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私は、カートライト公爵家長女のクリスチアーヌ・カートライト。

 前世の記憶を二年前に思い出し、息抜きにプレイしていた乙女ゲー厶「入れ替わり聖女に祝福を」の悪役令嬢に転生したことを知ってしまった。

 前世での私はプロのパティシエを目指していたけどアルバイトをいくつも掛け持ちし、さらに大学に通っていたというちょっとした無茶をしてしまい過労死してしまった。

 我ながら情けない。ちょっとした無茶ぐらいで身体が悲鳴をあげるだなんて……。まだ二十四歳だったのに。

 そして、

 今世での悪女としての末路は追放だった。死亡ルートが無いだけまだ救いはあるのだが……。

「……謹んでお受け致します」

 サミュエル様の『婚約破棄』に戸惑うことなく、スカートの裾を持ち上げ、お辞儀をした。

 シナリオ通りだ。

「あの……少し宜しいでしょうか?」

 サミュエル様の隣に立っていた女性、この世界(ゲームの)のヒロインが恐る恐る口を開いた。

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