乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった私は、全力で死亡フラグを回避したいのに、なぜか空回りしてしまうんです(涙)

藤原 柚月

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第二十章 過去、そして現在

隠れキャラである悪魔の存在

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 長い長い休みもようやく終わり、学園生活に戻って来た。

 勿論、私の専属侍女はリリーからアイリスになり、学園にもアイリスが同行することになった。

 昨日の晩には学園内に到着し、荷解きを終えている。

 ーーそれにしても知らなかったわ。街には結界は張ってなかった。その為、急な雨や強風にあったけども。

 結界は特定の場所限定らしい。街だと出入り口付近に少し設置してある程度。幸いなのがラノベでもお馴染みの魔物がいないことだけね。

 そう、魔物はいない。ただし、悪魔は存在している。

 スルーすれば良いとは思ったけど、前世の過去と今世の過去を思い出した私は、どうしても悪魔に会わないといけない気がした。

 だからこその強力な助っ人に頼み込む。

 授業の移動中に、私はクロエ様に話しかけて内容を伝えるとクロエ様は首を横に振った。

「クロエ様、そんなこと言わずに」
「無理です。自ら危険な所に足を踏み入れないでください」
「……ですが、呪いをかけ、アレン様や悪役令嬢を苦しめた張本人でしょ。会って話してみたいんです」
「自殺行為です。それに、呪いをかけた本人とは限らないです」
「それってどういう」
「呪いは、何度も同じ人生を繰り返す。無限ループです。一度目の人生で呪いをかけた悪魔が二度目の人生では、呪いをかけていない事になります。その場合は、一度目の人生の記憶があるならばの話ですが」

 この世界は乙女ゲーム。選択肢一つでルートがかわるのなら、

「悪役令嬢は、二度目から覚えていた。アレン様は断続的にだけど、覚えていた……今いる悪魔は、悪役令嬢のことを知らない可能性があるということ?」
「そうですよ。悪魔は危険です。絶対に近付かないでください」
「前に悪魔は私に近付いてきました。それは……元々のゲームシナリオ通りだと言うけれど……本当にそうなのでしょうか?」

 強めに釘を刺されてしまったが、危険なのは私もわかる。だからこそ、クロエ様に同行することを頼んでいる。……虫のいい話なんだろうけど。

「私とクロエ様は日本での生活していた記憶を思い出し、乙女ゲームの世界なんだと理解しました。ストーリーは知っていて、展開に不満を感じれば変えようとシナリオにない行動をしますよね」
「確かに通常では存在しないはずのイレギュラーを起こし、本来のストーリーとは違う展開になっていますが……」
「だったら、悪魔だって何かしら変わっているかもしれません。私……いいえ、悪役令嬢のソフィアの破滅フラグは悪魔との契約にもあると思うんです。契約しなければ……もしかしたら」
「どの道、破滅だったと思いますよ。国外追放も出来ないのですから、一生、牢獄で暮らすことになるかもしれません」

 言われてみればそうかもしれない。闇属性があるのだから。最も危険視している属性だ。

「……それ、でも……悪魔の事を私は知りません。それに、隠れ攻略キャラなのでしょう。だったら、全てが危険では無い気もします」

 攻略対象ならば……そんな期待がある。やっぱり考えが甘いのかもしれないけど。

 今までがなんとかなってきたからそう思い込んでるだけかもしれない……。

 それでもやっぱり、

「このままじゃいけない気がするんです」

 あの悪魔を放置してはいけない。そう思った。

 クロエ様は諦めたように深くため息をする。

「わかりました。ですが、絶対に傍を離れないでくださいね」
「はい。それと……、『クリムゾン メイジ』のヒロインのクロエ様は……どうなったのでしょう?」

 質問にクロエ様は立ち止まり、私の顔を見る。

「……どうなのでしょうね」

 困ったように笑い、再び歩き出した。


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