宇宙人は恋をする!

山碕田鶴

文字の大きさ
19 / 106
3章 未知とのセッショク

19.セッショク(4/9)

しおりを挟む
「いやあ、熱がなくて良かったでし」

 当たり前でしょうっ。
 夕食の後、銀太郎とお母さんはテレビの前にいた。録画しておいた蓮君のドラマの復習会だ。

「葵は一緒に観なくていいの?」
「宿題があるから、また今度にする」

 となりに蓮君がいたら、ドラマに集中できないでしょ。
 銀太郎はドラマで日本語を習得中らしい。なんだかすっかり仲良し親子だ。
 パパもリビングにいるけれど、こちらは日本がほこるスーパーミステリー雑誌「月刊ウー」に没頭中だ。
 横にはノートパソコンが置いてあって、時々画面を確認しながら何か入力している。休みを取ったのに、しかも時間外で仕事なんて、大人は大変だ。
 そういえば、UFOオタクのパパは私に持ちネタを披露したことがない。
 それこそ洗脳されるくらいに色々教え込まれていてもおかしくないと思うのだけれど。

「ねえ、パパ。今日、宇宙人バッジを持っている人、発見したよ」
「え⁉︎」

 ものすごく驚いている。そんなに激レアなのか。

「どこ、で見たの?」
「学校で同じクラスの子。藤井君っていうんだけど、銀太郎のバッジを見て、どうしても銀太郎と会いたいって頼まれたの。パパも会いたい?」

 目が点になるって、こういう顔なんだろう。
 そんなにびっくりした?  中学生だったからかな。
 銀太郎は昨日からバッジのことを知っていたみたいだけれど、パパには話さなかったらしい。

「パパは遠慮しておくよ。銀太郎が会うのなら、どんな感じだったか後で教えてもらおうかな。ほら、パパがUFOオタクって、葵ちゃんが変な目で見られたら困るから」
「……パパ、UFO愛が足りなくない?」
「そ、そんなことないよ⁉︎  パパは子どもの頃からUFOと宇宙人を探し続けてきたんだから。今は、銀太郎がウチに来て気が抜けたというか燃えつき症候群状態なだけで」

 ああ、ちょっとわかるかも。
 私も蓮君が目の前に現れて、もちろん中身は銀太郎なのだけれど、画面の向こうの本物の蓮君に意識が向かないというか、フクザツな心境なわけで。

「……ごめんなさい。推しへの愛を疑うなんて、まちがっていました」
「わあ、葵ちゃんが謝ることじゃないんだよ。ホント、そんなんじゃないから」

 パパは開いた両手をブンブンふって、あわてて否定する。
 動きが相変わらず子どもっぽい。
 あれ?  昔はそんなこと気にならなかったのにな。

「葵ちゃんは、いつのまにかこんなに大きくなったんだねえ」

 パパがうれしそうに笑った。
 久しぶりに家族がそろったせいか、くすぐったいみたいに変な感じだ。
 でも、悪くない。銀太郎がウチに来たおかげかな。
 パパもお母さんも楽しそうだし、私も……まあ、それなりに、ね。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

未来スコープ  ―キスした相手がわからないって、どういうこと!?―

米田悠由
児童書・童話
「あのね、すごいもの見つけちゃったの!」 平凡な女子高生・月島彩奈が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。 それは、未来を“見る”だけでなく、“課題を通して導く”装置だった。 恋の予感、見知らぬ男子とのキス、そして次々に提示される不可解な課題── 彩奈は、未来スコープを通して、自分の運命に深く関わる人物と出会っていく。 未来スコープが映し出すのは、甘いだけではない未来。 誰かを想う気持ち、誰かに選ばれない痛み、そしてそれでも誰かを支えたいという願い。 夢と現実が交錯する中で、彩奈は「自分の気持ちを信じること」の意味を知っていく。 この物語は、恋と選択、そしてすれ違う想いの中で、自分の軸を見つけていく少女たちの記録です。 感情の揺らぎと、未来への確信が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第2作。 読後、きっと「誰かを想うとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

イチの道楽

山碕田鶴
児童書・童話
山の奥深くに住む若者イチ。「この世を知りたい」という道楽的好奇心が、人と繋がり世界を広げていく、わらしべ長者的なお話です。

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~

楓乃めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。 いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている. 気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。 途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。 「ドラゴンがお姉さんになった?」 「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」 変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。 ・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

くらげ のんびりだいぼうけん

山碕田鶴
絵本
波にゆられる くらげ が大冒険してしまうお話です。

処理中です...