようとしたら魔法陣に酔ったみたいで」
「酔う? 契約?? 『聖なる乙女』は確かに精霊みたいですね」
「どういうことでしょう?」
「精霊は、ドラゴンと違って不安定な存在なんです」
不安定?
でもおかしい。シーアさんはドラゴンになっていた。それが本当の姿なのだと。
「でも、シー……『聖なる乙女』は、ドラゴンになってました。手のひらサイズですが」
「……手のひらサイズ? なるほど。これは俺の憶測ですが、本体は別の場所に居るのかもしれません。ドラゴンが手のひらサイズなのは有り得ないんです。見たことも聞いたこともない。俺が『聖なる乙女』がギリギリ光って見えるぐらいなので」
「別の場所? 私、夢の中から引っ張り出しちゃったんです」
「夢、ですか? 詳しいことは彼女(聖なる乙女)に聞くとして」
オリヴァーさんは視線をベッドから私に移した。
「契約はしないでください。命に関わります」
「えっ!?」
「なんのための護衛なのかわかりません。無茶はしないでください」
契約って命に関わることだったの!?
だけど、私はどうしても契約をしなくては。
私の今後の人生に大きな影響があると思うから。
「私、契約を結びたいんです。自分のためにも」
「ソフィア様……」
目を反らさず、オリヴァーさんを真っ直ぐに見て言い放す。
オリヴァーさんは深いため息をした。
私の両肩を掴む。
「俺は、殿下からソフィア様を守れと命令されています。そんな危ないことをさせると思いますか?」
「で、でも!!」
どうしよう。説得しないと。
そう思っても、納得のいく言葉が思いつかない。
命に関わるって聞くと、死亡フラグに近付いてるんだと思う。
だけど、私はシーアさんを信じてる。
絶対に死んだりしないってそう思う。
「うるさいのぉ。オチオチ寝てられんわい」
その声は、私とオリヴァーさんではない。
ベッドの方から声がする。私はその声の主をよく知っている。
オリヴァーさんも声が聞こえたのか、驚いたようにベッドの方を向いている。
ベッドに寝ていたはずのシーアさんは上半身を起こしていた。
シーアさんはベッドから降りようとした。
が、
「ぎもぢわるい……」
その場にしゃがみこんで口を押さえた。
本調子じゃないのに、動くから。
シーアさんのところに歩み寄ろうとしたらノック音が聞こえた。
「ソフィア様」
その声は、マテオ様だった。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】家族に愛されなかった辺境伯の娘は、敵国の堅物公爵閣下に攫われ真実の愛を知る
水月音子
恋愛
辺境を守るティフマ城の城主の娘であるマリアーナは、戦の代償として隣国の敵将アルベルトにその身を差し出した。
婚約者である第四王子と、父親である城主が犯した国境侵犯という罪を、自分の命でもって償うためだ。
だが――
「マリアーナ嬢を我が国に迎え入れ、現国王の甥である私、アルベルト・ルーベンソンの妻とする」
そう宣言されてマリアーナは隣国へと攫われる。
しかし、ルーベンソン公爵邸にて差し出された婚約契約書にある一文に疑念を覚える。
『婚約期間中あるいは婚姻後、子をもうけた場合、性別を問わず健康な子であれば、婚約もしくは結婚の継続の自由を委ねる』
さらには家庭教師から“精霊姫”の話を聞き、アルベルトの側近であるフランからも詳細を聞き出すと、自分の置かれた状況を理解する。
かつて自国が攫った“精霊姫”の血を継ぐマリアーナ。
そのマリアーナが子供を産めば、自分はもうこの国にとって必要ない存在のだ、と。
そうであれば、早く子を産んで身を引こう――。
そんなマリアーナの思いに気づかないアルベルトは、「婚約中に子を産み、自国へ戻りたい。結婚して公爵様の経歴に傷をつける必要はない」との彼女の言葉に激昂する。
アルベルトはアルベルトで、マリアーナの知らないところで実はずっと昔から、彼女を妻にすると決めていた。
ふたりは互いの立場からすれ違いつつも、少しずつ心を通わせていく。
悪役令嬢が行方不明!?
mimiaizu
恋愛
乙女ゲームの設定では悪役令嬢だった公爵令嬢サエナリア・ヴァン・ソノーザ。そんな彼女が行方不明になるというゲームになかった事件(イベント)が起こる。彼女を見つけ出そうと捜索が始まる。そして、次々と明かされることになる真実に、妹が両親が、婚約者の王太子が、ヒロインの男爵令嬢が、皆が驚愕することになる。全てのカギを握るのは、一体誰なのだろう。
※初めての悪役令嬢物です。
聖女の力は使いたくありません!
三谷朱花
恋愛
目の前に並ぶ、婚約者と、気弱そうに隣に立つ義理の姉の姿に、私はめまいを覚えた。
ここは、私がヒロインの舞台じゃなかったの?
昨日までは、これまでの人生を逆転させて、ヒロインになりあがった自分を自分で褒めていたのに!
どうしてこうなったのか、誰か教えて!
※アルファポリスのみの公開です。
〘完結〛ずっと引きこもってた悪役令嬢が出てきた
桜井ことり
恋愛
そもそものはじまりは、
婚約破棄から逃げてきた悪役令嬢が
部屋に閉じこもってしまう話からです。
自分と向き合った悪役令嬢は聖女(優しさの理想)として生まれ変わります。
※爽快恋愛コメディで、本来ならそうはならない描写もあります。
【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。
樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」
大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。
はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!!
私の必死の努力を返してー!!
乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。
気付けば物語が始まる学園への入学式の日。
私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!!
私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ!
所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。
でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!!
攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢!
必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!!
やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!!
必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。
※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。
※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる