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しおりを挟む聖女の力が無かったら、誰からも必要とされないでしょうね。
オリヴィア様が努力家で誠実なひたむきさを見せてくれるならまだ許せたし、フォローも出来た。
今まで、無自覚に私の心を踏みにじったことは一生許すことは無いから、このぐらいの仕返しがあっても良いでしょう?
渡り廊下に出ると、エリオス様が声をかけてきた。
「そんなに警戒しないでくださいよ」
「何が望みなのですか?」
「……少し、興味がありまして」
意外だ。悪役令嬢に興味を持つなんて。
「カフェ、『ヴァイオレット』をご存知でしょうか?」
『ヴァイオレット』といえば、私が住み込みで働くこととなったカフェよね。
「存じ上げませんわ」
「面白い話を聞きましてね。なんでも、潰れかけていたカフェにも関わらず突如現れた女性が見たことの無い魔法を使い、繁盛させたと」
魔法……かぁ。
そんな大したことでは無い。
潰れかけていた原因と対処方法を探り、動いたまでのこと。
「そんな魔法があるのなら是非、お目にかかりたいものですわ」
初めて聞いたようなフリをすると、エリオス様は苦笑した。
「……実はあのカフェには何度か行ってましてね。そこであなたにそっくりな方を見まして」
「そ、そうなんですね」
「とても生き生きしていて、新鮮みがありました。とても興味深いですね」
「エリオス様が興味を持つのは珍しいですね。いつもは魔法のことを話すのに」
エリオス様は魔法オタクだ。毎回魔法の話を時間の許される限り話すのだが、今日は魔法のことをあまり話さない。
「……ええ、まぁ。ここからが本題です。クリスチアーヌ様、俺・に美味しいケーキを食べさせてください」
私はエリオス様の意外すぎる提案を聞いて、驚いた。
のちにクリスチアーヌ・カートライトは『ヴァイオレット』の店主兼エリオス様のモルモット(世界一美味なケーキを食べさせること)となる。
冷酷な裏側には彼なりの優しさが存在し、またクリスチアーヌは前世で叶わなかった野望が実現されるーー……。
そんな物語であり、エリオス・クロスフォードがかなりの甘党でクリスチアーヌが作った洋菓子が恋しくて堪らなかった……というのはまた別の話である。
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